沖縄県ドクターヘリ レポート


読谷村ヘリ発進基地で待機する沖縄県ドクターヘリ EC135T2 (JA135E


 小サイトでは草分け期からドクターヘリにスポットを当ててきたが、配備も年々進み、現在ドクターヘリ配備拠点は18道府県に及び、機体数も22機となった。そこで今回は日本最南端の沖縄県ドクターヘリ基地を訪ねてみた。

 沖縄県ドクターヘリは2005年(平成17年)7月、U-PITS(注)として始まり、その功績が認められ 、2008年(平成20年)12月1日、全国で15機目の正式なドクターヘリ(厚生労働省の補助事業として認可)となった。

このドクターヘリ全般に関しては「浦添総合病院のホームページ」に詳細が掲載されているので、そちらをご覧頂くとして、当日はお相手してくださった皆様のお話を中心にレポートすることとする。

注 U-PITS(ユーピッツ:Urasoe-Patient Immediate Transport System)
平成17年、沖縄本島周辺離島や本島内遠隔地からの患者搬送を目的に
浦添総合病院が県や国に頼らず自資金で立ち上げた救急ヘリコプター搬送システム


スタッフが右胸につけているパッチ
U-PITSからドクターヘリになった際に作成された。
青い空、白い雲を飛行するヘリコプター、Lの文字が椰子の木になっており、
デザインといい、色使いといい、センスの良さを感じさせる。

施設
 ヘリ発進基地と呼ばれるヘリポートは読谷村(よみたんそん)の海岸沿いにあるが、木立に囲まれ周囲からは容易に見ることは出来ない。またこの地区は岬が近いため風が強いが 、この樹木のおかげで風の影響は少ないという。
 ここにヘリパッド、ハンガー(格納庫) 、運航管理事務所、医師・看護師待機所、燃料庫等がある。建設時の写真を見せて頂いたが、数回の改良、増築を経て現在の形となっている。


周囲は樹木に囲まれている

運航
 読谷村ヘリ発進基地をベースに9時〜17時、365日体制で運航。運航範囲は沖縄県全域をはじめ、基地から半径100km圏内(片道30分以内)が基本、要請 があれば,沖永良部や徳之島まで飛行する。
 しかしながら沖縄は米軍の訓練空域が多く運航に際しては米軍の嘉手納、普天間、両コン トロールの管制を受ける為苦労が絶えないという。特に久米島からの搬送に関してはW174 (one seven four)と呼ばれる久米島東の実弾射爆空域があり細心の注意を払う必要がある。
また本島中心部にも実弾射撃場がある為この跳弾の危険性があり、特に低空を飛行するヘリコプターにとっては危険と隣り合わせと言っても過言ではない。その他更にヒラタ 学園の神戸エアセンター(運航センター)ともやりとりする必要もあり、運航管理者は常に無線 をモニターしていなければならず神経を使う。
また当基地以外の那覇空港への離発着につ いて尋ねたところ、管制が厳しくデモの時以外は降りていないとのことであった。

機体
 運航はヒラタ学園が担当、機体はユーロコプターEC135T2(JA135E)である。
U-PITS時代からベル206L-3、アエロスパシアルAS350Bを経て現在のEC135となった。
当初は白地に赤い文字でU-PITSと描かれていたが、現在はドクターヘリ塗装となり、機体側面とドアには浦添総合病院の文字と沖縄県のマーク、及びOperated by Hirata Gakuen の文字 が入れられている。
 外見上の特徴としてはフロートが目に付く。これは不時着水に備えてのもので、膨張式フロートがスキッドに装備され、右側面に装着したボンベで瞬時に膨らますことが出来る。




EC135のコクピット



前部ドア下方についている赤い丸印は沖縄県のマーク、
その下に Operated by Hirata Gakuen と書かれている



装備等
 機内はパイロット、整備士、フライトドクター、ナース、患者の他、付き添い者1名の計6名が搭乗可能で、酸素ボンベ、除細動器付心電図モニター 、超音波診断装置等の救急医療用設備がコンパクトにまとめられている。一見通常のドクターヘリとあまり変わらないが、洋上を飛行する為、機内後部にゴムボートを搭載している。非常に小さく見えるが膨張時には6名が搭乗可能という。また沖縄必須のアイテムとして、雨具 とサンバイザーを積んでいる。前者は突然のスコールから、後者は強烈な日差しから、患者さん守るためにかぶせるそうである。

 ハンガーは広く、2機が悠々と入る立派なもの。しかし出動に備え、炎天下でも屋外のヘリパッドに駐機している為、クーラーは必需品。ここでは外部のスポットクーラーからノズルを介して機内を冷やしている。キャビンとコクピットに座らせて頂いたが炎天下にもかかわらず、このおかげで暑いとは感じなかった。


キャビン内 医療器具がコンパクトにまとまっている


後方から見た機内 右奥の黄色のものがゴムボート

秘密基地?
 余談だが、TVドラマ「コードブルー」効果について尋ねたところ、沖縄ではあまり話題にならず、見学者が来ることもないという。
ドクターヘリの存在をホテルでは知らず、またタクシー暦10年の運転手さんすら、この場所を知らなかった。何度も迷った挙句ようやく辿り着けた次第である。フライトドクターがブログで「秘密基地?」と書いていらしたが、まさにそのような感じであった・・


 以上、簡単に紹介したが、是非「浦添総合病院のホームページ」を閲覧して欲しい。
ここでは今回割愛したU-PITS発足経緯からドクターヘリ全般について非常に分かりやすくまとめられており、その他ドクターヘリ通信、ブログなど、さまざまな形で情報を発信している。
ホームページはあってもなかなか更新されないことが多い中、常に最新情報を発信し続けている活動は素晴らしく、皆様の熱意が伝わってくる。

 今、普天間基地移移転問題で揺れる沖縄、とかくヘリコプターへの風当たりも強い。
そんな中、人々の命を救うヘリコプターが日々活躍している姿を是非、皆に知ってもらいたいと切に願う次第である。



 最後にお忙しい中お相手頂きました、運航所長機長の矢埜様、浦添総合病院救命救急センタ長の八木様、運航管理担当の田中様、皆様にこの場を借りまして御礼申し上げます。
2010/06/30訪問
2010/07/04初稿

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