コーラスライン

無名ダンサー達の日常や人生に潜むドラマを描いた異色ミュージカル

(劇団四季 '99.11.6〜3.20 四季劇場・秋)

'99.3.5 マチネ公演キャスト:
ザック: 飯野おさみ   ラリー: 山崎義也
ダン: 松澤潤一   マギー: 井田安寿   マイク: 田邊真也  コニー: 鈴木由佳乃  
グレッグ: 吉田潔  キャシー: 村下友美   シーラ: 森以鶴美  ボビー: 海将人 
ビビ: 工藤のぶ子  ジュディー: 渓なつき  リチー: 羽根渕章洋   アル: 渋谷智也
クリスティン: 望月由弥   ヴァル: 家本朋子   マーク: 古谷直通
ポール: 味方隆司   ディアナ: 坂本里咲
フランク: 玉城任   ロイ: 古田一哉   トム: 島田邦人   ブッチ: 池田勝頼
ビッキー: 林梨恵子   ロイス: 種市万里子   トリシア: 岡田真千代

あらすじ:
ブロードウェイのとある劇場で、新作ミュージカルのコーラスライン(主役の後ろで歌い踊るダンサー)のオーディションが行われている。
17人が残った最終選考、その中から選ばれるのは男女4人ずつ。
演出家のザックは彼らに「君たちのありのままの言葉を聞かせてくれ」と言う。
意外な課題に戸惑いながらも、一人ずつ自分について―ダンスをはじめたきっかけ、両親に愛されなかった子供時代、容姿へのコンプレックス、挫折…を語り始め、彼らの今までの人生が浮き彫りにされていく。
そして、最後に選ばれるのは―?

感想:
舞台装置はステージ上に引かれた一本の白い線と鏡だけ、衣装は稽古着とシンプルな構成ながら内容が好きな公演。
‘91年2月に見ていて、今回で2度目です。
2列目のほぼ真ん中とたいへん良い席でした(^。^)

最初のナンバー「How Can I Get It」。
幕が開いて、オーディションがすでに始まっている。
ザックとラリーが振り付けをし、ダンサーそれぞれが舞台奥の鏡に向かって練習をしている。
ザックの「それでは鏡の反対を向いて最初から…5・6・7・8」のカウントのあと、26人全員が初めて客席を向いて踊りだす…ここが「ぞおっ」とするくらいの迫力。全員の気迫がすごくて、このシーンは以前見たときも強烈に印象に残ってます。

「At the Ballet」のバレエ3人組(シーラ、ビビ、マギー)ではマギーののびのびしたソプラノの歌声が群をぬいて良かったです。

気になったのは今回のキャシー。
ソロナンバー「The Music and The Mirror」のサビ部分、無理して声を出してますというように聞こえて、またそこが「清水ミチコさんの “ユーミンのものまね”」になってしまっていて(声質がじゃなく)歌い方をもうちょっとどうにかできないかな〜?と…
ダンスがうまいだけに残念。

一番好きなナンバーは「愛した日々に悔いはない(What I Did for Love)」
傷めていたひざが悪化してしまった一人がオーディションの途中で退出したあと、ザックは残りに
「もし君たちが踊れなくなったとしたら、どうする?」
と残酷な問いかけをする。
不謹慎だと怒るメンバーに「本気で答えろ」と言うザック。
それぞれの想いを語り合う中、その問いに対する最終的な答えがディアナがリードするこのナンバー。
「♪悔やまない 選んだ道が どんなに辛く この日々が 報われず 過ぎ去ろうと…すべてを捨てて生きた日々に悔いはない」
やっぱり努力は報われたいと思うのが普通…でも、それでも、結果がどうであれやるだけのことはやったのだから、という彼らの強さ。
「コーラスライン」という物語自体もそうですがこの歌は見る人それぞれの目標、人生にもあてはめられる歌です。

フィナーレが「ONE」(某ビールのCMでおなじみになりました)
ステージ衣装を着けて全員で踊る、ミュージカルらしい華やかなナンバーです。

9年ぶりに見て、まだ学生だった当時と、社会人になった今とでは見方・感じ方が違っていて、年齢が上の方のキャラクターに年が近くなった分、身につまされるものがありました。
やりたいことをやって生きていくことの幸せ、苦労、迷い。
前回まったく眼中になかったシーラに共感してしまった部分が、彼女の「**歳までには端役を抜け出そう」という目標年齢が徐々に上がり、もうすぐ30歳という現時点でまだコーラスラインのオーディションを受けにきているという現実。焦り。
でも「もうすぐ30」って、まだまだだよ!と応援したくなってしまいました。(彼女のあの最後の表情がなんとも言えず複雑…)

「コーラスライン」は何かに迷っているとき、選択をせまられているときに見ると、すごく「痛い」物語だと思います。
テーマである「ひとりひとりが、特別な人」というのは厳しくもあり、優しくもある言葉です。
人生において誰もが成功者にはなれない。ただ「生きている」だけでは輝けない。
だけどそれぞれが今自分に与えられている、やるべきこと・やりたいことを一生懸命やっている姿は輝いているはず、そう解釈しています。
ただこの作品「もう十分満たされてる」と思ってる方には、派手な作品じゃないぶんつまらないのかも。
(最前列のおばさま方は途中で飽きたのかお菓子食べ出してた…^_^;)
お子様向きではないし、下ネタばんばん出てくるし(笑)
派手な舞台装置や衣装が売りの作品ではないけれど、また見たい作品です。


参考までに前回見たときのキャスト

'91.2.27公演キャスト
ザック: 浜畑賢吉   ラリー: 重野幸夫
ダン: 菊地正    マギー: 三浦雅美    マイク: 加藤敬二   コニー: 青山弥生 
グレッグ: 内田典英   キャシー:桑原美樹    シーラ: 柴垣裕子  ボビー: 荒川務 
ビビ: 磯津ひろみ  ジュディー: 村下友美  リチー: 羽根渕章洋   アル: 深見正博
クリスティン: 坂本里咲   ヴァル: 山崎佳美   マーク: 遊佐真一
ポール: 味方隆司   ディアナ: 山田千春
フランク: 松浦勇治   ロイ: 澤村朋仁   トム: 栗原義美   ブッチ: 中尾弘隆
ビッキー:  ?  ロイス: 松原美智子   トリシア: 山田園

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