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Zawaさん空へと旅立つ

 以下は、石沢さんが自分で作成した、気球搭乗旅行の記録でアル。

長文なんで、ちょっとした目次(リンク)を作っておいたケド、跳んだ先から戻るためのリンクを張ってないんで、目次に戻る時はCtrl+HomeなりAlt+BackSpace何なりして下さいな。


      気球搭乗体験記 ////////////石沢 雄二


  まえがき  ////

 今回の企画を何と例えればいいのでしょうか。?
さかのぼって考えると 2年ほど前に『空を飛べたら面白いだろうな。』と思い始めた
のがきっかけで,良く考えるように成りました。
『単純に思いたっただけなのか。?』
『現実に形にするには、どうしたらいいのか。?』
『私は,一体,どんな乗り物に乗れるでしょうか。?』
どうせ乗るなら直接,外の空気を肌で感じられる乗り物に乗ってみたいと思っていま
した。
去年の 7月,横浜に遊びに行った時の話です。
一緒に同行してくれた 2人の介助ボランティアのうちの一人,渋谷さんという方と外
泊の一日の予定を終えて夜,ホテルで談笑している時の話です。偶々,渋谷さんが先
週まで『北海道函館市でモーターパラグライダー乗っていたんだよ。』と話してくれ
ました。
『空を飛んでいる時に虫が顔に合ったって痛いんだよ。』
『カラスを追いかけると怒って向かって来るんだよ。』
とか色々話してくれたのです。そう言った話を聞いていると
私も『私も乗せてくれるかな。』と渋谷さんに話してしまいました。
モーターパラグライダーの場合,タンデム飛行をする時,当然,パイロットの身体に
ハーネスで固定されて飛行する訳ですが,問題は,タンデム飛行をする場合,パイロ
ットの人は,インストラクターの資格がないと同乗者と一緒に飛べないと言う話です
。 もう一つの問題は,身体のみを固定しても足は宙ぶらりんの状態で飛行する格好
になります。 離陸が上手くいっても着陸に失敗したら骨折は免れません。私の現在
の体調を考えるとパラグライダーの同乗は, 困難と考えて,他の乗り物を検討して
みることにしました。私が空をを飛ぶにはどんな乗り物が的確なのか。?
セスナ機やヘリコプターに同乗すれば簡単で安全の確率も上がってくるのですが,ど
うせ飛ぶなら『直接肌で風を感じられる乗り物に乗らなければ意味がない。』
熱気球と同じ時に候補に上がった乗り物が『ライトプレーン』でした。
果たしてライトプレーンは,自分が安全に乗れるようなポジショニングが取れるか。
?・・・・・
タンデム飛行になってしまうのにはやはり不安があったので取りやめにしました。今
年の目標の一つに『気球搭乗』を掲げて新年を迎えました。 3月に東京の実家に外泊
したときにパソコンで色々な所を検索してみることに....
まるで素人の私が熱気球に搭乗する準備をするにはどうしたらいいか。?
NIFTY のフォーラムリストを検索していると『エアロスポーツフォーラム』と言うフ
ォーラムがあります。直ぐにフォーラムに入会手続きを済ませてフォーラムの会議室
のタイトルリスト及びデータライブラリーリストを落としておきます。 オフライン
で会議室タイトルリストを閲覧していると14番会議室に気球(体験搭乗歓迎)と書か
れた会議室がありました。 『此処で間違いないな。』と考えた私は,さっそく自己
紹介と搭乗についての発言をUpしてみました。 会議室に自己発言をアップした 
2日後14番会議室の未読発言を落としてみると数人の方からコメントが寄せられてき
ています。その中で今回の計画の核になってくれている押田宏美さん(ハンドルネー
ム=ANY)に出会ったのです。
押田さんから気球関係者に私の気球搭乗希望の内容を通知して頂き全国の気球関係者
の意見を聞く事が出来ました。
山形で熱気球クラブで活動しているKさんからは
『現在の身体の状況について』聞かれました。
K さん曰く『在位保持,立位は出来るか出来ないか。?』車椅子に乗っていればどの
くらい前から乗っていますか。?
問題は,骨量が知りたかった様でした。Kさんご自身も頚損でパイロットをされてい
る方です。
熱気球大会を運営しているOさんからは 5月 2日〜 4日に長野県佐久市で行われる
『佐久バルーンフェスティバル』のお誘いを受けました。
一度,係留搭乗をしてみて『自分が乗るとすれば』という目で熱気球の離着陸や風の
強いときの挙動を見てもらっておくのもいいかな,と言うご意見でした。
他にも全国の様々な人達からご意見を伺って非常に参考になりました。
今後,この計画を進める為の最大の課題は『安全対策でしょう。』どんなに検討して
ても 100%の対策は難しいでしょうが周りの人を納得して貰える対策を考えられるか
が鍵になると思います。
押田さんとメールのやり取りで『飛びたいという意志は良く分かりました。しかし,
どんなに安全を考えて飛んでも事故は起きることを承知しておいてください。』と言
われました。
(全て自己責任と言うことです。)
後日,メールで病気についての説明と現在の病状について話をして見ました。私の希
望として車椅子のまま,もしくは,椅子のような物をゴンドラ内に設置出来れば良い
と考えましたが果たして脊髄損傷の方や頚椎損傷の方がフライトで使用している特性
のゴンドラが借りられるかどうか。?
車椅子でも乗れる気球『バスケット』に関しては,秋田のチームと,富山のチームの
方が作られたものと。山形のKさんと言う方が所有している物があるそうです。
発言してくれた皆さんの中には
『バスケット内に椅子で座ったのでは恐らく外はほ
とんど見えません。気球の特性からいって,どちらが進行方向になるかわからないこ
とからも,固定するのは問題があるかもしれません。しかも,安全に飛べると判断し
た気象条件でも不意に風が起こることもあります。安全に降りた場合でも着地する時
には椅子の上から飛び降りる位のショックを受ける場合も少なくありません。
このような場合は,健常者であれば膝でショックを吸収するのですが,椅子に固定さ
れていたとしたら骨の柔軟性によっては,頚椎や脊髄を圧迫骨折する可能性もあるで
しょう。そんなことになったら,二度と飛べないじゃないですか。飛
ぶんならちゃんと飛びましょうよ。』と言うご意見もあります。
バスケットに乗り込む方法として次に上がったのがハンモックで吊るされる方法です
。この方法は,確かに楽なのですが現実的に実現できるかはこれからの準備段階の様
子で決めたいと思っています。
 4月10日に押田さんが私の病院に来てくれることに成りました。当日は,気球のゴン
ドラを車に積んで来てくれるそうで見せてもらうことに成っています。今回の話し合
いである程度の方向性を決めないといけないのでとても重要な話し合いになるでしょ
う。
当日は,押田さんと一緒に某大学医学部付属病院で皮膚科の医師をしている気球乗り
のY先生も来てくれるかも知れません。


 4月10日

外は曇り空,午後からは雨が降りそうです。
私が入院している病棟の担当医の先生には事前に今回の計画について話していたので
13時に病棟で待ち合わせることになりました。場所は病棟内....
11時30分頃,外線が病棟に入ってきました。電話に出てみると押田さんからでした。
『道路が渋滞しているので30分位遅れます。』と言う話でした。
焦ってもしょうがないのでお昼ご飯を食べて押田さんの到着を待つことにします。
時計の針が12時に近づいて今日病院に来てくれる予定でいるもう一人の人,介助ボラ
ンティアの田中さんを病院の正面玄関に迎えに病棟を出て車椅子を走らせます。
この日に予定を合わせたのが丁度,介助ボランティアの田中さんが来てくれるので一
緒に話し合いに参加して貰おうと思っています。介助面のことは実際に活動している
人に聞いて貰ったほうが解り易いですからね。
 12時を数分廻ったところで田中さんが病院の玄関に登場です。
いつもと変わらないと思いきや一回り身体が絞れた様子でした。シェイプアップ作戦
の成果が出てきているようです。
田中さんにこれから病院に来てくれる押田さんが車の渋滞で遅れることを伝え,一時
。病棟に戻ることにしました。病棟に戻ってみると担当医の先生が予定より早く病棟
に来てくれていました。先生には再度事情を話して待って頂くことに成りましたが,
時間が空いてしまったのでその間,病室で以前,新しい電動車椅子用に製作して貰っ
たレバーの調整をして貰いました。
(取り付け位置を代える。)
調整は終わったものの今日の所は接着面が乾くまでレバーは動かせません。
身の回りの整理をしているといつの間にか待ち合わせの時間の13時30分が近づいてい
ます。田中さんと一緒に病院正面玄関に車椅子を走らせます。玄関に到着してみると
それらしいき人は見あたりません。私の車いすの特長を伝えてあるので待っていれば
声を掛けられるでしょう。
(外は,雨模様です。)
10 数分が経ってそれらしき人が正面玄関の自動ドアーから現れました。
一見して直ぐに解るところがいいです。気球のTシャツを着てれば一目瞭然ですよね
。簡単に挨拶を済ませて私の担当医が待っている病棟に向かいます。押田さんと一緒
に来る予定でしたY先生は都合が悪くてキャンセルに成ってしまいました。
病棟に戻って私の担当医の先生と私本人,押田さん,ボランティアの田中さんの四者
で話し合いを始めました。場所は私の病棟のプレールームです。
それぞれ立場が違っているので押田さんには気球についてのお話と安全の確保につい
ての話がが中心です。話の内容から受けた印象としては気球に乗ると言うこと一つと
して考えると『気球はスポーツ競技』だと言うことが良く解ります。どんな形にせよ
気球に搭乗する以上は健常者も障害者も関係なく自己責任で参加するものなんですね
。押田さんのお話は,危険性の話に終始しています。健常者でもかすり傷くらいは必
ずするそうです。
着陸を含めて飛ぶ判断,飛行プランはパイロットが最終的に決断しす。着陸の判断も
パイロットが下りると判断した以上はよほどのことがない限り必ずその場所で下りる
そうです。着陸するとパイロットが決めた以上はコンクリートの上だろうが土手にぶ
つけようが着陸すると思っていれば間違いないでしょう。
話し合いの中で主治医の先生から質問が出ました。高度に対する酸素量の減少の仕方
についてでした。
今日は,其処までの資料がなかったので後日調べて報告することになりました。
話し合いも無事に終わって病院の玄関に気球のゴンドラを見に向かいます。
駐車場から車を近づけて貰うと押田さんの愛車キャラバンの後部は荷物で一杯です。
車内は,ほぼギュウギュウ詰め状態で『良く積み込んでいるな。』と感心させられま
す。 ボンベはプロパンガス用を 3本,1本で標準家庭用で一ヶ月は使えるそうです。
このボンベを一回のフライトで 3本使いきるとは凄い熱量です。バーナーは,予備を
いれて 2連装装備,バルーンを膨らませる送風機も見せて貰っていつでも空が飛べそ
うです。
『フライトの後,気球のバーナーを使ってバーベキュー大会をする人が居ますよ。』
と押田さんが冗談交じりで話してくれました。このバーナーで出来るのかな,殆ど
火炎放射器のような火力ですよ。
ゴンドラは,籐製の物で床は合板の様な感じでした。何故かゴンドラの横に穴が空い
ています。
不思議に思って押田さんに聞いてみると『ゴンドラに乗り込む時に使う足を掛ける穴
ですよ。』ですって....
『フライト搭乗者に子供が居るとその穴から地上を覗いていますよ。』
やっぱり子供の特権か。標準的なサイズのゴンドラだと言うことでしたが思ったほど
広くなくてハンモックを乗せてしまうとゴンドラ内の 5割くらいのスペースを占有し
てしまいます。私が乗り込むことを考えるとハンモック設置で後何人乗れるでしょう
か。?
バルーン装備品を一点づつ記念写真に納めておきます。後片づけを見守った後, 3人
で病棟に戻り参考になるかと思って考えていた。いつも病棟で車椅子とベット間の
移動時に使用しているリフトで身体を釣り下げる格好をして
みました。一応写真に納めて検討することになりました。
今日の話し合いでは,『前向きに検討することで計画を進める。』と言うことで皆さ
んの合意を得られました。とても良かったです。

(今回の話し合いの感想:押田)
まず,主治医の話ですが,重い場合は数センチでも体が傾くと姿勢を維持すること
ができなかったり,呼吸器を必要とする患者は高所の酸素では呼吸困難だったりする
とのことだったのですが,石沢さんの場合は自家用車が普通に発進停止したり,カー
ブするくらいの事くらいは大丈夫で,呼吸もやってみないとわからないがそんなに心
配は要らないかもしれないが,酸素吸入器は念のため持っていった方が良いかもしれ
ないとのことでした(そんなに高く飛ばなければ言い訳ですけど)。ただし,やはり
気球に関しては認識がない様だったので,気球の着陸を何回か見てもらうこと,まず
は係留を体験してもらうこと,という事を検討してもらいたいと申し入れまし
た。可能であれば,佐久での障害者向けの係留なら大会でもあり,気球を理解するの
には絶好かもしれないと行っておきましたが,長野は遠いという印象でした。車椅子
ごと乗れる気球の写真も見せましたが,富山はもっと遠い。気球は,見た目よりも
ハードで,着陸時には平穏なときでも膝などにあざができていることは日常の出来事
で,たいした風でなくても着地の状態によってはバスケットが横に倒れることもよく
ある状況であり,そのような場合にはどういったアクシデントが起きるか想像しきれ
ないことも伝えました。介護者が抱いていっしょに乗るのが安全ではないかというご
意見もあったが,そのような状況ではかえって危険であるということ,また,気球に
は本人,パイロット,介助者の最低 3人は必要であろうとの考えも伝えました。さら
に,場合によってはチェイスが遅れることもあり,着陸時に何かあってもすぐに対応
できない状況も起こりうるということもあわせて説明しました。

