李香蘭

史実を元にした、劇団四季のオリジナルミュージカル。

(劇団四季'00.4.23〜6.18 四季劇場・秋)

李香蘭 :野村玲子
川島芳子 :保坂知寿
李愛蓮 :五東由衣
杉本 :芝清道
王玉林 :海将人

男性アンサンブル
日下武史 遠藤俊彦  深水彰彦  林和男
川地啓友 松下武史  光枝明彦  岡本隆生
佐川守正 青山祐司  古谷直通  松下雅博
浅井優   蔡??   藤田将範  池田英治
武藤寛   中村匠    石路

女性アンサンブル
服部良子   木村不時子  松永さち代 三橋葉子
佐藤夏木   佐和由梨    小林由佳  李?
田中麻衣子  種子島美樹  王?
(中国の俳優さんのお名前の漢字がどうしても出ませんでした。ごめんなさい)

あらすじ:
第二次世界大戦終結後の中国。
日本に味方した裏切り者「漢奸」が次々と引きずり出されてくる。
その中には清朝の王女でありながら、日本人の養女となり満州軍将軍として活躍した川島芳子。
そして満州映画協会の看板女優として、中国人でありながら日本軍の宣伝工作に加担した罪を問われる李香蘭。
李香蘭は裁判の場で本当は山口淑子という名の日本人であったことを告白。
彼女の記憶は、父の日中友好の夢を託され李家の養女となり「香蘭」の名をもらった13歳の誕生日へとさかのぼる…
「歌う女優」としてデビュー後、やがて軍部の計略に巻き込まれて行く香蘭の姿を日本と中国の争いの時代を背景に描いて行く。

感想:
川島芳子を語り部として中国と日本の歴史を語らせ、その時代の中で生きた李香蘭こと山口淑子の半生を描く、というスタイル。
タイトルから想像するような、香蘭の人気女優としての側面は「点」でしか語られていませんでした。
北京の抗日学生集会のとき、日本軍が北京に攻めてきたそのときには「銃を取る」と言った姉・愛蓮。
それに対し「北京の城壁の上に立つ」と言った香蘭。
あくまで中国と日本の友好を願っていた彼女の、その後の軍の手中にあった満州映画協会での仕事についての心情はそれ以後語られていなかったし…(出征していく杉本に「満映での嫌な仕事はお兄様がいたから耐えられた」とは言っていたけれど)
軍の広告塔として働いてしまった間の彼女の葛藤が描かれていない点で、最後の裁判シーンでの「二つの祖国」の「♪裁いて 罪があるなら…輝く二つの国を愛しつづけたことを」に説得力が欠けるような気がしました。
見終わっての印象では物語の中心は「李香蘭」というよりも「李香蘭という存在が作り上げられた時代の流れ」かと。

山口淑子と川島芳子。
この二人の「ヨシコ」は日本と中国の掛け橋となるべく、理想を追った「裏と表」の存在として共にこの物語での狂言回しをつとめていたように見えました。
事前知識で川島芳子のほうは清朝の王女として生まれて(ラストエンペラー・溥儀のいとこ)、日本人の養女となり、「東洋のマタ・ハリ」と呼ばれた男装の麗人。というキーワードで知っていたくらい。
李香蘭については「かつての人気女優」くらいの知識でした。
「あの時代」の日中関係については知らないことのほうが多かったんじゃないでしょうか。
昭和初期から敗戦までの激動の歴史をダイジェストで見せてもらった気がします。
たくさんの事件が出てきていたけれど、歴史の授業で習ったことなんて記憶の片隅だし、習わなかったことなんて山ほどあるわけですし…。
それに気づかされたことで、この作品を観た価値は十分あります。

心底怖いのは、日本が突き進んで行った道の途中で、それを止めようとした人々が次々排除されていってしまったところ。
「自分の理想・信念を堅く信じ、それにまっすぐ突き進む」ことの危うさ…それは歴史が証明していることですけれど。

ラストの「以徳報怨」。
裁判長の下した無罪判決を歌っている歌詞、「憎しみを憎しみで返すなら 争いは未来へと続くだろう」「徳をもって怨みに報いよう」
最初は無罪判決に抗議していた人達がしだいに唱和していくんですが、最後まで歌わなかった人がいたところ。
日本軍に家族を惨殺された者が集まっている、という状況の裁判なのだから全員が歌ってたら嘘っぽかったでしょう。
史実を元にしたフィクションとはいいながらも、あくまで事実を客観的に描こうとしたことは良かったと思います。

くだらないことですが気になってしまったこと。
アンサンブルの方々って、いったい一人何役が平均だったんでしょう?
一役だけだったのって、香蘭・芳子・愛蓮だけだったんじゃないでしょうか。
それにしても7歳からの香蘭を演じていた野村玲子さん…15列目から見ていたらほんとに子供に見えました。すごい!!!
(もっと前で見たらどうだったんでしょう…って、お年を詮索しちゃいけないけど^^;)


おまけ。「ライオンキング」オープニング。
今日(4/29)マチネ公演のラフィキ役は青山弥生さんでした(他キャストは表がよく見えなかった)
青山ラフィキは良いといううわさだったのでちょっと悔しかったりします。
(なにせ当日までキャストがわからないから…見にいくのは毎回一種の賭けです)
「李香蘭」の開演時間が15分後なので、中央ロビーで待機してたら予想通り「春劇場」ロビーにぞろぞろと動物さん集合!
ちなみに最初にあらわれたのは小象ことヤングナラ(役の子がやっている)。これが可愛い(^^)。
そして幕が開いて「サークル・オブ・ライフ」がはじまると、後方ドアから動物たちが舞台へと入場していくのですが、動物さんたちは出待ちの間もロビーで歌って踊ってました。さすが。

さて問題のラフィキの歌い出し。
モニターが中央ロビー側にもあったので聞けたのですが、
ばっちり!!!
でした。(素人が言うのもなんですが^_^;)←大昔、歌を習ってたとき歌い出しの大切さを散々注意されたもので。
わたしの中では名誉挽回のライオンキングでした。
ああ、青山さんのときにちゃんと見てみたい…。あと下村さんのスカー役も(^^)

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