PM 0:00 渋谷に着く
2002年7月6日、PM0:00。私・ゴージャスD今井は東急東横線渋谷駅に降り立った。今日の目的は、「Good Morningティーチャー」2巻の発売を記念して行われる、重野なおき先生のサイン会への参加である。サイン会の開始はPM2:00。整理券をもらったときのお店の人の話では「10分前に店内放送で呼び出しをします。」とのことだったので、最悪でも1:50に会場に着いていれば間に合う。私はとりあえず空腹を満たすため、渋谷センター街へ足を踏み入れた。
PM0:30 とりあえず下見
カレーでお腹を満たした後、センター街を通り抜けてサイン会会場のブックファースト渋谷店へ向かう。それにしても暑い。この日の東京の最高気温は30.6℃。真夏日だ。照りつける日差しと人ごみが容赦なく体力を奪い取っていく。たった数百メートルの距離をへとへとになりながら、PM0:30、ブックファーストへたどり着いた。
整理券に書かれていた今日のサイン会の場所は、地下1階特設会場。やや余談になるが、私・ゴージャスは以前ブックファーストで行われたサイン会&握手会に一度だけ参加したことがある。それは10年位前からファンを続けている元アイドルの女優さんのものだったのだが、それはまあどうでもよい。そのときの会場もやはり地下1階特設会場だった。おそらく今回の重野先生のサイン会も同じ場所で行われるのであろうと思い、その場所へ下見へ。やはり時間が早すぎたのか、まだ何の準備もされていない。私・ゴージャスはサイン会までの時間をつぶすべく、外へ出た。
PM0:50 作戦を練る
「渋谷といえば、電力館♪」ということで、7〜8分ほど歩いて電力館へ。ここは入場無料で館内にイスも多いので、時間をつぶすにはちょうどいい。ここで今日のサイン会に向けてのネタを練ることにした。
まず考えなければならないのが、「自分は小坂先生のファンサイトを作っているものだ」ということを如何にして伝えるかだ。サイン会に出向くぐらいなのだから、自分は重野先生のファンである。しかし、それ以上に小坂先生のファンであり、ファンサイトの管理人である。そこはやはりアピールしておきたいところだ。電力館のイスに腰掛けながら思案した。
ふと思いついた。サイン会ということはきっとキャラのイラストなんかも書いてもらえるはず。それに、「グッティー」と、小坂先生の代表作である「せんせいになれません」には共通する役職のキャラがいるではないか。そこで、こんな展開に話を持っていくのはどうだろう。
重野先生:「何か描いて欲しいキャラはいますか?」
ゴージャス:「それじゃあ、保健医の和泉先生を…じゃ、じゃない!沖田先生をお願いします!」
重野先生:「和泉先生って、それは小坂キャラだろ!」
ゴージャス:「あ、す、すいません!実は私…かくかくしかじか…」
沖田先生は「グッティー」の登場人物の中では私・ゴージャスの一番のお気に入りである。酒飲みの女性は結構好きなのだ。個に身のキャラを描いてもらえて話もうまく持っていければ一石二鳥である。「ナイスアイデアだなあ」と自画自賛しながら私・ゴージャスは電力館を後にした。
PM1:40 再びブックファースト
ブックファーストへ戻り、5階のコミック売り場へ。今日のサイン会に参加する人たちがヒマをつぶすためにわんさかといるのではないかと思いきや、意外と閑散とした様子。ここでこの日発売の「電脳やおい少女」1巻を購入。その後3階の語学コーナーやら2階の文庫コーナーやらを冷やかしていると、PM1:50過ぎに館内放送が。
「お客様にご案内いたします。本日午後2時より『Good Morningティーチャー』第2巻の発売を記念して、重野なおきさんのサイン会を行います。整理券をお持ちの方は1階階段入口へお集まりください…」
いそいそと2階から1階へエスカレーターで降りていき、放送で指示された階段入口へ。「整理券の番号順に階段にお並びくださーい。」という指示に従い階段を上っていくと、自分の整理券番号が指定された場所はちょうどさっきまでいた2階の踊り場付近。「わざわざ降りていく必要なかった」と思いつつ、前後の人と番号を確認し、自分のポジションに付いた。
少しボーっとしていると、店員さんが鉛筆を持って列の横を歩き始めた。
「本日、サインに為書きをいれていただけますので、整理券の裏にご自分のお名前をお書きくださーい。」
おお、そういうシステムになっているのか。整理券を裏返し、自分のシャープペンシルで「ゴージャスD今井」と記入。書いておけば「『ごーじゃすでぃーいまい』でお願いします。ゴージャスはカタカナで、Dはアルファベットで、いまいは今昔の今に井戸の井で」なんて説明しなくてもいいから楽である。
また店員さんが回ってくる。
「本日、キャラクターを描いていただけるそうなので、描いて欲しいキャラクターを考えておいてくださーい」
ここまでは思った通りである。描いて欲しいキャラクターはとっくに決定済み。あとは話をうまく持っていけるかどうかだ。
PM2:00 いよいよ
