煙が目にしみる
(鈴置洋孝プロデュース '00.8.24〜27 紀伊國屋サザンシアター)
北見栄治:内海賢二
野々村桂:麻生美代子
野々村礼子:駒塚由衣
原田泉:定岡小百合
妹尾あずさ:渡辺美佐
江沢務:田中完
乾幸恵:山路清子
牧慎一郎:嵯峨周平
原田正和:和田太美夫
野々村亮太:中野順一朗
野々村早紀:保坂エマ
野々村浩介:鈴置洋孝
あらすじ:
桜が満開の春、とある田舎町の斎場。
誰もいない待合室に白装束を着た二人の男、北見栄治と野々村浩介が座っていた。
彼らはこれから火葬にされる幽霊達だが、ボケ始めてきた浩介の母・桂にだけはなぜか、死んだ二人の姿や声がわかるらしい。
それを知った彼らは、桂を通じて遺した人々に自分の最後の思いを伝えようとするが…。
感想:
再演を見て、某劇団版も見ているので、このお芝居を見るのは今回3回目です。
ですので、話の展開がわかってしまっている点で素直な感想ではないかも…とは思いますが。
役者さんたちも何度も演じている演目のせいか、すこし演じ過ぎてしまっていると感じられた部分と、楽日だからか観客側も「話を知っている上で見ている人」が多かったように思えて、なんとなく素直に楽しめなかった部分もあったのですが、見終わってじわ〜んと暖かくなるようなこの物語はやっぱり好きな話です。
はじめて見たとき、その年に祖父の葬儀があったことと同じ年の友人が病死したばかりで、この物語の「死者と、その人が生きていた間にかかわった人たち」への視線にものすごく共感してしまった、ということもあるのでしょうけれど。
ふたりの人物がこの世からいなくなった、という物語なのですから、ただ巻き起こる騒動に笑うだけではなくて、残された人々の寂しさというものをきちんと表現していて、これは死者にとってのひとつの理想の葬式を描いているような気がします。
日常生活の流れの中に突然訪れた「身内の葬儀」という大騒ぎを、笑いと涙を交えつつ描いたこの作品は「ここが良かった」等々声高に語るよりも、見た人それぞれが「自分の死んだときのこと」「近しいひとが亡くなったときのこと」をふっと考えさせられるような、そんなお芝居の気がします。
役者さんではやはり桂おばあちゃんの麻生美代子さんが良かったです。
幾つになっても好奇心旺盛なかわいいおばあちゃん、という感じで、この役ははまり役だと思います。
初演・再演の牧伸一郎役・矢尾一樹さんの「髪は金&赤、みるからに怪しげな格好のビデオ屋の店長」、というのもおかしかったのですが、今回の牧店長・嵯峨周平さんの「一見したところ普通のおじさん、でもときおり垣間見えるいやらしさ(失礼)」というのもなかなかくせがあって、あの役にぴったりでした。
次回公演「珊瑚の女」(仮^^;)は一体どんな物語になるのか、楽しみです。