次に,本人についてですが大きな声は出せないようですが,言葉ははっきりしてい
ます。フライト中のコミュニケーションには不自由はないと思われます。体の様子で
すが,自分で車椅子を運転できますが,コントローラーの微弱な操作はできるもの
の,手を降ろしたり乗せたりすることは自分の力ではできません。頭の重さは通常の
人と変わらないので,首が一番負担がかかるようで,頭の重心が腹筋を必要とするよ
うな角度では維持できません。しかしながら,骨格自体は割合に強度があり,車椅子
に深く腰掛けるために,一旦お腹にベルトを締めて固定してから,お辞儀をした姿勢
でボランティアの方に首の後ろをかなりな力で引き倒してもらい,ベルトを支点とし
て腰を後ろに押し付けるというような荒業が可能です。皮膚についてはやはり擦り傷
のようなものは簡単にできるようでしたのでこの点での応急処置の用意は必須と思わ
れました。

バスケットを持参したので,実際にくみ上げて,見てもらいました。石沢さんのアイ
ディアでは車椅子とベッドの乗り換えをするときに使用するネットを取り付けること
ができれば,安定度は良いしショックも吸収できるのではないかとのことなので,実
際に,そのネットにリフトで下げられた状態も実際に見せてもらいましたが,なるほ
ど少し横揺れしてもブランコのようになるので首には負担はかかりにくいし,上下の
ショックに対してもネット自体の柔軟性と,腰がエビのように曲げられることによっ
てショックが吸収できそうでした(ただし,あくまでもバスケットが立っていられる
ことが前提ですが,倒れた場合のことも対応できれば採用できるかもしれませんが,
余計な器具をつけているとかえって危険かもしれないという気もします)。

結論的には,本人にも主治医,ボランティアにも多少なりとも理解していただいて,
本人も焦らず気長に準備します。との同意が得られました。今後,メールで再度検討
の情報交換を行い,装置など必要であれば実際に検証し,ステップバイステップでや
って行こうということになりました。
(感想終わり)

  押田さんと話し合いをした後,押田さんからメールが届きました。数日前の病院で
の話し合いの様子を皆さんに聞いてくれたようです。
さっそく『高度と酸素の比率について』意見が頂けました。

(Mさんのメールを引用)

酸素比は変わらないと思いますが、 単位体積当たりの重量はボイル・シャールの法
則で変化。
山岳フライトを飛びたい人も増えており,酸素についての基礎知識を以下に記します
。興味のあるかたは目を通してください。
山岳フライトの巡航高度は普通 12000〜1500ft はとりますので酸素は地上の60%位に
なります。
人体各部位の酸素分圧が低下して,循環器,呼吸器,血液,腎機能等に影響が出ます
。これらを『低酸素症』ハイポキシアといいます。

 症状は呼吸回数増加。体がだるくなりボーとして汗が出る。寒気,又は逆に熱っぽ
  い感じ。爪の色がピンクより白になる。さらに目がかすみ暗くなってブラックアウ
  トする。眠気。皮膚・唇が青ざめる。そのままだと最後に失神・死亡する。

「有効意識時間」低酸素症になり、動作や判断力に障害が生じるまでの時間
   高度ft   10000      18000    20000      30000    40000   50000
   時間      安全        30分    5〜10分   1〜2分     30秒   10秒

*連盟の安全規定では12500ft以上で30分以上のフライトは酸素携帯となっています。
*低酸素症は自覚できにくいので,上空でお互いに 急に無口になった,訳のわからな
 い事をしゃべる等変化をチェック(地上との言動の差!!!)
 上が全員 症状になっているかも知れないので,チェースから無線で,簡単な計算を
 させてみるとかしてみる事も。
 空中では低酸素症にならなくても, 思考能力が落ちますので,フライトプランが重
 要。
(引用終わり)

 頂いた『高度と酸素について』の資料を元に担当医の先生に見せる資料を製作する
事にしました。内容としては高度一万フィートを基準に考えて気圧が三分の二になる
条件では空気中の酸素の割合が14%に成る(平地での空気中の酸素量は21%)
果たして私が酸素ボンベを携帯しないでフライトできる高度は何フィートなのでしょ
うか。?
数日後,編集してプリントアウトした文章を担当医の先生に手渡す。その日のうちに
回答を頂きました。
担当医の先生の話では『上空の酸素量が17〜18%以下に成らないような高度でフライト
すること,気圧で言うと4分の3気圧:高度では3〜4000フィート以下で飛んで下さい。
』との回答でした。酸素を運搬するための能力を示す指数%SpO2を下げない高度だそう
です。実際にフライト出来る高度については目安が付きましたので後は搭乗の際の安全
対策やフライトプランに準備が移れそうです。

 4月 25日

押田さん達のフライトが無ければ,実際の搭乗するための相談と準備のために病院に
来てくれます。午前中の雨の様子を見ているとたぶん来られるだろう。と思っていま
した。 9時30分を廻った頃,病棟に電話が入った様です。私は,未だ車椅子に乗って
居なかったので病棟の職員の人から伝言を聞きました。電話の主は押田さんでしたが
言付けは特にありませんでした。
(又渋滞なのかな。?)
病棟内で昼食を済ませると12時少し前です。今日のお手伝いに来てくれるボランティ
アの人,Tさんを迎えに病院の正面玄関に車椅子を走らせます。
薄暗い正面玄関を一歩外に出てみるとからっとした小春日和です。日差しを浴びてい
るとうっすら汗が出てきそうです・。まさに気球日和....
ほんの数分待ったところで駐車場に止めてあった車から人が出てきます。Tさんでし
た。もう先に病院について待っててくれたみたいです。相変わらず明るいTさんです
。それにしても外はいい天気です。本当に押田さんのフライトは中止になったのかな
。病院玄関のベンチでTさんと話し込んでいるといつものキャラバンが病院の駐車場
に入ってきます。間違いなく押田さんです。
今日も変わらないバルーンのTシャツを着てやってきました。
『朝あんなに天気が悪かったのにこんなに天気が良くなるとはね。午前中,病院に電
話したのも千葉の天気が心配だったもので・・・』とぼやいていました。
病院の正面玄関の空いているスペースを利用して車に積んできて貰った気球のゴンド
ラに病院で使っている移動用リフトのネットを借りてきて気球に装着してみました。
結果は,やはり,ハンモックを特注で製作してもハンモックの周りをかなり良く固定
しなければ身体がゴンドラの周りに当たってしまいます。ハンモックに何本も固定用
ロープを付けてしまうと同乗してくれるパイロットの身動きが出来なくなってしまい
ます。 しかし,平地でハンモックに乗っている状態でも横転時も保てなければ確実
に怪我をするでしようね。
予想外だったのが私の使用している手動車いすがゴンドラに意外にマッチしていてい 
ました。 足を乗せるフットレストを外してしまえば気球に搭載するボンベも邪魔に
なりません。
さっそく手動車いすを持って返って貰らい検討してもらいます。
着陸の後,ゴンドラが横転する確率は3〜40% だそうです。
手動車椅子をを使用するとなると車椅子の固定の仕方やクッションの入れ方,ヘルメ
ットの固定の仕方など問題も出てきますが,今日の所は此処までにします。
とにかくいつでも飛べるように体制作りをきちっと整えて後は当日のフライトを待て
るようにしたいと思っています。

 4月29日

 ゴールデンウィークを利用して実家の東京に外泊する。
手動車椅子を押田さんに貸しているのでいつもより荷物が少なくて変な感じです。
病院に迎えに来てくれた父親の話ですと『自宅に車椅子を持って行きます。』と押田
さんから連絡が入って居ました。結果はどうだったかな。
父親と一緒に兄と長女の姪っ子が迎えに来てくれました。
姪っ子の愛性は『まいちゃん』。
私は,小さい怪獣と呼んでいます。
それにしても一緒にいると疲れます。いつの間にか走り出すし,落ちつかせようと思
って近くのお店に入ってお茶を飲んでいるといきなり『たこ焼き』を食べたいという
始末,おまけに翌日の学校遠足のおやつ選びにも付き合わされました。
帰りの車に乗り込んで車を走らせた後もこの『まいちゃん』はダッシュボードに足を
乗せたり私の父親とじゃれあっていました。
(未だ元気だ。)
高速道路の出口付近に差し掛かったところで夕立が降り始めました。 西の空が明るか
ったので案の定数分で雨は上がりました。
インター出口を出て一般道路に入ると雨上がりのせいなのかな。車内から見える夕焼
けがとても綺麗でした。この時です。姪っ子の『まいちゃん』がとつぜん歌いはじめ
たのです。曲名は『茶摘み』
『夏も近づく八十八夜。チョンチョン』
『野にも山にも若葉が茂る。チョンチョン』
チョンチョンと,曲の合間にあいづちが入ります。
歌詞自体も正確でびっくりしましたが,車内から見える夕日とてもマッチしていて思
わず絶句してしまいました。自然にこんな曲が歌えるのですね。
喜怒哀楽を素直に表現している姿を見ているとこの子から不思議なエネルギーを貰っ
たような気がします。今回,実家で少し休もうと思っていましたが,時間がもったい
ないのでもう少し走ろうと思います。
  無事に東京の実家に到着,貸していた手動車椅子も午後15時頃には自宅に届けられ
てきたそうです。後で確認を取ってみたところ押田さん達のフライトは中止になって
しまい,予定が変更になったので車椅子を先に返しました。と連絡があったそうです
。ゴールデンウィークをのんびり使用と外泊してきたのにこれが悪夢の始まりでした
。実は外泊の数日前から右胸の痛みがあって痰も少し出ていました。用心のために内
服薬を貰って帰ってきたのですが,どうも症状は平行線で良くも無ければ悪くも成ら
ない。風邪なら熱が出るはずだけど右胸の痛みと痰が出ること以外,風邪症状が無い
のです。一体何だろう。?

 5月6日

病院に帰る日です。
体調は,平行線のまま病院に戻ることに成ってしまいました。
いつものように自宅の車で病院に向かいます。
高速道路もそんなに渋滞でもなく連休を早めに切り上げた人達が多かったのでしょう
か,普段通りの帰り道です。
無事病院に戻ったその日の夜,妙に咳と痰が出ます。右胸の痛みは余り変わりません
が,変に痰が出てきます。此の晩は,一晩中寝られなくて困りました。
『何が悪いのだろう。』
翌日,検査で胸部のCT を撮りました。
結果は,右胸の胸膜炎と肺炎と判明,やっと病気がはっきりしました。発熱もしてい
なかったので,今度は別の抗生剤を内服する事になりました。しばらくの辛抱かな。
その後,一度落ちついてまた症状がぶり返してしまい。完全治るまでにかなり時間を
費やしてしまいました。残念....
数週間後,体調も元に戻って外泊や実家に戻っても問題はなく病院に戻って来れます
。此の記録も書くことが無くて困ってしまいました。
この時,油断していたわけではないのですが,朝食を食べている途中で又,食べ物を
誤飲してしまって体調を崩す。数日で良くなったと思ったのですが,念のために取っ
た血液検査のデータが以上に悪い。なんだろう。間違いではないかと思って検査しな
おしたくらいです。結果は,同じでした。でも,原因が解りません,只,体がだるい
だけです。抗生剤を内服して数日で検査値も良くなりましたが,一体何だったんだろ
う。と今でも思います。
 9月に入ってやっと車椅子の改良に取り掛かります。
車椅子を壊すことは覚悟しているので全額自費の改良です。
考えていた改良を病院に来ている車椅子の業者の人に話してみました。最初は,ちょ
っと困った顔をされていましたが, 結局,思っていた物より改造箇所を変更して車椅
子の改造を発注。
頭のヘッドレストに枕を付けて頭には MTB用ヘルメットをかぶります。首が後ろにそ
れると頚椎に負担が掛かるのでヘルメットにハーネスを付けてヘルメットを半固定に
しました。身体には車椅子用のベルトの他にシートベルトを付けて最後に車椅子用の
一本ベルトで身体を固定する予定です。腕も前腕と肘掛けをベルトで固定,足首もベ
ルトで固定です。足を乗せているフットレストは取り外します。
(少しは車椅子がコンパクトに成ります。)
最後に乗り込むときに手先と足先,膝の横にカバーとクッションを装着して出来上が
りです。ヘルメット以外の準備が終わったのが10月20日です。
その後も体調は戻らず気がついてみれば12月に入っていました。何とか今年中に係留
抱けでもと思っていましたが,これも中止,12月のチャンスも調整がつきません。残
念。 12月中旬,病棟行事『忘年会』がありました。これが終わってしまうと後は
外泊を待つばかりです。忘年会から 2日後,朝起きてみると妙に喉が痛い。風邪かな
。熱はない
けど年末の外泊が控えているので早めに薬を貰うことになりました。外泊まで二週間
間があるので大丈夫だろう。と思っていました。これが大間違いでした。
発熱はしていないのに全く落ちつかない。
12月26日,外泊予定日。この日になっても体調は良くなりません。
体調が悪いのでこの日の帰省はドクターストップが掛かってしまいました。今年の年
末も又,体調不良です。
それから 3日後の29日,やっとドクターから外泊の許可が下りたので帰れることに成
りました。ちょっと疲れ気味。
ミレニアムは東京で迎えられます。
実家に帰省して 2日間を無事に過ごし1999年も終わろうとしています。
2000年も後数分に近づいてきます。
私は,自室のベットの上でテレビに集中,民放各社は各地のコンサート会場の中継を
映し出しています。私は,テレビ朝日の”大黒摩紀”の中継を観ながらカウントダウ
ン,・・・・。

