カー・ウォーズ

(SF・ボードゲーム)

 "Car Wars"。今冷静に考えると、なんとも奇妙でいい加減なネーミングにさえ感じられる。しかし、このゲームの持つプレイアビリティの高さは、まさに作者であるスティーブ・ジャクソンの天才ぶりを表しており、今振り返ってみても、実に良くできたゲームである。

 イギリスのゲームブック作家スティーブ・ジャクソンと同姓同名である彼は、既にその頃自分の会社"Steve Jacson Games"を持っており、「イルミナティ」などのヒット作もあった。そんな彼の作品が日本でも注目されたのは「カー・ウォーズ」だったと思う。ホビージャパンから発売された小ボックスのこのゲームは低価格であることも手伝って、中学生だった僕等にも容易に購入し、楽しむことができた。その当時、ようやくRPGに慣れ親しみ始めた僕等にもこのゲームの持つ魅力は新鮮で、夢中になって遊んだものだ。

 箱の中には説明書とチャート集、紙のマップとシート、そして移動スケールという簡素だが奥の深い仕掛けが入っている。基本的にゲームの目的は、「車を設計し、強い武装をほどこし、ライバルの車と戦って勝利する」ことである。試合に勝ち、賞金を得れば、さらに強力な武器を買うこともできる。そうやって自分の車をより強力にしていくのだ。

 このゲームの特徴は、「簡単で自由度の高いルール」、「サプリメントの豊富さ」、そしてなんと言っても「移動スケール」だろう。移動スケールとは簡単に言うと「移動力を測る定規」である。車の曲がるカーブを想定して15度、30度、45度などの角度がつけられており、それぞれに移動力が指定してある。プレイヤーはマップ上で自分の車を動かすとき、この定規を使って直進したり、曲がったりして、移動力の許す限り進むことができる。自分の車の性能、装備、速度などを記入するシートもあり、サイコロと合わせてゲーム内で使用する。敵車を追ったり、うまく離れたりして、自分の射程内から敵に攻撃をしかけ破壊し、行動不能に追いやっていく。

 コンピューターゲームの発達した今ならば、主役である車はロボットに置き換わり、移動スケールのようなアナログな道具を使わずとも、コンピューターが自動的に計算してくれよう。現在もそういうゲームはいくつかある。しかし、ライバルである友達とマップを囲んで、移動スケールを用いて車を動かし、サイコロに運をかけて一発勝負に出て成功した時の快感!まさに他に代え難い興奮と面白さがあった。

 また、このゲームには実に多くのサプリメント(追加ルール、オプション集)があって、拡張性が高いのも魅力だった。「アンクルアルバート自動車・武器販売店」と名うたれた膨大な量の武器カタログ、トラックなどの大型車両を扱ったサプリメント、ヘリコプターまでもが登場するサプリメント、闘技場に関する追加ルール集などなど。日本でも人気があったらしく、続々とシリーズは翻訳、販売された。

カーウォーズ
(Steve Jacson Games
/ホビージャパン)
チョッパー・チャレンジ
(Steve Jacson Games/ホビージャパン)

 その後、スティーブ・ジャクソンは現在も最高の汎用RPGとして名高い「ガープス」を発表して、さらにその名声を不動のものとしている。僕が「ゲームデザイナー」という言葉を真に理解しえたのも彼やイギリスの同姓同名さんが最初だったと思う。それぞれの作品にそれぞれのゲーム思想が色濃く現れている。

 確か、「カー・ウォーズ」は「ガープス」の中にRPGシステムに形を変えて組み込まれているはずである(日本では未発売か?)。もともと自由度の高いシステムだけに、自作RPG化も可能だろう。かなり昔のゲームなのに、今でもホビーショップなどで見かけることがあるので、是非一度プレイしてみてはどうでしょうか。

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