阿修羅城の瞳〜BLOOD GETS IN YOUR EYES
Inouekabuki-Shouchiku-mix
(劇団☆新感線 大阪公演 :大阪松竹座 8.3〜12、東京公演:新橋演舞場 8.17〜27)
病葉出門(わくらばいずも): 市川染五郎
闇のつばき: 富田靖子
安倍邪空(あべのじゃくう): 古田新太
望月高弥郎(もちづきこうやろう)/祓刀斎(ばっとうさい):
渡辺いっけい
桜姫: 森奈 みはる
安倍海王(あべのかいおう): 橋本じゅん
安倍龍神(あべのたつがみ) :粟根まこと
安倍獅子虎(あべのししとら) :インディ高橋
孫太郎 :河野まさと
賀茂白丞(かものはくじょう): 吉田メタル
賀茂南雀(かものなんじゃく) :磯野慎吾
笑死(えみし) :新谷真弓
流しの滝次: Taki
赤鷲鬼(せきしゅうき): 川原正嗣
白豹鬼(はくひょうき) :前田悟
黄熊鬼(こうゆうき): 大林勝
火縁(ひえん) :村木よし子
水誼(みなぎ) :山本カナコ
樹真(じゅま) :杉本恵美
谷地(やち) :中谷さとみ
呼鉄(こてつ) :村木仁
鬼の一党/南北の弟子たち/鬼御門の部下/江戸市民/
:船橋裕司 武田浩二 佐治康志 藤家剛 フランキー仲村 松本高弥
鬼の一党/女たち/南北の弟子たち/女官たち/江戸市民/
: 北原美智子 篠田紀子 下田智美 白倉由美子 仲里安也美 中間千草
四世鶴屋南北: 加納幸和
美惨(びさん) :江波杏子
十三代目安倍晴明/十三代目安倍晴明もどき:
平田満
あらすじ:
時に文化文政、巨大都市江戸。
一見平和に見えるその裏で、人と鬼との激しい戦いが繰り広げられていた。
江戸の闇から魔を祓うために組織された特務機関
「鬼御門(おにみかど)」
その一員でありながらさらなる力を求め、鬼についた安倍邪空は師匠である鬼御門の棟梁・十三代目安倍晴明を奸計にはめて葬った。
邪空の兄弟弟子、病葉出門はかつて「鬼殺し」
と怖れられた腕利きだったが、五年前のあるできごとをきっかけに鬼御門を去り、今は鶴屋南北一座に弟子入りしていた。
しかし、晴明殺しの疑いをかけられ鬼御門に追われる謎の女・つばきに一目ぼれしてしまったことから、ふたたび鬼との戦いに関わっていくことになる。
感想:
13年ぶりの再演、ということでかなり期待していたのですが実に期待通り!
「新橋演舞場」をすべて使いつくすぞ!といわんばかりの演出にひたすら圧倒され、6:30開演で終演10:30(休憩30分)という長さもちっとも気にならなかったです。
ただ、市川染五郎さんの声が枯れていたのと、富田靖子さんが江波杏子さんに迫力負けしてたのがちょっと気になったところ。
つばき(人間)の状態で美惨(鬼)と並んでいるときは圧倒されていて当然なのだけれど、つばきが鬼の王・阿修羅として転生した後もやはり江波さんにパワー負けしてて。人間のときと鬼の王のときとトーンが変らなかったんですよね…
出門に恋をしたことによる心のゆらぎが阿修羅転生のひきがねとなってしまった悲しみ。そして恋した相手が強ければ強いほど、転生した阿修羅の力も強大になる、というわりに、そのパワーがあまり感じられなかった。
がんばっているんだけれど、もっとがんばって!という感じでした。
恋を知った「女」が「鬼」に転生するとするならば…もっと恐くてもよろしかったのでは?
でも阿修羅城天守閣での出門との対決シーンの最後のセリフ「おまえの血、おいしゅうございました!」ここはすごかったです。
最後で決めてくれた!!!という感じでした。
悪と化した女を男が追っていく、という後半のストーリー展開で、昨年の「Lost
Seven」を連想してしまいましたが^^;
ラストシーンは、阿修羅=つばきはふたたび転生して「童」となった、のかと思ったのですが(阿修羅は童・女・鬼の三位一体)
出門が抱き上げたおくるみの中身は花びらになってしまって、桜の木の上のつばき(の幻?)はしっかりと赤子を抱いている…
このシーンは
*つばきの肩にあった痣のかたちとは「永遠の孤独」を示す梵字だった
*師・晴明が鬼御門に仕掛けた「壷毒」 (入れ物に虫を入れて共食いをさせ、一番強い一匹を残す)によって、残ったのは出門
壷毒=孤独、という呪いを受け継いでしまったという意味なのかな?と。
邪空を殺し、一人生き残ったという「呪い」を背負ってこれから生きていかなくてはならないであろう出門の人生を表しているんでしょうか。
お気に入りは出門と邪空・鬼たちとの対決シーンでの
邪空「己を信じず何を信じる!?」
出門「愛だ!」
"お前なに言ってんだよ""やってらんね〜よ"とばかりに刀を投げ出す鬼たち、というのがすごく笑えました。
このシーン、表情が見えたらもっとおもしろかったんだろうな…。発売開始5分で取れた席が2階席って(T-T)
鬼の童、笑死役の新谷真弓さんはとにかく可愛いかったです。
日替わりものまねネタをされていたらしいのに、古田さんのツッコミ込みで全然聞こえなかったのが残念…
森奈みはるさんは「桜姫ワルツ」の宝塚風の歌いっぷりが良かったです。
それにしても、「愛は鉄砲、数うちゃ当たる♪」(「愛は鉄砲」)って^_^;
すごい歌詞です。
踊りながら弾をよける鬼たちもナイスでした。でも結局一発も当ってなかったような?(笑)
自分で婚約者の賀茂兄弟を撃っておいて「まあひどい、誰が一体!?」って…"おまえや〜!!!"という会場からの無言のツッコミを感じつつ。
こういうことしそうな人だ、と人に言われたことを思い出しましたよ。
「鬼に魂売ってでも、よい脚本を書きたい」戯曲作家・鶴屋南北役の加納さんの女形演技も良かったし、邪空役の古田さんは決めてくれたし、祓刀斎役の渡辺いっけいさんはおいしいところ総どりでした。
「歌舞伎」というより、「かぶく」という言葉が似合う芝居でした。