マイク・オールドフィールドの音楽


マイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)という天才的なミュージシャンの、その優れた音楽性、ギターテクニック、そして素晴らしい作品の数々、ヨーロッパにおけるその有名さを考えると、日本においては全くと言ってよいほど無名である事は不思議でならない。それは、普通のCD店に行ってみると、その扱っているCDの種類の少なさを見ればすぐに分かるし、マイク・オールドフィールドという名前だけでも知っている人を探すのは、洋楽好きの人であっても少ない。
実際、このホームページを開設するまでは、彼の音楽の素晴らしさを共有できる友人は皆無であった。それでは日本人向けしない音楽なのかというと、決してそのようなことはない。季節の移り変わりを表現し、遠い空の彼方に心を向かわせ、天国に行ってしまった恋人を悲しんだり、そして、打ちひしがれている心を勇気づけるその曲の表現の豊かさは、歌詞のある曲だろうが、無い曲であろうが関係なく聴くものの心に響いてくる。むしろ歌詞の無い曲のほうが、遥かに大きな表現力を持っている。それは長い英国の歴史とケルト民族からの伝統に支えられた音楽であり、同様に長い歴史のある、古典にめぐまれた日本という国に住む者にはぴったりであると思っている。
彼の音楽の素晴らしさの根本は、豊かな自然への原点回帰にあると想う。その根底にはスコットランド、あるいはアイルランドの豊かな自然、目の前に広がるのどかな風景を表現したものが流れており、美しいメロディラインに数々の楽器が実によく効果的に計算されて重ねられて、出来上がっている。歌詞のある曲も、その歌手の声は、あくまで楽器の一つでしか過ぎず、そのメロディをバックアップしているに過ぎないとさえ思う。そして、彼のピックを使わないリードギターの湿り気のある音が、その素晴らしいメロディと共に心の中に染み込んでいくのだ。一度好きになってしまったら、もう麻薬のように何度も聞きたくなる曲の数々は、長い歴史の中で評価され生き残ってきた数々のクラッシック音楽と同様の高い質がなければ、ありえない事だ。彼の音楽に一度はまってしまったら、他の曲を聴く事ができなくなるという多くの彼のファンの意見がそれを証明している。事実、自分もいろんな音楽を聴くが、あくまでも彼の曲と比較した上でであり、他の曲を聞いて、また彼の曲に戻るに過ぎない。
また不思議な傾向として、同じ彼の大ファンであるにも関わらず、曲の評価が人によって異なることだ。もちろんTubular Bells、Ommadawnのように誰もが傑作と評価するものは別として、特に最近の曲あたりでは、とってものめり込んでいるファンもいる一方、あまり評価しないファンもいる。これも彼のたくさんの作品が、決して飽きる事の無い、麻薬のように心の中に響いていく理由なのかもしれない。
初めて聴いたときはそれほど印象が残らなくとも、何度か聴いていくと、いつのまにか抜け出せなくなっているのも彼の曲の特徴だ。やわらかな曲、ハードな曲、いろんな数多くのタイプの曲があるが、その根底に流れる素朴な旋律が、聴く者の感性に訴えかけてくる。それを聞いた我々は、自分たちの人生の今までの経験と重ね合わせながらも、昔子供の頃に皆持っていた素朴さ、純粋さを蘇らせていく。人は皆育っていく中で、いろいろな道を歩んできているが、生まれたときに持っていたもの、そして人間が原始の頃から持っていた大切なものを決して失ってはいけないと訴えてきてくれる。歌詞のある曲、無い曲それぞれに。人によって評価される曲が異なるのも、人それぞれの歩んできた人生が違うからといったら言い過ぎだろうか。
彼が日本で無名なのは、歌詞の無い曲、そして1時間前後にもなる大曲が多いことだけで、日本人には受け入れられないという間違った先入観によるものではないかという気がしてならない。ただ、日本においてはまったくの少数のファンだけが、幸運にも彼の曲と出会い、人生の大いなる潤いを与えてもらっていることは揺るぎがたい事実だ。もし、何かのきっかけでマスコミで取り上げられたりすれば、日本でも大ブレイクしてもおかしくない。ただ、一方でそうなったとき、少数のファンたちはさみしい思いをするかもしれない。そう、自分が密かに大切にしてきたものを、他の多くの他人に取られてしまうように感じてしまう事だろう。共有できる友人が少ないという一方で、自分の大切なものとして密かに持っておきたいという、ジレンマがあることも事実だ。

彼の曲に本当にはまってしまった人は、死ぬまで彼の曲から離れる事ができないだろう。そんな仲間を増やしたいという気持ちもあるから、こうしてこのホームページを開設したしだいです。


もしたまたまこのページを訪れて、彼の曲を聞いてみたいと思われた方。どの曲から聴くべきか、ご遠慮なくご相談ください。お好きな曲のジャンルにあわせて、お勧めの曲をご紹介します。


このホームページをご覧の方でマイク・オールドフィールドのバイオグラフィーに興味を持たれた方にはElements Boxに入っていた本のバイオグラフィーを私が翻訳したものを差し上げます。(テキストデータ)ホームページに掲載したいのはやまやまですが、著作権を考慮して控えております。以下の条件を守れる方で、どうしても欲しい方にだけメールで差し上げます。その旨メールでお申し出ください。