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きわめつけが「電動猿」。“みざる”“いわざる”“きかざる”など五体の猿の模型が安置され、おのおの頭をなぜてやると、センサーに反応して手が動きだす。“みざる”は目を隠すように手が動き、“いわざる”は口を、“きかざる”は耳のところに手を持ってくる。世代によっては、往年のせんだみつおの芸を思い出す人もいることだろう。 で、三猿はいいとして、残りの二体は何かというと“おこらざる”と“みてござる”。後者は手にもった双眼鏡を顔に当てる。それも屋外に置かれているためか、油切れのきしんだ音を立てながら。“みざる”と“みてござる”が一緒にいるのもおもしろい。残り二体を加えなければならない理由でもあったのだろうか? |
![]() 「宝物館」も覗いてみる。ゆかりの小刀が、展示台からはずれてケースの下に転がっていて、もののあはれを誘う。NHK大河ドラマ『新平家物語』(1972年)のスチール写真がほこりをかぶって通路脇に放り出されていて、諸行無常の念を強くする。仲代達矢が若い。 |
もちろん、こんなものだけではない。一隅の観音堂には四国八十八札所の砂が集められている。年輩の夫婦がその砂の納められた祠ひとつひとつに賽銭を置き、丁寧に参拝してまわっている。山道を10分ほど登った奥のお堂ではお百度参りの姿も見かけた。観光地的な娯楽性が意識されている一方で、ここは今でも厚い信心を受けている寺である。 お伊勢参りや七福神詣でに見られるように、昔から神社仏閣への参拝は娯楽の側面も持っていた。昔、寺社がテーマパークだった名残といえようか、須磨寺はその余韻を現代にまだ残している。その意味でここは古刹なのであった。 |
■大本山 須磨寺 ■住所 兵庫県神戸市須磨区須磨寺町 ■TEL078−731−0416 ■交通 JR山陽本線須磨駅より徒歩15分、または山陽電鉄須磨寺駅より徒歩5分。 |