カノン

NODA・MAP第8回公演  芥川龍之介「偸盗」をベースにした野田風時代劇
(NODA・MAP '00.4.1〜5.14 シアターコクーン)

太郎: 唐沢寿明
沙金: 鈴木京香
天麩羅判官: 野田秀樹
次郎: 岡田義徳
猫: 須藤理彩
刀野平六: 手塚とおる
猪熊の婆: 広岡由里子

海老の助: 大森博

十郎坊主: 宮迫博之(雨上がり決死隊)
侍・烏賊蔵 他: 小林正寛
蛸吉・穴子郎 他: 春海四方
侍・八海山: 蛍原徹(雨上がり決死隊)
女・お通し 他: 瀧山雪絵
女・保険のおばさん: 杉本恵美
女・保険のおばさん: 保坂エマ

猪熊の爺: 串田和美

あらすじ:
天麩羅判官邸の牢番・太郎は盗賊・沙金の色仕掛けに惑い、彼女の脱走の手助けをしてしまう。
そのため太郎は牢に入れられるが、しかしその愚直さを買われて判官から盗賊一味のスパイを命じられる。
太郎は判官からの任務と沙金への恋心に迷うが、盗賊たちを信用させる為とうとう自らも盗みを働き、盗賊団の一員となる。
やがて太郎の弟・次郎も盗賊の仲間に加わることになるが、太郎と次郎の間で沙金をめぐる争いが起こり…

感想:
前作「パンドラの鐘」に比べると、大きなテーマというものがちょっと見えにくかったと感じてしまいました。
野田氏の原風景として物語に織り込まれていた「浅間山荘事件」も生後半年だったものでまるっきり記憶にはないし…
(ちなみに今回一緒にいった友人K嬢は事件開始日の「72年2月19日」生まれ)
うーん…野田芝居を良く理解するにはやっぱり2回は見たいものです。(でも今回もチケットとるのに先行予約で5時間かかった(>_<))

ドラクロアの絵「民衆を導く自由の女神」の右手に握られている銃。そして自由、Free。
といったような野田秀樹お得意の言葉遊びも今回たくさん織り込まれてました。
このへんは毎回楽しみな部分です。
(余談ですが、パンフレットでの対談で出ていた「覆水と親不孝者は盆にはかえらない」っていうセリフが何の芝居のだったのか気になる…)

役者さんではまず一番はヒロイン・沙金役の鈴木京香さん。
常に良心の呵責に苦しむ太郎と対照的な、奔放な悪女を演じきってました。
とにかく美しく、激しいヒロイン。でも下品にはならない。
お嬢路線の方かと思っていましたが、こういう役もはまってました。
前作「パンドラの鐘」の天海祐希さんといい、印象的なヒロインが続きました。
そして初舞台ということで実はまったく期待していなかった(失礼)須藤理彩さん。
語り部的な「猫」という役は難役だったせいか、ややつらそうな部分はありましたが、声がすごくきれいで良く通ってなかなかでした。
今後が楽しみです。
野田氏の演技は今回もテンション上がりっぱなし。
「酒を呑んでさえいれば」とても良い人・天婦羅判官の酔っているときと素面のときの二面性の演じ分けはさすがでした。
(これも「パンドラ」の松尾スズキさんを連想してしまうのですが)大森博さんとの掛け合いも「丁々発止」という感じ。
どうしてあれだけ動き回って息が上がらないんでしょう。不思議な方です。

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