階段に並んでいて一番困るのは、前後の様子がほとんど分からないことである。自分から見渡せる範囲は、1階と2階の間の踊り場から2階と3階の間の踊り場まで。当然地下1階の会場の様子がどうなっているかなんて全く見えやしない。しかし「見えませんでした」ではレポートにならないと思い、一旦列を外れて先頭と最後尾の様子を伺いに行った。列の最後尾は3階付近で、ざっと見たところで参加者は80人くらい。男女比は男:女=9:1くらいで圧倒的に男が優勢。年齢層はほとんどが20歳代のように見受けられた。
てなことをメモ帳に書き付けていると、階下のほうから拍手の音が。時刻はPM2:03。サイン会が始まったようである。
先頭から10人が呼ばれて地下1階の特設会場へ移動。どうやら少しづつ会場に入れていくようである。私・ゴージャスを含む10人が地下1階へ招き入れられたのはPM2:25頃。いよいよである。
PM2:25 会場へ
地下1階へ降りていくと、そこにはパーティションで区切られたサイン会会場が。階段の位置の関係で会場の後ろから見渡す形になったが、何とか全体は見渡せる。
机の真ん中には重野先生。世間一般で言われているようなアフロヘアではなく短く刈り込まれた髪型で、服装はアイボリーのTシャツにジーンズという格好。お洒落というには程遠い(失礼な)。重野先生の左横には黒のシャツに黒のズボンをはいた人が立っており、先生にサインをするための本を1冊ずつ手渡している。おそらく編集のモッチーさんであろう。その他スーツを来た男性が周りに2、3人。様子から、書店の偉い人か竹書房の偉い人と思われる。また、机の横には花篭が2つ置いてあり、会場に華やかさを添えている。(後から確認したらこれは芳文社からのものであった。)
ふと会場の外を見ると、どこかで見たことあるような女性が2人、サインをしている重野先生を見つめている。「誰だっけ」と考えてみると、『コンビニぶんぶん』の藤島じゅん先生と『白鳥課長の素敵な生活』の神奈川のりこ先生だった。(注:藤島先生は確実なのですが、神奈川先生は定かじゃありません。別人だったらごめんなさい。)
重野先生は参加者の要望を聞きつつ、イラストを描き上げていく。ちなみに私の前の何人かの人のリクエストは、「ゆいゆい」「ヨーコ先生」「校長」「重野先生のお気に入りを」など。ちょっと覗き見した感じでは「お気に入りを」のリクエストには菅野舞(アズマが教師になるきっかけになった先生)を描いていたようであった。
PM2:30 いよいよサイン
「次の方、どうぞー」
店員さんの誘導に従って重野先生の前に進むゴージャス。いよいよ考えておいたネタを繰り出すときが来た。
重野先生(以下「重」):「こんにちは。」
ゴージャス(以下「ゴ」):「こんにちはー。よろしくお願いします。」
ここで重野先生、店員さんから渡された紙を見る。さっき自分のハンドルを書いた整理券である。
重:「えーっと、ゴージャス…ディー…いまいさん?」
ゴ:「は、はい。」
モッチーさん(以下「モ」):「ハンドルネームみたいだねー。」
ゴ:「あ、その、ハンドルネームなんです。」
重:「ゴージャスD今井…どこかで聞いたことがあるな…」
どうやら重野先生の中ではゴージャスD今井という名前と「がんばれ小坂俊史」とは、まだ結びついていない様子。
重:「さて、何を描きましょう?」
ゴ:「えっと、保健医の沖田先生をお願いします。」
ち、違ーーーーーう!ここで言うべきセリフは「それじゃあ、保健医の和泉先生を…」だ!焦るゴージャス。しかし一度出た言葉はもう取り戻せない。
モ:「お、沖田先生かー」
重:「来たねー」
さらさらとマッキー太字を動かして沖田先生を描き始める重野先生。その前で立ち尽くすゴージャス。頭はフル回転で次の言葉を考えるが何も思いつかない。
モ:「沖田先生、好きなの?」
ゴ:「い、いや、ちょっと狙ってみました。」
そんなセリフを吐いたところで何を狙ってたのかは全く伝わらない。焦りはだんだんピークに達し、にっちもさっちもいかなくなったゴージャスは正攻法に出た。
ゴ:「(おずおずと)あの、実は私、小坂俊史先生のファンでして…」
モ:「あー」
重:「ほう」
やや気まずい空気が流れる。言わなきゃよかったか。
重:「あ、ゴージャスD今井って、小坂のファンサイト作ってる……?だから名前を聞いたことあったのか。」
ゴ:「そ、そうです!」
助かった。これで話がつなげられる。
ゴ:「今日は敵情視察に参りました。」
重:「(苦笑しつつ)俺は敵かい!!」
ゴ:「あ、いや、その、『好敵手』ってことで…」
なんだか何を言っても深みにはまっていく感のある今日のゴージャス。最悪である。
重:「今度、小坂にも言っておきますよ。」
ゴ:「ありがとうございます。」
なんて話をしているうちにサインは完成。モッチーさんがサインの上に薄紙を挟み渡してくれた。
ゴ:「ありがとうございました。がんばってください。」
そそくさと会場を去るゴージャス。その胸中は後悔ではち切れんばかりであった。
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