無事,2000年の幕開けです。おめでとう....
安心したのも束の間,2000年問題はどうなったのだろう。あんなに騒いでいたのに以
外と静かですよ。何故か拍子抜けの様相....
テレビ中継は時たま報道センターのほうに切り替わるが,何も起こらないのでアナウ
ンサーの人もばつが悪そうでした。初夢は見られるかな。大晦日が終わってやっとお
休みなさいです。

2000年,元旦を迎えまして,いつもより遅めの朝です。ご来光を見るどころか御天道
様はすっかり空の上に浮かんでいます。寝ぼけながら車椅子に乗り込んでお節料理を
食べにお部屋を移りました。此処まではいつもの元旦の何気ない光景でしたが,此処
からが悪夢の始まりでした。
『いただきまーす。』お雑煮のお餅を食べた瞬間,お餅が喉を通るときちょっと噎せ
てしまったのです。よくあることなのですぐに落ちつきました。
落ちついたところで残った料理も平らげてしまいましたが。....
食事の後,内服薬を飲んで一息したところで急に咳きこんできました。沢山胸に痰が
詰まっているような感じ
(まずい ....)
すぐに自室のベットに戻って対応したのですが結局,痰が上手く出ません。
仕方なく救急車を呼んで貰いました。2000年のミレミアムは,救急車に乗ることでス
タート,今年はどうなることや。....
救急車で搬送された病院で 4日間を過ごし,此の病院のドクターから『千葉の病院に
戻るなら退院してもいいですよ。』と説明をされる。
泣く泣く千葉の病院に車で戻ることにしました。
帰りの車の中でも特に体調も悪く成らずに病院に到着,それにしても病棟に入りにく
い。みんな,知っているだろうな。
こうゆうときは,元気に入っていくのが一番。
病棟に元気に突入したはいいもののしばらくは別室で過ごすことに成りそうです。
病院に帰ってきて安心したのか,数日は,良く眠りました。
年明け一ヶ月を経過して最初の,頃と比べるとかなり体調も楽に成ってきましたが,
右胸の違和感が取れません。まあ,此処まで来ると焦ってもしょうがないか。?
 2月の中旬,やっとヘルメットが到着,東京の実家には届いていたのですが,やっと
最後のアイテムが揃いました。面会に来ていた父親に病室で荷物をほどいて貰いまし
た。銀色に輝くアイスホッケー用のヘルメット重量 450gと聞いていましたが手に持
った感触は以外に軽くて助かりました。頭にかぶっても違和感はなくて首を傾けても
重さを感じません。ヘルメットはこれで大丈夫のようです。
 2月下旬,押田さんから連絡が入り
 4月22・23日、富山県砺波市で開催される
『チューリップバルーンフェスティバル2K:となみチューリップフェアプレイベン
ト』に来ませんか。?と話がありました。
話によるとこの大会に車椅子用のバスケットで参加するチームがあるそうで現在,こ
の車椅子用のバスケットを借りられないか交渉中です。
確実にこのバスケットが借りられて係留が出来れば行ってみたいところです。富山県
砺波市は富山県の西側に有り, 金沢に近。千葉から砺波迄高速で500キロ,時間にし
て車で6〜7時間くらいです。砺波から金沢まで高速で30キロくらいです。
関越道〜上信越道〜長野自動車道〜北陸道で,会場はインター下りて直ぐです。
砺波迄の電車のルートは,新潟県経由と滋賀県経由がります,まず新潟回りだと,東
京から新幹線で越後湯沢,そこから特急で高岡,後ローカル線で砺波で,時間にして
6時間ちょっとです。 滋賀回りだと,東京から新幹線で米原,そして特急で高岡,後
は一緒で時間は7時間位です。 どちらも3回の乗り換えになります。
交通の便は余り良くない,富山ということを考えると 3泊 4日は予定していないと行
けないし,色々考えた上で今回のお話は中止にさせていただきました,残念。

平成12年3月4日,往年37歳の誕生日を迎える。
めでたく1・2・3・4が揃う。西暦では,という突っ込みはしないように....

 3月に入ってめまぐるしく成ってきました。
渡良瀬に水が入る前に飛びたいですね。と押田さんからメールが入る。
調整の結果, 4月23日に係留を行うことに成りました。そして,本番のフリーフライ
トは 5月の連休明けを予定しています。
ボランティアの田中さんからメールが入る。田中さんの知人で気球に乗っている人が
いて協力しましょうと言ってくれています。T&Jバルーンクラブというチームに所
属している方のようです。押田さんと相談してみると押田さんも良く知っているチー
ムだそうで当日は協力していただけるようになりました。

 3月も終わりに近づき外泊で東京の実家に戻る日になりました。

実家に戻って数日後,ほぼ体制もかたまり搭乗の予定が決まりました。
予定を早めて 4月 22日に最終セッティングチェック,係留を行います。
 22日に準備に問題がなければ予定通り 23日にフリーフライトを実行します。
予定が早まった理由はバルーンクラブのOさんが, 某企業の車椅子搭乗仕様のバスケ
ットを借りることが可能なことと通常のバスケットに車椅子をセッティングするより 
は容易に準備が出来,安全でと思われます。
ただし車椅子搭載仕様のバスケットを借用する条件として万が一のための救護の体制
に医師など専門家を立てるなど配慮することを前提とのことですので,Y先生にお願
いしました。
実家での外泊中に,搭乗の予定がかたまりホッとしていました。
保険の件も個人的にもう一つくらい加入したほうがいいよ。と言われてイベント保険
に加入しました。
知人の保険屋さんは『一日かけても一週間かけても保険料は一緒ですよ。』と言われ
て,気球搭乗予定日の前後 7日間で保険の契約をしました。
勿論,保険料は,かけ捨てです。相談した保険屋さんには,普通,危険なことには余
り保険に加入させないようにするはずなのに,今回は,反対に激励されてしまいまし
た。変な感じです。


<<スケジュール>>==========  場所:茨木県・渡良瀬遊水池

4月22日(土)15: 00・渡良瀬遊水池にて地上にて本人も乗ってバスケット
               の最終セッティングチェック
             ・押田,沖野,佐久間(たんうるうぃーど)

4月23日(日) 5:00・藤岡運動公園駐車場集合。
              気象状況確認。
              ブリーフィング。
         5:30・セッティング
         6:00・フライト


P1 :I氏(T&Jバルーンクラブ)。

Pass:石沢
   介助ボランティア:田中・岡・伊東

Crue:押田,沖野,佐久間(たんうるうぃーど)
   林田(T&Jバルーンクラブ)              ※T&J・たんうるうぃーど

救護:Y 医師。

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 搭乗の予定もかたまって数日後,本番の搭乗日程が変更になってしまいました。
借用予定だった。車椅子用のゴンドラが借りられなくなってしまったのです。
此処まで来て焦る必要もないし,当然,手伝ってくれる人の理解が得られないと搭乗
できないので,今回は諦めることにしました。
代わりに当日は,普通のゴンドラでのセッテングとテスト飛行,ミーティングを行い
たいと思います。

  4月22日(土)

 渡良瀬遊水池に行く日がやってきました。
数日前から続いていた雨や寒さもすっかり収まってまさに気球日和です。天気予報を
信じると今日の天候は良さそうです。予想最高気温は23度,本当にこんなに暖かくな
るのかな。と思うような気温です。
現地,茨城県古河市の渡良瀬遊水池内,運動公園が集合場所です。集合時間が15時な
ので病院でお昼を食べてから来るまで向かうことにしました。
病棟の昼食の時間が11時30分,丁度,昼食を食べ始めて 5分くらい経ったころ,今日
の同行ボランティアの伊東君が到着。
さっそく,挨拶をしてから『病室で待っていて』もらえますか。?と伝えると伊東君
は『時間があるなら病院の近辺を散歩してきます。12時頃戻ります。』と言ってすぐ
に分かれました。
食事を食べ終わる直前,今度は,もう一人の同行ボランティアの岡君が到着。
挨拶もそこそこに準備に取り掛かります。
先日の19日に準備で荷物を纏めていたので病院の倉庫から手動車椅子を出して他の荷
物と一緒に確認をします。気球グッズだけは忘れないようによく見渡しておきます。
忘れ物をしたら笑っては済まないですからね。
荷物の準備も終わった頃,伊東君が病棟に戻ってきました。
さっそく目的地の渡良瀬遊水池内,北側に位置する渡良瀬運動公園駐車場を地図で確
認します。
気球をやる場所ですが,集合場所は渡良瀬運動公園で,東武日光線の藤岡駅傍です。
駅の直ぐ東側ですので,地図を見れば分かり易いかと思います。でも,地図で見ると
大きくて広そうなので,東北自動車道,佐野インターを過ぎて現地に近づいた時点で
待ち合わせているバルーンチームの人に電話を掛けてみようと思っています。それと
ホテルですが,佐野市奈良淵町のマリアージュ仙水で,佐野市の県道 9号線を北上し
て,弥生高を過ぎた先の県道沿いの右側に有ります。
時間も遅くなってしまいますから病院を出発する事にしました。
今回,車は,東京から福祉車両を借りられたので1BOXカーをボランティアの岡君
に東京から千葉まで乗ってきて貰いました。
病院の駐車場には駐車せず病院付近の中央公園に車を停めます。
車椅子に乗ったまま病院の正面玄関を出てみると凄くいい天気です。ジャンバーも着
なくても平気な感じですよ。現地は,どうなっているかな。
 3人で歩いていって数分で病院側の中央公園に到着公園内に入り左手のほうを見ると
見覚えのある車が置いてあります。1BOXカーです。特に借りた車でもないので
荷物を積み込んで現地に向けて出発です。運転手は,伊東君です。
いつものように東京までは,東還道,四街道インターで高速に乗り一路東京に車を進
めます。車内は,暑いくらいでエアコンを入れてしまったくらいです。
それにしても車のスピードが早い早い,こんなに早いのは久しぶりです。ちょっと緊
張気味。高速道路は,以外に空いていて首都高速もすぐに抜けられました。後は,東
北自動車道,佐野インターで下りるだけです。途中,空が晴天から曇り空に変わって
しまい,心配しましたが,佐野インターを下りるあたりで又,落ちついた感じに戻っ
てきました。
順調に車は,佐野インターまで到着,インターチェンジを下りると目的地の渡良瀬運
動公園駐車場まで約20キロ,県道 9号線を北上して藤岡駅に向かいます。
地図だけでもかなり近づいてきましたが,何故か良く解りません。
近いのにな。このまま走っても迷うだけなので近くのスーパーの駐車場に車を入れま
した。岡君のピッチ,で現場に居る田中さんに連絡をしようと思ったのですがピッチ
電波が全く入らず,困りました。車を駐車したスーパーに公衆電話が無ければどうし
ようと思ったのですが,電話は設置されていて助かりました。
電話で渡良瀬公園内の駐車場入り口を聞いてみると今の場所から少し戻って,左の坂
を上がったところらしいです。
車を指示通り走らせると本当に目と鼻の側まで来ていました。
すぐ目の前だったのに解らないものですね。
渡良瀬公園に入るために横道の土手沿いの道を車で上がって行きます。坂道の途中で
田中さんを発見,押田さんも解りましたが他の人は,誰が誰やら全く解りません。
田中さんが私達の車に近づいてきて車のドアーを開けます。挨拶もそこそこに....
『車を土手の下の駐車場に移動させてくれ。』と指示されます。
此の遊水池,町が入ってしまうほど広大な敷地の中を川が走り,川と川の間を土手が
走っているので,遊水池内を移動するには,土手のアップダウン,砂利道走行,橋を
渡ることの繰り返しのようなんです。
車を駐車場に入れます。駐車場と言っても砂利が引き詰められた広場という感じで,
とても広い,駐車場の反対側の土手を見てみるとゴルフの練習をしている伯父さんが
見えます。それにしても此の砂利道は,凄いな,車椅子のタイヤがパンクしないか心
配になります。
気球クラブの方も見えたので明日のためのセッティングの為に車の移動をする事に,
私達は,まるで解らない所なので押田さん達のクラブの方の車の後をよろよろとくっ
ついて行きます。車の振動が応えます。
『何処にって』って言われると『当然,お尻です。』と応えます。
(人間辛抱だ。)
数分,遊水池内を走ったのち川の側の空き地に到着,此処で本番で使用するゴンドラ
のセッティングを行います。押田さん達,チームの人は,車から気球の機材を出し私
達は,今回のフライトのために準備した車椅子を車から引っぱり出します。
風が 2、3m吹いていて心地よかったが,本番では,飛べないそうです。
今日は,バルーンの球皮は出さず,ゴンドラとバーナーを吊り下げるタワー,そして
ゴンドラ内にシリンダーを積み込んで準備完了,さっそく,押田さんがバーナーのテ
ストをする,風が強いのかなかなか着火しませんでした。丁度,ゴンドラに対して風
下にいた私をプロパンガスの匂いが襲ってくる。臭いぞー。
次の瞬間, ゴーッとけたたましい音と共に炎が吹き出しました。
(わーい,お祭りだ。)
此処で不思議に思ったことが一つあります。バーナーは,予備も含めて 2つ装備され
ています。
押田さんに『メインのバーナーって決まってるんですか。?』と尋ねたところ
『向かって左のバーナーがメインのバーナーですよ。チームによってどちらにするか
は違います。』と応えてくれました。メインのバーナーにシリンダーを 2本接続
して残り 1本のシリンダーは予備のバーナーのほうに接続して使用。
さっそくチームの方と一緒にセッティング作業。
普通のゴンドラを使用するので先に車椅子をゴンドラ内に固定します。数点のハーネ
スで車椅子とゴンドラを固定,続いて田中さんに抱えて貰って私自身がゴンドラ内の
車椅子に乗り込みます。此処で私を囲んでみんなが井戸端会議。このままだとパイロ
ットと私しか乗れないので予備のシリンダーのほうに車椅子をずらしてみては,と提
案。さっそく,車椅子から降りて車椅子の位置を変更します。もう一度,車椅子に乗
り込んでみると車椅子の左の方にもう一人乗れそうなスペースが出来ていました。一
応三人がゴンドラに乗り込んで見ましたが,問題なさそうです。明日は,実際のフラ
イトでのテストに移ります。
夕方になって風が冷たくなってきました。チームの沖野さんが黒い風船を膨らませて
みんなのほうに歩いてくる。みんなの前で離された風船は瞬く間上空高く舞い上がっ
て行く。沖野さんが手に計測器を持っていたので風船の飛んで行くスピードや方向に
よって上空の風の強さや高度差によっての風の方向を見ていたようでした,
明日は早いので宿泊先のホテルに戻って早めの夕食を取ることにします。チームの方
とは,今日は,お別れ『御苦労様でした。』
私達, 3人と田中さん,押田さんは,佐野市にあるホテル『マリアージュ仙水』に車
で向かいます。渡良瀬遊水池から約20キロ位離れています。
県道 9号線を走る続けると白っぽい建物が見えてきます。
ホテルに到着,ホテルに隣接する駐車場に車を停め,チェックインもしないでホテル
内のレストランで今日の打ち上げです。ホテル内で目立つのが結婚式後の披露宴会場
の人達,同じ階に式場があるので結構五月蝿いです。ちらっと他の人が見たのですが
『エジプト風の衣装を着た人達が披露宴会場で踊っていました,』と話していました
。これを聞いて大笑いです。
後で聞いた話ですが,此のホテルの名前に使われている”マリアージュ”ってフラン
ス語で結婚という意味らしいです。結婚式がやたら多い訳ですね。
食事中も気球の話やコンピュータの話に終始してなごやかに食事をしました。
時間は,19時前ですが,明日は,早いので押田さんとは,此処でお別れしました。
ホテルのフロントでチェックイン,キーを受け取ってお部屋に向かいます。
 5階でエレベータを下りるとすぐ右が予約したお部屋のようです。入室するとお部屋
の広さは十分なのに通路が狭くてユニットバスの入り口も狭い。それにバスタブの横
にジャグジー何てあるものだから余計邪魔です。最大のネックは,お部屋からユニッ
トバスまでの距離です。途中の通路が狭いのでどうにも成りませんよ。
後は,椅子がないとお風呂に入れません。
フロントと交渉の結果,快く椅子を貸して貰え,良かった良かった。
準備万端でさっそく 2人に抱えられてトイレに突入,此のドアーはなんでしょう。わ
ざわざトイレのあるほうに開かなくてもいいじゃない。
(外してカーテンにしたほうがよっぽどいいよ。)
力のある 2人のお陰でトイレもお風呂も無事クリアー。
ベットに戻るとホッとします。
明日の天気が気に成るところですが運を天に任せましょう。
時間は,未だ22時前,でも,明日の起床は,3時半です。
天井を見上げると 2つの小さいシャンデリアが列んでいます。その周りを無数の小さ
いスポットライトが取り囲んでいます。雰囲気は,いいですが,・・・
まるでラブホ....?

