20世紀を歩く
☆1982年 東北・上越新幹線開業☆

売りに出された難物

 1982(昭和57)年、着工以来約10年の歳月をかけて、大宮―盛岡間に東北新幹線(6月22日)が、大宮―新潟間に上越新幹線(11月15日)が開業した。特に上越新幹線は越後の山岳地帯を抜けていくため、鉄道史上稀に見る難事業だった。上毛高原の手前、1万4857mの「中山トンネル」や、水上から谷川岳の下を通り越後湯沢までを一気に抜ける2万2221mの世界最長の山岳トンネル「大清水トンネル」などを抱え、出水と事故に悩まされた。

 前者は突然の湧水で2年半かけて掘り進んだ斜坑が水没し、それを放棄してルートを変えたら今度は2キロ程の工区全部が水没してしまい、最後は110台の長尺ボーリング機械を日本中からかき集める騒ぎとなった。後者では、1971(昭和46)年の着工以来、2m四方もある岩石が突然飛び散る「山ハネ」という現象が起き、また1979(昭和54)年には16人の死者を出すトンネル火災を起こしている。

 しかし1980(昭和55)年、ついに開通にこぎつけた。このトンネルの開通時にまたもや出水が発生したが、現在ではそれは缶に詰められ「大清水」と称してJR東日本の自販機などで売りに出されている。新幹線関係者にとっては売り払ってしまいたいくらいの難物なのである。


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