煙が目にしみる
カトケン『2000年 春の特別公演』

(加藤健一事務所 '00.4.18  かめありリリオホール) 

野々村桂 :加藤健一
野々村浩介 :岸野幸正
原田正和 :新井康弘
牧慎一郎 :みのすけ
江沢務 :神戸浩
野々村亮太 :北村有起哉
原田泉 :平田敦子
乾幸恵 :歌川椎子
野々村早紀 :入交恵
瀬能あずさ :加藤忍
野々村礼子 :一柳みる
北見栄治 :坂口芳貞

あらすじ:
春、とある田舎町の斎場。
誰もいない待合室に白装束を着た二人の男、北見栄治と野々村浩介が座っていた。
彼らはこれから火葬にされる幽霊達だが、ボケ始めてきた浩介の母・桂にだけはなぜか、死んだ二人の姿や声がわかるらしい。
それを知った彼らは、桂を通じて遺した思いを伝えようとするが…。

感想:
加藤健一事務所の舞台を見るのはこれが初めてなので、いままでのものとレベルの比較のしようがないのですが…。
う〜〜〜ん。
先にオリジナルの鈴置洋孝プロデュース版を見ているせいか、不満のほうが先にでてきます。
加藤健一氏がなぜこの演目をご自分のところでもやろうと思われたのかが伝わらない…

役者も演出も違えば別のお芝居になるのはあたりまえ。
良く言えばたいへんテンポの良いお芝居になってました。
でもテンポが早すぎて、がちゃがちゃと動き回っているだけにしか見えなかったです。

例えば、浩介の妻・礼子が斎場の待合室で一人になるシーン。
夫に若死にされて、葬儀のあいだじゅうはひたすら動き回っていることで悲しみを忘れていた礼子さんが、ふと一人になったときにぽろっと涙をこぼしてしまう…というシーン。
もうちょっとゆったりと芝居をしてほしいところなのに、早泣き競争やってるんじゃないんだから…という感じ。
その後のあずさの気持ち、栄治が借りっぱなしにしていたビデオテープの秘密、のくだりでは泣いていた方もいたようです。
でも、妻と子供たちからの浩介への言葉、これは夫・父親への愛情だと思うのだけれど、ここで笑ってるかたがけっこういたんですよね…
笑えるところなのかな…

加藤健一氏が「桂おばあちゃん」を演じた、という点ではなかなかおもしろかったのですが、全体で見るとわたしにはダメでした。
「身内の死に直面した二つの家族のてんやわんやな1日」をもっとおもしろおかしく表現しようとされたんでしょうか…
付け加えられた場面では変に細かく細かく笑いをとりにいっていたのがすごく気になりました。(「草加せんべい」は笑うどころか腹がたった)

見終わった感想…何か違う。
(加藤版を見た方にはぜひ鈴置版も見ていただきたいものです。その上でどちらが好きか判断していただきたい…)

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