お休み....

  4月23日(日)

 ベットサイドのアラーム時計が鳴り出す。
『とっとと起きあがれ,』と言われているようです。
外は,と窓越しのカーテンを開けてみると真っ暗闇。
此処で二度寝してしまうと再起不能に陥りそうなので眼だけはしっかり開けておく。
着替えと荷造りを済ませて行動を開始します。無理にでも起きてしまったほうが眠気
が早く収まりますから。朝食は,後回しです。こんなに早い時間じゃコンビニ位しか
やっていないでしょうね。ボランティアの伊東君もお部屋に集合して出発です。
エレベータを利用して一階のフロントのあるフロアーに下りいます。
『シーン』と静まり返ったフロアー,早朝の 4時半にホテルをチェックアウトなんて
,こんな宿泊客,いないでしょうね。フロントの人には早朝,早くチエックアウトす
ると伝えてあったので,まさに待ちかまえていたように出迎えてくれました。ホテル
には,半日も滞在しなかったでしょうか。
急げ,急げ,荷物と私を載せた車は,夜明け間近の県道 9号線をひた走ります。
凄く道路が空いているので約15分で昨日と同じ渡良瀬遊水池の駐車場にたどり着きま
す。他の方は,大体,到着しているようです。
車椅子に乗ったまま車中から皆さんに挨拶を済ませて,今回の離陸場所に向かいます
。相変わらず酷い砂利道で車に乗って走っているとお尻に響いてきます。
到着場所は,遊水池内,センター新赤麻橋そばの空き地です。春先の陽気と思っても
早朝は未だ肌寒い感じです。東の空に浮かんできた太陽を見ると温かく見えるのにね
。反対に西の空には,沈みかけた月が空に残っています。ちょっと幻想的ですよね。
『ぼー,ぼー』っと遠くのほうから聞き覚えのある音が聞こえてくる。青色っぽい球
皮の気球が新赤麻橋のすぐ横あたりから離陸して行きます。
見ていると単独飛行のようです。
地上で見ているチームの方のお話では,今飛んでいる気球は,手作りで球皮も自分で
型紙を切ってミシンを使って縫い上げた物なんだよ。と話してくれました。
今日のデモフライトの準備に眼を移すと,気球を立ち上げる方向も決まりました。
気球の球皮やゴンドラを飛び立つ予定の方向に真っ直ぐ向ける。そして,ゴンドラが
引っ張られないように車のウインチに繋ぎ止めます。
さあ,球皮に息を吹き込む時間がやってきました・。
送風機が唸りを上げてバルーンに命を吹き込む。
まるで生きているように球皮が動き出します。
数分後,大きい岩の様に膨れ上がったバルーン。
押田さんが,バーナーの近くに近づき両膝でバーナーを抱えタイミングを待つ,この
頃,何処からともなくギャラリーが集まってくる,殆どの人がカメラを抱えています
。
その時,『いくぞー,』と言うかけ声と共にオレンジ色の炎が噴射,みるみるうち
にバルーンが空に浮き上がります。
それにしても,押田さんの顔ったら恐いくらいの表情です。
バーナーの角度を変えながら噴射を繰り返して行くとみるみるうちにバルーンは,ゴ
ンドラの上に立ち上がって行きます。
立ち上げ,無事完了です。飛べる状態で見るとかなり大きく感じますが,眺めてばか
りはいられません。さっそく,パイロットの押田さんが,乗り込んで待機,すぐ後に
伊東君が私のヘルメットを被ってゴンドラ内に固定した車椅子に座り込みます。続い
て介助者役の岡君がゴンドラに乗り込みます。
押田さんから緊急時のプロパンガスの流れを止めるバルブの操作の仕方を教わって,
テイクオフ。
いとも簡単に浮かび上がって行きます・。
ホッとした瞬間,『ちょっと待てよ。車のキーは誰が持っているだろう。』
無線,無線,伊東君が持ってるよ。
本当に,離陸直後に気がついたのでよかったです。
上空のゴンドラから車のキーにマーカーを付けて地上に投下して貰い。何とか無事に
キーは手元に戻ってきました。後は,押田さんのフライトの様子を地上で眺めること
にします。驚いたのが,最初,真っ直ぐ飛んでいった気球も高度を上下させるうちに
左の方に曲がって行きます。たぶん,コントロールしているのだと思いますが,実際
に見るとビックリしてしまいます。地上に待機していた同じ気球クラブの方も『押田
君も上手くなったね。』と呟いていました。この頃,上空は,十数機の気球がフライ
トしています。壮観です。
気球のフライトは,殆ど左旋回をして,丁度,反対側から戻ってきます。
まるでブーメランの様です。
離陸から20分を経過したところで高度をかなり落としてきました。上空に上がるとき
も早いけど,地上に降りるときはもっと早く感じます。
気球が下りて行く手前に土手があるので其処に着陸するようです。
私達も着陸点付近に車で移動です。
本当に近い位置に着陸したので歩いてでも行ける距離だったのですが,車で新赤麻橋
東側南の土手に到着。
車で到着した頃には,すでに気球は,土手に当てて着陸していました。私を車に残し
て皆さんは,バルーンの回収に向かいます。着陸場所が土手の下なので車椅子では下
りられそうにありません。車中で見ていると特に問題なく着陸しているようです。数
分後,着陸した地点から横に10メーターもない場所に他の気球が着地してきました。
殆どこちらのほうに向かって飛んでくるのでちょっと恐いですね。
しばらく,皆さんが話し合っている様子を見て居ました。
ボランティアの田中さんが車に戻ってきます。
『実際に,気球に乗って横転テストをしてみよう。』と声をかけられて
土手の上から下に着陸しているゴンドラまで,私は,御神輿のように担がれてゴンド
ラの車椅子に向かいます。再び,篭の人と成った私は,準備した装備に身を包んで左
右に倒される。結構,ベルトが食い込む,脇の下に入れたエアークッションが意外と
効いていてバランスは,良いです。両腕は,車椅子に固定してると身体の傾き方や反
動で骨折する可能性がありそうなので腕の固定は,取りやめにする事にしました。
ゴンドラを倒してみると車椅子の固定の仕方なのでしょうか,横に倒したときに車椅
子が90度以上横に倒れてしまいます。此の影響でヘルメットが地面についてしまいま
す。このまま引きづられたら首の骨が危なそうです。車椅子とゴンドラを固定してい
るベルトの位置を変更しなければ,
それから,車椅子の置き方を変更したので,介助者が一人乗れるスペースがあります
。今度は,介助者を一人プラスして計三人乗りでの横転テストです。左右に倒してみ
ましたが,人口密度が増えた分,少し恐いですね。それから横転したときに介助者と
パイロットの方は,脱出できるのですが,横転時に介助者やパイロットに車椅子が当
たって危険な様です。対応として車椅子の周りにウレタンマットで覆う様に準備しよ
うと言う話に成りました。
問題となったのが,ヘルメットの固定方法です。
予定では。ヘルメットと車椅子のヘッドレストの間をハーネスで半固定しようと考え
ていましたが,今回の気球搭乗の計画に参加してくれたY医師の意見で
『着陸時の最初の衝撃が,恐いですね。身体が前に傾けることが出来れば衝撃は和ら
ぎますが,そのあとの反動で首への負担が大きいですよ。ハーネスでヘルメットを
半固定するよりも,頚椎カラーを作って下さい。』と言われました。
搭乗の際の変更点も出て,今日のテストも無事終了です。
ゴンドラから出て私は,田中さんに抱えられて車椅子に乗ります。
気球の機材を車に積み終わったあと又,車を分乗して集合場所の藤岡運動公園駐車場
に戻ります。朝も未だ早いので駐車場に向かう途中で近くのコンビニに立ち寄って朝
食を買い込みました。朝が早いと妙にお腹が空きますが,食べ過ぎても行けないので
程々にお腹に入れておきます。
藤岡運動公園駐車場に戻ります。
本番のフライト予定でパイロットを予定している T&JバルーンクラブのIさんを待
ちます。駐車場の周りは,とてもいい天気で日差しが眩しいです。午前 8時を過ぎる
と他のバルーンやパラグライダー,スカイダイビングを楽しんでいる姿が目立ちます
。地上では,ウォーキングラリーらしき中年族の集団が黙々と歩いています。みんな
元気ですね。
一台の車が駐車場に入って来ます。駐車した車から男の人が一人,座席から下りてき
ました。どうやら,本番のフライト時にパイロットをお願いしているIさんのよう
です。
(他の人が,挨拶をしているので間違いないでしょう。)
Iさん,一件してみるとお酒のコーマーシャルに出てきそうな風貌です。
他のクルーの人達は,顔見知りなので挨拶もそこそこにIさんを交えてミーティン
グをはじめました。
今までの準備過程と今日のフライトの様子と最終的に私が車椅子で気球に乗れるかの
判断をして貰います。改造した車椅子の状態,ゴンドラ内に固定する方法装備につい
ては今日の準備フライトや横転テストで問題が明らかに成ったんで問題はないと思い
ます。実際に私がゴンドラに乗っても他の介助者やパイロットの乗るスペースも確保
出来ているので心配はないと思っていましたが,結果は,Iさんに委ねることにし
ました。
結果として条件さえよければフライトは可能でしょうという判断です。あとは,当日
の気象条件が全てです。気象条件がよくて穏やかなら準備にも余裕が出来るしクルー
の人達も動きやすい,風が穏やかならフライト時も余裕を持って乗れますし長く搭乗
することも可能です,なによりも気象条件が安定していれば着陸時の安全性も高まり
ます。残すは,私の当日の体調と天候の安定を祈るのみです。
本番のフライトの日程は, 気象条件の安定している時期を考えて6月の第一・第二土
曜日,日曜日の週末に行うことに成りました。パイロットのIさんや気球クラブの
人達ボランティアの人の了承も得られてほぼ本番の日程が固まりました。
よかったです。此処までやっと来たと言った思いが脳裏をよぎります。あとは,成功
という文字を気にしないで,出来ることを全て行って失敗しないようにしたいですね
。Iさんと,気球クラブの方と検討を祈ってこの場を解散しました。
此の次に此の場所に立つ時は,空の上です。
なにが見られるでしょうか。?
物思いにふけりながら車に乗り込み千葉の病院に向かいます。

