安田講堂内の会場には、さまざまな学術標本がノンジャンルに並んでいる。生物の液浸標本の脇に神殿の石像が、ミイラの隣に幾何学模型が、さらにその背後に薬物標本が、という具合。分野とか専門云々と細分化される以前の、黎明期の大学の雰囲気を再現しようとしているようだ。まるで会場は、明治初期の「内国勧業博覧会」もかくやと思わせる雰囲気だった。

 そして、見ていておもしろいと思うのは、観客の反応である。「ほー」とか「はぁー」とか「これ見て見て、すごいよ」とかいいながら展示品を眺める観客の姿自体が、なにか展示品の一部のようにも感じられる。

 美術系の展覧会にありがちな、しかめっつらをしながらうんちくを垂れてしまうそれとは違い、また「ほー、これが黄金のなにですか」というような、一目見よう的展示会とは違った、観客の姿がそこここで見られた。

 種種雑多ノンジャンルに並べられていることで、客一人一人がどこに足を止めるかによってその人の、興味関心のあり場所がかいまみられる。ある一群は歯車やクランクを使った力学モデルに熱中し、またある一群は生物の精密画の前で、このクラゲような実物をピンで止められない生き物はどうやって描いたのか云々と憶測を繰り返している。ある親は鉱物標本の前で子どもに縷々解説し、またある者はひからびたチョウザメの剥製にカメラを向ける。
そんな観客の視線がじつに興味ぶか…シャコはどこへいった?シャコは?

「ふー、やっぱり日本家屋はなごむゼ。
ちょっと弥生系入ってるけどね」

こちらはいわゆる「お雇い外国人」が収集した魚の標本。
当時は、魚河岸に出向いてめぼしいブツを購入するのが日課、という学者もいた。
土産物屋の店先から、新種の貝が、しかも魚でいうとシーラカンス級の貝が
「発見」されたこともあるというから、河岸や土産物屋もあなどれないのだそうな。

 

あまりに数が多くて、目が疲れたそうだ。
「サングラスかけてきてよかったよ」

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