金鯱号
名古屋港の周辺は、ウォーターフロントとして鳴り物入りで再開発された地区だけあって、なかなか近未来的な風景をなしている。東京でいえば臨海副都心、大阪でいえば天保山か。
と、沖合いから光輝く物体が。なんと金鯱が、みるみる近づいてくるではないか。
この近未来的な湾岸に、まったく異形のものが、こつ然と出現した感じである。
いよいよ船内に乗り込んだら、最上階のデッキに陣取ろう。星野仙一にあやかって「でらうま」でも飲みたくなるが、そこはちゃんと船内の自販機で販売されている。
さて、出航……っととと、この船の特徴的なところは、やたら揺れるのだ、波静かな湾内なのに軽いローリングを繰り返している。こんなところで「でらうま」を飲んだら酔いが早く回ることうけあい……っととと。
よく考えたら、この船は、船の長さに比して背丈が相当高い。それに正面から見るとわかるが、双胴船じゃありませんか、こんなに小さい船なのに。つまるところ重心が高くてアンバランス、なのでよく揺れるのである。
しかも車窓自体は、バナナの倉庫とか自動車積み出し埠頭とかを見せられるだけ。その上、水上バスみたいに目的地へと移動するのならともかく、また同じ所へと戻っていくのである。もともと港湾の遊覧船なんてそれほど見どころがあるものではないが、このローリングのまま40分も湾内を引き回されるのは拷問に近い。ト、トラベルミンはどこだ?……
やはり金鯱は名古屋の守り神。守り神は遠くから崇めるものであって、こいつに乗ろうとか、またがろうとか考えてはいけないのかも知れない。