<<フライトレポート兼会計レポート>>(押田さんの報告)

1.日時:2000年4月23日(日)
2.フライトエリア:渡良瀬
3.気象条件(天候:晴れ 風速:2m 気温:15℃ 湿度:70%)
4.機体情報(気球名:ブルーエンジェル 登録番号:JA-A-556 クラス:AX-7
              サイズ:2,160立米 重量:463lbs 総飛行時間:不明)
5.飛行目的(自
由/競技/訓練)自由飛行
6.離着陸(離着陸 時刻 グリッド 地名 総飛行時間)
離陸:06:01 新赤麻橋
最終:06:26 新赤麻橋東側南の土手
総飛行時間:25分
7.飛行内容(最高高度:1,650ft 最高移動速度:42Km/h
              最高上昇下降速度:6knot over 消費燃料:18Kg)
8.参加者と役割(P1 P2 Pu/t:A,B,I,S,C Pass)および会計
(役割 氏名 時間 単価 金額)
P1  (離陸−最終)押田   25分 50円/分 1,250円(P1 16時間17分)
Pass(離陸−最終)岡氏   25分 200円/分 5,000円
Pass(離陸−最終)伊東氏   25分 200円/分 5,000円
Chase(離陸−最終)沖野
9.その他(申し送り事項,支払発生など)
・充填はタナベエナジーにて。
・ODP氏から,古河の大会参加費,2,500円,3/31 のフライトフィー 3,700 円を清
算。
・ODP氏に,2月・3月のガス代,渡良瀬日興酸素立替分を支払い。

10.フライト詳細


 石沢氏のフライトのための予行演習。全日,車椅子を積んでセッティングの確認を
し,今日に臨む。介護の 田中氏,伊藤氏,岡氏。医師の Y氏。たんぶる,押田,
沖野,佐久間,に T&J の 林田(立ち上げのみ)が参加。昨日は3本積んだシリンダ
の内,対角位置にあるシリンダ方向に車椅子をセッティングしたが,もう一本のいつ
もシリンダを置かない対角方向に車椅子を積んで,シリンダに背もたれを固定する形
でセッティング。この方がスペースが取れる。車椅子のセッティングは試しに立ち上
げ前に行い,立ち上げてから,介護役の岡氏,石沢氏代役の 伊東氏を乗せる。伊東
氏は身軽にのってしまったが,石沢さんの場合は抱きかかえなければならない。
 フライト自体は,南東風と南西風があり,地上風は2,3m ある。実際の石沢氏の飛
行ではキャンセルするケースだが,万が一の状態としては用ケースのためフライト実
施を決定。センター新赤麻橋でレイアウトを行い,離陸。チェイスはと思ったら,車
椅子の車のキーがないとの無線。伊東氏が持ってきてしまっている。競技会よろし
く,キーを道路目指して投げるが,惜しくもはずして 沖野氏がちょっと探すが無事
発見。運動公園を目指すが思ったほど南成分がなく,一度高度を上げ,東に振って北
を稼ぐがかなり稼がないと難しそうで,東のほうの田んぼには大分水が入っていると
ころが見えるので,万が一風がなくなりそのあたりでうろうろするのも避けたかった
ので,他の気球が離陸している帯刀あたりに降下してそろそろ,1本が10%を切る状
態で,しかも車椅子に固定したほうから使ってしまったため一旦,ファイナルと判断
する。サーフェスはややあり,降下の衝撃を少なくして土手下からあえて引きすらせ
てランディング。ボンベを積み替えて飛ぼうと思えば飛べない風ではなかったが,最
初から大気が不安定とわかっている状態で飛ぶ気にはなれず。このまま終了。
 ファイナル後,石沢さんをバスケットに乗せて,セッティングの再確認および,万
が一倒したときのシミュレーションを行う。もう少し車椅子回りの緩衝材,頭の固定
を強化する必要があるようだが,おおむね良好,万が一倒した上体でも処置可能とわ
かる。
 回収後, T&J の 林田,I氏を交えて,今後のことを話し合う。その結果,今日
のセッティングで十分だろうということになり,本番を気候の安定する6月の上旬に
することにした。 可能であれば,金曜日から入り,土日の 2 回もしくは,3 回をね
らう。具体的な日程は石沢さんの都合もあり今後つめる。

<<フライトリポート終わり>>(押田)


病院に戻って数日,病院のリハビリのほうに相談して頚椎カラーを注文する事にしま
した。車椅子の改造の時もそうでしたが,使用目的が気球搭乗という特別な使用なの
で装具を作ってくれる業者さんが,難色を示す場合も在るかもしれない。とリハビリ
の方にも言われました。
取りあえず,装具のカタログを見せていただき,柔らかめの頚椎カラーのほうを選び
ましたが,あとは,装具を作ってくれる業者の方と相談して決めようと思っています
。
数日後,装具を作ってくれる業者の方が病院に来てくれたのでさっそくリハビリのほ
うに出向いて行きました。
最初は,作ってくれるか,心配していましたが,心配とは,裏腹に結構喜んで話を聞
いてくれます。気球搭乗時に被るヘルメットと干渉しないか心配していましたが,カ
タログに掲載されていた市販の Mサイズの頚椎カラーがピッタリ首に合って居たので
加工無しでこれを購入することにしました。(やれやれ,ホッと一安心)
しかし,ヘルメットを被って頚椎カラーを首に装着すると殆どロボコップ状態です。
借金は,していないのに首が廻らないよ。
その後,本番の日に現地に付き添ってくれるボランティアの人の都合もあって本番フ
ライトの日程を 6 月の第一土曜。日曜日に行うことに決まりました。
いよいよです。
事前の準備も殆ど終了,とにかく忘れ物をすると冗談では済まないので何回も確認し
てしまいました。
この頃,緊張気味だったのか,?嫌な夢を見ました。
気球の着陸に失敗して頭のヘルメットの右側が割れてしまった夢でした。
シャレに成らないよ。全く。

考えられる準備も終わって,テルテル坊主に思いを託しましょう。



<<スケジュール>>==========  場所:茨木県・渡良瀬遊水池

6月2日(金)      ・宿泊先への移動のみ

6月3日(土)  4:30・藤岡運動公園駐車場集合。
              気象状況確認。
              ブリーフィング。
         5:00・セッティング
         5:30・フライト
                15:00・フライト(4日の天気予報次第)

6月4日(日) 予備日  ・6月3日のフライトが中止に成った場合の予備日

P1 :I氏

Pass:石沢
   介助ボランティア:田中・渋谷・岡

Crue:押田,沖野,佐久間(たんうるうぃーど)
   林田(T&Jバルーンクラブ)              ※T&J・たんうるうぃーど
                                             ババーズは気球クラブ名

救護:Y 医師。


天候が,かなり気になりましたが,当日の朝を迎えました。
天気予報が,此処数日,二転三転していて今日 2日の日は,曇り空の様です。
明日 3日の日は,夕方から夜にかけて低気圧が通過するので週末の日曜日は,期待で
きそうにありません。チャンスは, 3日(土)の早朝でしょうね。
やっと,この日が,やってきたと言った思いです。
緊張感,と恐さがありますが,成功するようによりも出来ることを全て行って失敗し
ないようにしようと,自分に言い聞かせています。
この日の午前中は,通常通り病棟で過ごしお昼を食べてからボランティアの二人の到
着を待つことにしました。先に病棟に到着したのが,岡君です。元気そうに見えます
が,ちょっと緊張気味かな。
もう一人のボランティア田中さんの到着前に荷物の身支度を岡君と始めます。
気球搭乗で使用する車椅子の装備や準備等は事前にある程度済んでいるので後は,忘
れ物のないようによく確認をします。いつも何か一つ忘れ物をするので不安になりま
すが,準備万端です。
岡君と病室で話していると,田中さんが,現れました。元気そうです。
挨拶もそこそこに荷物を手動車椅子に積み込んで出発です。
この日のために買ってきて貰ったベージュのキャップを被ります。
田中さんが,『どこでかったんだよ。』いいながら,リュクから出して来た物は,同
じ色のキャップでした。私の帽子は,何も文字が入っていない帽子なので分かり易い
ですが,偶然の出来事でした。
時間は,13:30 分,そろそろ病院を出ることにします。
今日のこの日は,館林市の宿泊先の移動だけですが,首都高速を早めに抜けたいので
此の時間に移動するのが一番走りやすいと思います。
病棟で,見送りされた後,病院の正面玄関を出ます。外は,曇り空だけど以外と暑い
です。いつもの様に,福祉車両の駐車してある病院近辺の中央公園に車椅子をゴト
ゴト,走らせて行きます。公園入り口に差し掛かると,いつも借りているシルバー色
の日産キャラバンが見えてきました。
やっぱり,広い車は,助かります。荷物も積みやすいし乗り込みやすい。
車中が広いと圧迫感が無いのでその分,楽です。
此処からの運転は,田中さんと交代です。
田中さんが,自車に搭載しているカーナビを持参してきてくれたので道に迷うことは
ないでしょうね。カーナビの設定を終えて,いざ館林市の宿泊先のホテルに向かいま
す。此処からの道のりは,前回と同様なので安心して任せます。と言っても途中まで
は,東京の実家に帰る時と全く一緒ですがね。
天気は,曇り空,でも高速道路は,渋滞もなく空いています。東関道,首都高も外間
も予定通り通過,無事に東北自動車道に入れました。後は,館林インターまで向かう
だけです。風が少し強いのでしょうか,車が左右に振られます。
天気の不安もなく,無事,館林に到着,一路,R354に向かって宿泊先に車を走らせま
す。R354を左に行くと,右側にココスと言うファミレスが有るので,そこの信号を左
折して突き当たりがホテルなのですが,ホテル近辺まで来て見あたりません。やっと
の事で, 3階くらいのホテルらしき白い建物を発見,駐車場に車を入れて荷物と車椅
子を出して三人で一息,建物を見上げるとホテルというかどう観ても旅館の雰囲気で
す。一応,玄関までは,スロープが付いていて車椅子でも上れます。
後は,お部屋を観てのお楽しみです。
さっそく,ホテルのフロントでチェックイン,お部屋は,1階の 102号室です。
外見から観ていると旅館風なのにお部屋のドアーは,普通のホテルのようなしっかり
した扉で妙にアンバランスです。客室のドアーを開けると以外に広くて障害者対応と
いうふれ込みも満更,嘘ではないようです。ベットがお部屋にバランスよく収まって
います。続いてトイレと浴槽のチェックをしてみました。驚いたというか。トイレも
洗面所もほぼ完全に車椅子対応でした。お風呂は,ユニットバスでしたが,床を見て
みると排水溝が,きっちり,出来ていて浴槽の外でシャワーが浴びられそうです。ユ
ニットバスの横にシャワーチェアーが置かれて居たので間違いなく浴槽の外で洗って
もいいということでしょう。料金の割にきちんとした客室だったのでとても良かった
です。花丸....
荷物の片づけも終わって,早めの食事に出かけます。
ホテルの近くを廻ってみようということになってさっそく車に乗り込みます。
そういえば,寄り道をしなければ,
数日前に病棟の人に”せんべつ”を頂いたので,お返しに花でも送ろう,と思いつき
,ホテル近辺にあるフラワーセンターに立ち寄る事にしました。
ホテルから車に乗り込んで数分後,直ぐにお店に到着,お店の前に駐車スペースが合
ったので,車をお店の前に停めます。
店内は,切り花中心,外にあるハウス状の建物に鉢植えの花が置かれていました。
どうも,恁ういうの苦手なんですね。花屋に居る自分は,とても恥ずかしいですよ。
ひと通り見渡してもいい花がみつからなかったので,お店の定員さんに任せて郵送で
送って貰うことにしました。
続いて早めの夕食を食べに此の近辺の道路を散策してみます。
食べもの関係のチェーン店が軒を並べています。
考えてもしょうがないので,直ぐ先に見えた和食レストランに入ることにしました。
店内に入ってみるとお客さんも疎らでゆっくりくつろぐ事が出来ました。
どうも,此処まで計画がこぎつけると結構緊張気味です。食べ過ぎちゃ不味いかなと
か。変な物は,食べないようにしようとか。余計な心配をしてしまいます。妙に喉が
乾くのもおかしいな。まあ,いまのうちに緊張するのは,いいか。
御飯も食べ終わって話しも弾んでホテルに帰ることにしました。丁度,レストランの
道路の向かい側にカラオケ屋さんが見えます。
思わず,『明日,気球搭乗に成功したら,打ち上げだね,』とみんなで話していまし
た。
夕方も18時を過ぎて,此の辺りでホテルに戻ることにしました。(明日は,早いもん
ね。),やっぱり天気が気になります。ホテルの部屋に戻っても気になるのが天気予
報です。テレビ画面に映し出されている天気予報図を観ていると低気圧が太平洋上に
数珠繋ぎに繋がっていてまるで梅雨前線のようです。予報通りなら明日は,低気圧が
北上しないままで居るので天気は,晴れるようです。
(本当かな。)
後は,運を天に任せるしかないですね。
落ちついたところで,東京の実家に電話を一本入れる。
電話に出たのは父親でした。どうも,父親の話によると,明日の気球搭乗の件で押田
さんから電話が掛かってきた。と話していました。
何か合ったのかな。確認の為に父親の電話を切った後,直ぐに押田さんに連絡をとっ
てみました。電話に出てくれた押田さんの話によると『6月1日(金)の状況で週末の
天気が怪しかったので石沢さんと相談しようと思っていました,でも,今日の状況で
すと天気は,持ちそうなので計画通り行きましょうよ。』との話。
トラブル発生と思って心配しました。やれやれです。
今日は,洗面を済ませてトイレも済まして,お風呂に突入。
さっそく,ホテルに用意されていた。シャワーチェアーに腰を下ろします。
大丈夫かと思って腰掛けて観たのですが,以外とお尻が痛いのです。
普通は,此のタイプの椅子って弧の字型にアールが付いているのです。この椅子にも
アールが付いていたのですが,私のお尻にはどうも合わなかった様でちょっと参りま
した。何とかお風呂もクリアーしてベットに戻ります。
後は,『家宝は,寝て待てです。』明日を待ちましょう。
明日の起床は,午前 3時です。
この夜は,寝付けない寝付けない,最初は,暑くてしょうがなかったのですが,本当
に寝られない,途中でもう諦めてしまいました。横に成っているだけでもいいでしょ
う。私のベットの横には,田中さんが寝ています。普段,私は,ベットで寝ていると
自分自身で身体を動かすことは出来ないのですが,隣で寝ている田中さんを見ている
と,結構,普通の人って無意識のうちに身体を動かしているものなんですね。右に左
に身体をゴロゴロ転がして,布団を剥いでは,掛けての繰り返しです。見ていると結
構面白くて笑ってしまいました。よく,ベットから落ちないものですね。
明日の天気を気にしながら長いようで短い夜の出来事でした。


  6月3日(土)気球搭乗当日

目覚ましが,鳴り出す。
早朝の午前 3時,牛乳配達の叔父さんよりも新聞配達のお兄さんよりも早起きです。
それは,何故かと尋ねると,風船男になる為です。
(縁起が悪かったかな,風船男は,帰って来なかったよね。)
寝られなかった割には,以外と元気に朝を迎えました。
岡君も田中さんも目覚めが良くてお二人ともベットから起き上がってきました。
私が,岡君に『窓の外の様子を見て欲しい,』と呼びかけると私のベットの横にある
窓を開けてくれました。
私が『風は,吹いてる。』と聞くと
岡君,『殆ど風は,吹いて居ません,木の葉も,揺れていないし大丈夫ですよ。』
これを聞いて,かなりホッとしました。
フライト出来るかな。それとも,嵐の前の静けさなのか。
私達は,スケジュール通りに行くだけです。
先に,ベットから車椅子に乗せて貰って着替えを済まします。
一応,テレビのスイッチを入れてみますが,いきなり外国のプロモーションビデオが
映し出されてビックリ,テレビ番組は,未だ深夜番組の時間帯の様です。他のチャン
ネルに眼を移すと天気予報が,やっていました。降水確率は20%,最低気温16度,最
高気温22度,晴れ時々曇りのようです。少なくとも今日の午前中は,天気は,保ちそ
うです。心配は,風だけですね。
身支度を整えて忘れ物をしないように確認して出発です。
(此処で忘れ物をしたら冗談では済みません。)
荷物を持って 3人でホテルのフロントにフロントは,午前 6時に成らないとフロント
係がいない様なのでそのまま,フロントのカウンターにキーを置いて行きます。
(アバウトだな,)
午前 4時,ホテルの外に出る。
思わず空に眼を映してしまいます。
また少し,緊張感が身体を走る。
日の出は,もう少しかな。
車に乗り込んで,カーナビのセットを田中さんがする。
設定が終わるまでの間,三人とも沈黙。
何故か不思議に長く感じました。
車は,一路,茨城県の渡良瀬遊水池内の藤岡運動公園駐車場に向かいます。
通常ですと車で30分位,時間が掛かるところですが,こんな早朝じゃ,車の渋滞なん
てありません。あっという間に車は,目的地まで駆け抜けてゆきます。
駐車場の手前,の土手を上る坂道を掛けあがると広大な駐車場です。
時間は,4時30分に成る少し前です。
駐車場を見渡しても殆ど誰も知り合いの人は見あたりません。私達が,一番乗りの様
ですね。車から下りて見るとちょっと肌寒い感じでしょうか,上空は,曇り空ですが
,風は,ほぼ無風でした。静かな,遊水池内の駐車場にいると鳥の囀りだけが響きわ
たります。周りの景色を見ながら写真でも撮って皆さんの到着を待ちましょう。
あれー,駐車場内の敷地の離れた辺りに白い犬が寝ころんでいます。中型犬位の大き
さで首輪を付けているかは,良く解りませんでした。野良犬かな。でも,妙にリラッ
クスして寝ころんでいます。面白ろそうなので,車椅子のまま犬に近づいてみること
にします。『おい,犬』と呼びかけるのはおかしいので『タロー』と呼ぶことにしま
した。 ゆっくり近づいても反応を示さない。7〜8m手前でタローと目線が合う。ちょ
っとビックリしたように立ち上がる素振りを見せる。車椅子を停車させると又座り込
むタロー,睨めっこを続けていると走り去ってしまいました。
タローと遊んでいるうちに押田さんの車が駐車場に入ってきました。
いつもの見慣れた日産キャラバンです。
到着して車から下りてきた押田さんと挨拶を済ませてしばらく談笑。上空は,未だ曇
り空ですが,地上の風は,無風です。
ふと,横を見ると先ほど睨めっこをしていたタローがもう一匹の犬と一緒につがいに
なって駐車場に戻ってきていました。まるで人が見ていない時を見計らっているよう
です。
押田さんがフライト前の確認のために黒い風船を車内から取り出してヘリウムガスで
風船を膨らませる。気象確認のためです。押田さんの手から離された風船は,瞬く間
に西の空に向かって舞い上がります。田中さんが30秒ごとに時計をカウントしてゆき
, 押田さんが手持ちの計器で黒い風船の飛び方を計測して行きます。約5分で計測を
終了,地上と同様に上空の風も割と穏やかなようです。
今日参加して頂ける方も集まってきたので場所を離陸地点の『帯刀』と言うところに
移動します。車を便乗して,いざ遊水池内を帯刀に向けて出発。
行く場所を言われても全くもって広すぎて見当が付きません。
オフロード走行の始まりです。この場所を何時走っても車の走行路の悪さには,泣か
されます。まるで暴走禁止のためにワザと凸凹道を作っているようです。下手にスピ
ードを出すと車がバウンドして車の下を叩かれてしまいそうですよ。
身体に力を入れて頑張ってみても 2度ほど突き上げで頚椎が痛かったです。かえって
この砂利道走行のほうが疲れます。次回は,外周道路で行きたいな。
約数10分の走行で気球の離陸予定地の帯刀に到着。
車が停まって外に出るとフーと溜息をついてしまいました。
車椅子の上から空を見上げると曇り空ですが,風は未だ殆どありません。
敷地内に着いたときに何故か,敷地内で焚き火をしている人がいました。
他の人に『遊水池内で焚き火をしてもいいんですか。?』と聞いてみると,どうも,
いけないようです。焚き火をしていた人は直ぐに火を消してくれました。
敷地内の状況もクリアーに成ったので立ち上げの準備に移りました。
この頃には,気球クラブの方々も自然と集まってきます。
携帯電話は,こんな時,便利なんでしょうが,こんな広い遊水池内を場所を伝えただ
けで来てしまうなんて不思議なものです。
もう一人,お願いしていたボランティアの渋谷さんは,この時点になっても私達と
合流出来ません。携帯電話で話は出来るのですが,道路標識もない場所ですから
ただ西と話すしかないのです。
(だだ,西に来てと話す私達もアバウトですよね。)
気球クラブの皆さんが,気球,立ち上げの準備をしている間に,私は,気球用の為に
改造した手動車椅子を車内から運び出して貰って車椅子の準備に取り掛かります。車
椅子に乗った時に使っている足を乗せているフットレストは事前に外していたので後
は,ベルト類を装着,同行ドクターのY先生が準備してくれたウレタンマットを車
椅子に合わせて車椅子に巻いて行きます。(私以外の人が車椅子に当たると危険です
からね。)車椅子に乗った後,脇の下に挟むエアークッションも膨らませて貰い,最
後に車椅子の下にクッションを乗せて,後は,私自身が手動車椅子に乗って調整する
だけです。
空の車椅子を記念に一枚写真に収めて見ました。
気球用の車椅子は,先にゴンドラ内に固定して貰います。
黄緑色のハーネスと紐で予定通りに車椅子とゴンドラを固定。
気球の準備のほうは,球皮とゴンドラが飛び立つ予定の方向に向かって真っ直ぐにセ
ットされています。もう少し,時間が掛かりそうです。
今居る場所を見渡してみると小さくて白い花が結構多く咲いています。花の名前なん
て聞かれても解らないので後で確かめようと思い写真に納めてきました。これは,後
の後日談なのですが,病棟に帰ってから,この写真を見た人の話によると,どうも,
この写真の花は,『貧乏花』と呼ばれているらしくて,写真を撮っても実際に見ても
駄目らしいです。
(そんなこと言ったって,眼に入っちゃうものな。)
そろそろ,球皮を膨らませるための送風が始まります。送風機のエンジン音が響きわ
たってくると,そろそろかな。と気持ちが引き締まります。
早めに気球用の車椅子に乗る前に手足に付けるカバーを装着,同行してくれたドクタ
ーのY先生に借りた膝当てを付けて,準備万端。
バルーンの球皮が,送風機の風で生き物のように踊り出す。
小山のような大きさになった球皮に今度は,バーナーの炎がそそぎ込まれます。
着火のための種火に点火です。
バーナーの炎を送り込むのは,今日,パイロットとして乗ってくれるIさんです。
カッチ・カッチ,数回のうちに種火に点火。
パイロットのIさんが,バーナーの炎が噴射する方向を調整して居ます。
次の瞬間,ゴーっと言う音と共に,バーナーの噴射が始まりました。
バーナーが焚かれると見る見るうちに球皮は,膨らんで行きます。4 月に破れていた
球皮のスカートの部分も綺麗に修繕されています。
炎に導かれるようにバルーンが上空に浮き上がると気球のゴンドラも垂直に立ち上が
って行きます。此処からが忙しい,電動車椅子で立ち上がった気球に近づき,直ぐに
ボランティアの田中さんに抱えられてゴンドラの中で待機している岡君に身体を預け
ます。其処から直ぐにゴンドラ内に固定してある車椅子に乗り込みます。この日のた
めに準備したベルト類を順番に固定します,続いて脇の下に入れるクッションを装着
,最後に頚椎カラーとヘルメットを付けて準備万端。
ちょっと待てよ。足に装着したベルトに足首を固定するのを忘れてしまいました。
もっと早く付けなければ行けなかったのですが,気が付くのが遅かったです。今から
では難しい状況なので仕方なくこのまま飛ぶことにしました。
パイロットのIさん,も準備完了,持ち物は,コンパクトカメラだけにしています
。
『いってきまーす。』と言うかけ声と共にバルーンに炎か焚かれる。
バルーンに引っ張られて浮き上がったゴンドラがまるでビックリして震えたように横
に揺れる。林田さんが,いつものように,離陸した時間を伝えてくれます。地上のク
ルーの方が『楽しんできてね。』と手を振ってくれる。
緊張は,しているのだけど,反面,安堵感の様なものが身体を駆け抜ける。
離陸成功,最初は,本当に飛んでいるのかな,と思っていましたが,外の景色は,嘘
はないですよね。初めは,上昇を続けながら上空や地上の大地が広がって行く光景を
楽しむ。上昇しているときに耳の鼓膜に違和感を感じます。
地上の緑や川の流れ,鳥の囁きも今日,此処を飛んだ人しか見れない光景です。高速
エレベータよりも早くそして高く上昇出来る乗り物なのに この静けさは, なんでし
ょう。上空の風は,ほぼ無風,気球のゴンドラ自身も回転しないで殆ど上空で停まっ
たような状態です。何故解るかと思われるでしょうが,太陽の出ている方向が全く変
わらないのです。日差しが,地上にいるときより眩しく思えます。サングラスを掛け
るのは,もったいないのですから持ってきませんでした。
(当然)
ゴンドラ内でのフライトに慣れてくると外ばかりでなくゴンドラの中も気になるもの
です。籐製で出来たゴンドラの中も私の座っている目の前には,高度計なのか気圧計
なのか,アナログとデジタル表示の計測装置が付いています。この装置が妙に気球と
アンバランスです。原始的な乗り物なのにデジタル表示される計器が付いているなん
ておかしいですよね。
それから,上空に上がってみて初めて気が付いたのですが,ゴンドラ内で籐で出来た
壁の部分をジーと見てみると,籐で編み上げれた隙間の部分から外の景色が見えるの
です。最初は,驚きましたが,不思議な光景でした。
高度を上げていても気球は,あまり動かないようです。パイロットのIさんが
『高度を下げてみましょう。』と言われたので気球は,降下を開始。
高いところの景色を目に焼き付けながら見ていました。
それにしても,Iさんは,元気です。
気球を操縦しながらまるでバスガイドのお姉さんのように良く話されます。
身体が気球に乗ると勝手に動いているみたいです。操縦士ながら私のガイドをして,
無線で地上のクルーの人と連絡を取っている。
(もう一つ,携帯電話を持っていたらどうなるのかな。)
(電話が鳴ったら出るのかな。)
気球が降下を始めて数分後,遊水池内,地上ぎりぎりまで高度を下げて地上近辺の水
平飛行が始まる,どこかの旅番組に出てきそうなふんいきです。
なんと例えたらいいでしょうか,湿原の上を列車で走っているような感じでしょうか
。偶に聞こえるバーナーの音,ゴーと言う音だけが何故か滑稽に周りの景色にこだま
して行きます。こんな飛び方も出来るのですね。緑がとても綺麗です,まるで自然の
絨毯の上を飛んでいるようです,鳴り響くのは鳥の囀り,草原の上を無数の蝶が舞っ
ています。地上すれすれの飛行だとスピード感があって又違った景色がたのしめます
ね。
クルーの人達が乗った車から気球の確認が出来ないでしょうから,心配しているでし
ょうね。緑の絨毯飛行も終えて,球皮にバーナーの炎が焚かれました。
気球の高度が上がり始めます。
飛行の航路もほぼ正確に飛んでいるようです。
高度を上がると遊水池内の景色が又,眼下にひろがってきます。
とても静かです。上空にいると下界のざわめきが嘘のように感じますよ。
ほかに飛んでいるバルーンが唯一の仲間のようだ。
パイロットのIさんが一言『風の条件もいいので,行ければ遊水池から出て,利根
川の手前まで飛びましょう。』....
飛行も終盤,最初に予定していた着陸ポイントが近づいてくる。
遊水池内の西のほぼ末端でしょうか。?
地上のほうを見ると,車で先回りしているクルーの人達がもう先回りをしています。
気球の高度を下げて着陸ポイントに接近してゆきます。ほぼ,予定の方向にフライト
しています。パイロットのIさんが,無線で『条件が良いので遊水池を越えて利根
川の手前まで行きます。』と話しています。
土手で待ちかまえている,クルーの人達に接近。
Iさんが気球の上から利根川の方向を指さし,『利根川に行くぞー,廻りこんで』
と叫ぶ。地上で待っていた人は,慌てたでしょうね。着陸する地点で待機していたの
に肩すかしを食らったのだから。
この時は,風も緩やかで,ゆっくりと遊水池内を出ます。
ゴンドラの中でお腹が鳴り出す,オナラじゃないよ。
緊張感がなくなってリラックスしたのでしょうか,
『お腹が空いたな。』と話すと
Iさんは『すっかり,最初の緊張感から解放されて気球に慣れたからだよ,』と話
してくれました。
此処からの景色は,今までとは違って普通の街並みが眼下に広がってきます。上から
見ると地面の隆起が良く解ります。自然が先輩なのに道路を作って建物を建てて当た
り前のように生活出来るのも此の大地があってこそですからね。眼下に広がる住宅や
道路,車や電車を見ているとまるで模型の世界を見ているようですよ。ただ,住宅地
の窓が開いていて中の人が見えた時はビックリします。別に覗いているわけではない
ですよ,あしからず。
住宅地の真上をフライトしていると犬の鳴き声が聞こえます。
気球を見て吠えているのではなくて,バーナーを噴射するときに発生する音に反応す
るみたいです。動物は,バーナーの音が嫌いなようです。
でも,此の高度で聞こえるとは,犬の聴力って人間の何倍なのでしょうか。
また,Iさんのガイドが始まります。
『渡良瀬遊水池の周辺の住民の人達は,気球を見慣れている人達なので気球が飛んで
いると,あの気球で飛んでいる人は,上手いとか,下手だとか,みんな評論家みたい
なことを言われます。』結構厳しいですよ。
上空から見ていると道路の車の流れる状況も手に取るように解ります。クルー達の乗
った車も判別がつきます。クルー達の車を空いている方向に誘導しようとIさんが
無線で指示を出します。直接道路を見て誘導できるのだからカーナビより精確でしょ
うか。
東洋大学の校舎,JRの駅,上から見ると立体状になった公園を通過すると,利根川
が見えてきました。利根川の一つ手前の土手でランディングを試みるようです。
最後に景色を眼下に焼き付けながら高度を下げて行きます。地面が近づくにつれて段
々スピード感が出てきます。此処からが最後の難関です。ボランティアの岡君に話し
て早めにカメラを締まって貰います。続いてかぶっていたヘルメットの首紐をもう一
度絞め直して貰い準備万端。
後は,運を天に任せましょう。
利根川の手前の土手が見えてきました。緊張感が再び高まります。
土手の上にクルーが二人既に待ちかまえているのが解りました。早いな,もう既に先
回りしています。気球のスピードが速い。降下した勢いもあるのでしょうが,それと
も風速が強まったのが,地面を見ていると良く解ります。
『この先に見える,土手に当てます。』とIさんに言われて,身構える。
此の方向だと身体の右側のほうにぶつかるかな。
歯を食いしばって首に力を入れて,腹筋にも力を込める。
最初の衝撃だけ何とか和らげられれば大丈夫であろう。と言う思いだけでした。
ウーン,感動のランデング,万歳,....
次の瞬間,土手の上で待ちかまえていたクルーの人達が何か叫んでいる。
『牛とか牛舎とか,』叫んでいるようです。
土手の横を見ると牛と牛舎。
Iさんが『牛舎か。』と言った瞬間,バーナーの炎が焚かれて気球が上昇,思わず
土手にぶつけると思っていたので一瞬,力が抜けてしまいました。
土手の真上を通過するときに他のクルーの人達が慌てて走ってくるのが見えます。
とにかく,一つの障害物を避けて着陸態勢にはいります。
Iさんが,気球のバルーンの天辺に繋がっているロープを引いてバルーンの空気を
抜きます。
(リップ,と言うらしくてこれを開くと気球の空気が急激に抜けます。)
気球は,急降下で土手の斜面を下って行きます。
Iさんが,冷静な口調で,『杭とロープに当たります・。』
ドス,と鈍い音がゴンドラに響いてきました。
(杭とロープが,ぶつかった後,舞い上がるのがみえます。)
続いて砂利道の路肩に当たります。と言った瞬間,ドカンと,ゴンドラの床に衝撃が
走りました。首や上半身は平気だったのですが,足首にベルトを装着していなかった
ために右足が衝撃で車椅子のパイプにぶつかる。車椅子のパイプと足の間隔が離れて
いないのに結構強くぶつかりました。まるで何かで叩かれたみたいです。
(痛い。)
砂利道の路肩にぶつかった勢いでゴンドラが右に傾きます。
休む間もなく気球は, 雑木林の中につ込んで行きます。1m 2,30cm位の林をなぎ倒す
ように着地して停まりました。ゴンドラの横転は免れましたが,未だ,横に傾いてい
て不安定です。
着地して停まった後も車椅子のパイプが震えているのが解りました。
(二度目の衝撃のせいでしょう。)
着地して数秒後,雑木林の中にクルーの人が飛び込んできました。
速い,これには,感動,まるでレンジャー部隊のようです。
Iさん『ゴンドラを押さえて』と叫ぶとクルーの人がゴンドラに飛びつくように押
さえてくれました。
ランディングも大成功です。
初回でこれだけフライトが出来たのは幸運でした。
緊張感と足の痛いのと脱力感で何とも複雑な状態でしたが,一年以上に及ぶ準備の成
果が実ったと思っています。
クルーの人達は,気球の球皮とゴンドラの回収が在るので私もゴンドラ内から出るこ
とにしました。
ボランティアの岡君にヘルメットと首に装着した頚椎カラーを外して貰います。以外
と汗をかいていたようで風が顔に当たると気持ちがいいです。
ゴンドラの左横を見ると気球が着陸して林をなぎ倒した後がくっきりと残っています
。まるでコンクリートのローラーで踏み固めたみたいです。
この先は,直ぐ利根川の様に見えたので,あと何メートルで川ですか。と廻りの人に
尋ねてみると『あと,10メートル位ですかね。』と言う返事が返ってきました。やっ
ぱり,此処で着地するしか無かったようですね。
此処で,最後の記念写真を一枚,パイロットのIさんと私のヘルメットを被った岡
君が満面の笑みでブイサイン,真ん中には,ぐったりした私。
終わった。風が心地いい。
回顧録は,後にして,私は,ゴンドラから下りる事にします。クルーの人達は球皮と
ゴンドラの回収作業に入ります。
手動車椅子と身体を固定しているベルト類を取り外して,ボランティアの田中さんに
抱えられて雑木林を歩いて行きます。雑木林の外に連れ出して貰ったはいいものの椅
子がない事に気が付く。慌てて他の方が,車に積んでいるデェレクターチェアーを運
んできてくれたので座りこみます。
この時は,なにも考えられず,ただ安堵感が身体を伝わって行くだけでした。気球が
,飛んできた方向を眺めます。数分前に上空にいたのが嘘のような感じ,随分遠くま
で飛んできたものです。
手足のカバーを田中さんに外してもらって,搭乗のために着込んでいた緑色のジャン
バーを脱がせて貰い,やっと身軽に成りました。
車から電動車椅子を出して貰い,乗り移ります。
やっぱり,自分の車椅子は,いいですね。
やっと廻りを見渡せるようになったので,着地の時にぶつかった砂利道の所にいって
道路を見てみると,くっきりと道路が抉れていました。最初に着地する予定だった土
手のほうを見ると,かなりの距離を飛んでいます。クルーの人は,ビックリしたでし
ょうね。お疲れさまでした。
球皮の回収も雑木林の上なのでやりずらそうです。
今度は,もっといいところに着地したいですね。
雑木林の中で畳まれた球皮が袋詰めにされたようです。
此処でトラブル発生。
クルーの一人の林田さんが,携帯電話を雑木林の中で落としてしまったようです。
直ぐに他のクルーの人が携帯電話で林田さんの電話に掛けてみると確かに此の周辺で
携帯が成ります。どうも,怪しいのは,回収して畳み終えた,球皮の中です。
球皮の中をゴソゴソと探してみると電話が出てきました。雑木林でなくてよかったで
すね。
気球の回収作業も車の中に機材を積み終えて終了。皆さん御苦労様でした。
パイロットを勤めてくれたIさんとは,この場でお別れです。
Iさんは,次のフライト予定の場所に向かいました。
本当に乗せてくれて有り難う。感謝,感謝です。
気球の回顧録は最後のほうに書きます。
飛ばさないでね。

無事,気球搭乗に成功して機材の後かたづけも終わったので,又,最初の集合場所で
ある藤岡公園駐車場に車で向かうことにします。お昼は,そこで皆さんと一緒に打ち
上げのバーベキューです。
時間を見ると未だ午前8時頃, 昼食には,まだ早いのでとにかくコンビニでも行って
お腹に何か詰め込んでおこうと思います。
帰りの道のりは,遊水池内の砂利道を通らないで外周道路を走ります。普通の舗装さ
れた路面の有り難いことといったらないですね。何て楽なんでしょう。
車中は緊張感もほぐれて和やかムードです。
数分後,藤岡運動公園駐車場近くのコンビニに到着,軽くお腹に詰め込んでおきたか
ったので,パンと飲み物を購入して打ち上げ場所の駐車場に戻ります。
今日の午後は,雨の予報なのに上空は,全くもってピーカンです。
日差しが暑そうなので駐車場内の木陰に車を駐車して貰いました。
木陰は,とても気持ちが良くて眠気を誘います。偶には,こういった広い場所で気球
やパラグライダーを見て過ごすのもいいでしょうね。
飲み物が美味しい,緊張がほぐれて喉がからからだったようです。
鳥の囀りが妙に耳に気持ちよく響きます。
駐車場内の土手側のほうを見ると駐車場と土手の間のスペースに黄緑色のテントが建
っています。ボランティアの田中さんが,同僚の渋谷さんに頼んで自宅から運んでく
れたバーベキューセットの一部でしょう。面白そうなので私もお陰を出てバーベキュ
ーセットの準備をしているテントのほうに向かいます。
uh−,日差しが暑い。
テントのほうに行こうとして近づくとテントの手前に30センチ位の溝が掘って在りま
す。溝は,永遠と土手に沿って続いています。渡れそうな所は,何処にも在りません
。責めて数カ所,鉄板でも引いて合ったらな。
(此処は,バリアフリーでは,無いようです。)
電動車椅子の重量を考えると,手動車椅子に乗り換えて,車椅子ごと移動したほうが
いいと思って,『手動車椅子を出して下さい。』と伝えると。
面倒だから石沢君を先に移動させて電動車椅子を担いで運んじゃおうよ。ですって。
『エー,電動車椅子,私が乗らなくても70キロですよ。』
皆さん歳を考えないで無茶を言います。
とにかくお任せしましょう。
田中さんに抱えられて私がまずテントのほうに移動,この時,左腕がのびていて足の
間に挟まってしまったので肘の関節が伸びて痛い。
『田中さん,きまってる,きまってる。十字固めを掛けているヒクソン・グレーシー
じゃないんだよ。』....これも修行か。
電動車椅子も無事に溝の上を空中移動に成功。皆さん,御苦労様でした。
もう一度,車椅子に乗せて貰い,やっと本当に車椅子の人です。
黄緑色のテントが緑の芝生にはえて鮮やかです。
周りを見ると, 眼の前に駐車場,テントの後ろは,3段になっている土手です,土手
のほうを見ていると思わず『登りたいな。』と言う衝動に駆られます。
田中さんの車から次々とバーベキューの道具がが運び出されてきます。テーブルに椅
子,食材を焼くためのコンロ,ポリタンクに積まれた水道水に調理用具。まるでドラ
エもんのポケットの様に次から次ぎえと出てきます。残ったものは,飲み物と食材で
す。どうも,この近辺のお店は,10時にならないと開店,しないようで,取りあえず
飲み物だけ買ってきて貰うことにしました。勿論,私は,烏竜茶ですよ。
飲み物を買い出しに行っている間に,私と他のクルーの人数がお留守番です。
バーベキュー用に建てたテントの横にビニールシートが弾いてあるのですが,此処で
寝てる人が一人,”かつら”さんと言う方の様ですが,炎天下で帽子を被ってよく寝
ています。本人曰く『眠いから』ですって....
気球に乗る人って変わっているのかマイペースなのか。よく寝ています。
起きたと思ってテントの中の椅子に座ったとおもった矢先にもう寝ています。
(これは,大物かもしれない。)
車が戻ってきました,山のような飲み物,殆どビール。
田中さんが一番嬉しそうです。
取りあえず,買ってきてくれた飲み物を紙コップに注いで乾杯をする事にします。
では,気球搭乗の成功を祝って乾杯。
うーん,美味しい。
朝が早かった事もあって格別です。
ここから,お店が開店する時間までしばらくの間,皆さんと談笑。
それにしても,いい天気です。明日も又,気球に乗れそうな感じ。
上空では,他のエアロスポーツを楽しむ人達で彩られています。
やっと,10時に時間が近づこうとしています。
私と岡君,かつらさん,渋谷さんを残して,他の人達は,買い出しに出かけました。
皆さんが,買い出しに行っている間に渋谷さんが,コンロに入れる炭をおこしてくれ
ています。かつらさんは,椅子で寝ています。
さっきから,気になるのがテントの後ろ側にある3段になっている土手です。
(登りたい)
あとでチャレンジだ。其処に土手があるからではなくて,ただの子供のような心境
です。私の住んでいる東京の実家の直ぐ近くには荒川の土手が流れていて子供
の頃は,よく,荒川の土手を滑り台にして遊んでいました。その頃は,段ボールの箱
がスキーの板がわりっでしたね。何度か滑っていると,段ボールの表面がつるつるに
なってとてもスピードが出るようになったのをよく憶えています。単純なことでも我
を忘れて夕方まで遊べたのも子供だったのかな....
食材に行った人達の車が駐車場に帰ってきました。
山のような食材を抱えて帰ってきました。ダイエット何て関係ないみたいです。
此処からは,もうお任せ状態です。私は,出された物を食べるのみです。
焼かれたレバーから始まって殆ど口の周りは油だらけ,ちょっとオーバーペース気味
なのでこっそりテントを抜け出して土手のほうに向かいます。みんな食べるのに夢中
で気が付きません。さっそく,土手登りに挑戦,凸凹をよく見て一回目のアタック,
坂道の途中まで上れたが,後輪が芝生でかなりスリップする。数日前からの雨の影響
なのか一度でもタイヤが滑るとリカバリーが聞きません。気分は,殆ど山を見る登山
家です。再度,土手の周りのルートを見極めてから自信を持って二回目のアタック慣
行,今度は,かなり地面の状態が良くて綺麗に登って行きました。土手の一段目を登
り切る手前でスピードを少し緩める余裕がありました。
堂だと思ってテントのほうに振り向いて見てみると『シーン,誰も気が付いてくれな
い。』
・あっ,そうですか,気が付くまで此処に居てやる。
数分後,やっと思いが通じたのかテントに居る人達が気が付いてくれた。
思わず『写真を撮って』と一言告げると遠くのほうからストロボがたかれる。
テントから岡君が小走りでこちらに向かってくる,走り方は,いつものようにサッカ
ー選手がディフェンダーにフェイントをかけるような飛び跳ねる様な走りだ。私が,
『上に登りたいな。』と言うと車椅子を後ろから押してくれました。補助エンジンが
付いて今度は楽々,土手の頂上に上がれましたよ。
未だに空は,フライヤー達が色とりどりの機体で飛び交っています。これくらいの高
さの所でも気持ちがいいくらいだから,空を飛ぶことも昔から人間が持っている本能
なのかもしれませんね。もう一度,渡良瀬の景色を目に焼き付けて,テントのほうに
戻ります。
テントに戻って雑談していると駐車場に HONDA 車が一台, 私達のテントの側に停車
しました。車から出てきたのは,サファリーキャップをかぶった,由利???風の中
年男性,どうも,田中さんと渋谷さんと同じ会社の方のようです。
この中年男性,田中さん達と立ち話した後,おもむろに車に戻ってカメラ機材を出し
てきました。妙に頑丈そうな三脚をセットした後,ジュラルミンケースから取り出し
たのが白い巨大なレンズ
(ロケットランチャかな,)
私達を見つけたのも此のレンズを覗いて写真を撮っているときに見つけたようです。
悪いこと出来ないね。
ちなみに田中さんが此のレンズを装着したカメラのファインダを覗かせて貰うと本当
に数百メートル先の人物の顔が識別出来るようです,一人覗くとみんな見たがるもん
です,次々にファインダを覗いては大騒ぎ....
おちは,最後にファインダを覗いた押田さんが,はしゃぎ過ぎてシャッターをパシャ
リ(ご愛敬,ご愛敬。)
持ち主の顔は,見ませんでした。
御迷惑お掛けしました。

今日のフライトについて皆さんが話し出す。主に着地についてですが,最初に着陸を
予定していた遊水池内で下りればもっと安全に着地出来た。風も緩やかだったしクル
ーも先回りして待機していた。パイロットが,もし押田さんだったら下りていたでし
ょうね。
渡良瀬を飛び越えて利根川に向かったのも『行けるという。』判断をくだした,パイ
ロットIさんの経験による判断なので間違いは,無いと思いますが,地上で待機し
ているクルーは,冷や冷やだったようです。Iさんのサービス精神が旺盛なのは,
良く解りましたが,とにかく渡良瀬を知りつくしています。最後の着地の時の牛舎を
回避してからの流れもIさんの口調を良く憶えています。
(結構冷静でした。)

今回集まってくれた皆さん,個性的な方ばかりです。
本当に気球と言う共通項がない限り出会わなかったでしょうね。その人達の共通して
出る言葉が『気球には,絶対の安全という言葉は,無い。』と言うことでした。
今思うと多少,冷や冷やした着地で帰って良かったのかもしれません。緊張感の中で
も楽しめるか,どうかです。
最後に皆さんと記念写真を撮る。
はいチーズ.... カシャ。
疲れては,いるけれどみんないい笑顔でした。
打ち上げの後かたづけの時,押田さんがテントの横に座り込んでいる。
思わず近づいていって声を掛ける。
『次回は,押田さんと乗ろう。』と思わず言ってしまいました。
又,乗りたいです,乗せて下さい。
全ての皆さんに感謝して解散です。
ありがとう。

<<フライトレポート兼会計レポート>> 押田氏
1.日時:2000年6月3日(土)
2.フライトエリア:渡良瀬
3.気象条件(天候:晴れ 風速:2m 気温:25℃ 湿度:80%)
4.機体情報(気球名:ブルーエンジェル 登録番号:JA-A-556 クラス:AX-7
              サイズ:2,160立米 重量:463lbs)
5.飛行目的(自由/競技/訓練)自由飛行
6.離着陸(離着陸 時刻 グリッド 地名 総飛行時間)
離陸:06:09 帯刀グラウンド脇
最終:06:59 利根川
総飛行時間:90分
7.飛行内容(最高高度:1000ft 最高移動速度:20Km/h
              最高上昇下降速度:3knot 消費燃料:30Kg)
8.参加者と役割(P1 P2 Pu/t:A,B,I,S,C Pass)および会計
(役割 氏名 時間 単価 金額)

P1  (離陸−最終)I氏 50分  200円/分 10,000円

Pass(離陸−最終)石沢 50分  200円/分 10,000円
Pass(離陸−最終)岡   50分  200円/分 10,000円

(清算は石沢氏一括負担)
Chase1(通常追跡車両) 押田,佐久間
Chase2(先行追跡車両)林田,遠藤
Chase3(救護・車椅子回収車両) 田中,吉仲,渋谷

9.その他(申し送り事項,支払発生など)
・開口部,ディッパー,パラシュートベルクロとも修理状況正常。
・ボンベ 2 本は塚原で充填済み。
・ワイヤーはスカートがなくなったため,丸めてディッパーで包んでいます。絡み,
 キンクに注意。
・バーベキュー当日参加千円,前回お礼受領者3千円(実費1万5千円)。
・林田さんが,'95にたまたま撮ったという BA(スカートがきれいなとき) の写真
の焼きましをいっぱいくれました。ありがとうございます。

10.フライト詳細
4:30運動公園駐車場に集合。最終的に5時頃全員がそろう。風船で風向風速を見る。
230〜240,風速は地上風なく,上空で1〜2m位のように見える。風がないため万が一
に備えてドロップラインをT&Jから借りる。帯刀に移動しセッティング。バスケット
にチークオイルを塗ったためシリンダーベルトも全部付け直し,ディッパー装着,パ
ラシュート確認など時間がかかる。ようやく立ち上げ,石沢さんと岡さんを搭乗させ
てテイクオフ。予定通りセンターに向かってアプローチするがセンターまでは南に稼
げず,遊水池の北をかすめて渡良瀬の外へ。
以外に風が出てきていて,結構いい感じで利根川に向かっていく。先行チェイスが先
回りしていて,通常追跡車両もランディング前に到着するが,土手の手前の牛舎を避
けて土手を越えたのと,以外にサーフェスが結構有り早かったので十分にバスケット
を支えられずバスケットをやっと捕まえているがどんどん移動する。道路の縁にぶつ
けて止まり,衝撃は強そうだったが何とか石沢さんに怪我はなかった。
回収後,運動公園で約束どおりバーベキューで祝杯をあげた。これで,いつでも今日
の体制が取れれば十分フライトが可能なことが実証されたと思うが,石沢さんの費用
負担を考えるともう少し何とかならないのかとも思う。とにかく無事に終わってよ
かったと思います。今回お手伝いいただいた皆さんありがとうございました。それ
と,いままでかかわっていただいた方々にも感謝したいと思います。あとは,石沢さ
んが感想をくれると思います。


  回想録

空の上に自分の身を置いてみる。気球に乗っている人は,いつも,色々な思いをゴン
ドラに乗せているんでしょうね。でも,一度乗ってみないと解りませんよね,
みんな,危険と言っても楽しいから飛びたいに決まっている。
自分は,なにを乗せたかったのだろうか。?
広大な空,隆起している大地,地上とは少し違った感じで差し込む太陽,綺麗ですよ
ね。此処に住んでるのですよね。
自分の中で革命が起こったとと言うほどの変化はありませんが自分の中の気持ちの許
容量とでもいいましょうか,少し広くなったように感じます。
此の広くなった領域を生かすも殺すも自分次第です。
今回のフライトの成功も押田さんをはじめ,沢山の方々に出会えた賜だと思っていま
す。
今回,ご協力頂いた全ての方に感謝の言葉を申し上げます。
渡良瀬の空にも感謝です。


着地の時,右足を車椅子にぶつけたのも自然からの教訓かも知れません。
『このまま楽に着地させないで脅かしてやろうか』と自然から言われたように思って
います。

長文を読んで下さって有り難う御座います。
誤字脱字,許してね。



                              石沢 雄二

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