FILE71.後方排気の超メンテ
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本当に苦労したメンテ方法のみを紹介

〜ボルトの締め付け方、緩め方〜

基本原則「押しつける力8,回す力2のつもりで回すこと.」なめる原因の一番はこれ.

1.締め付ける.

<一般的な手順>

サービスマニュアルを購入する.

ボルトは緩く締めてから,次いで強く締め付ける.最初から強く締め付けてはいけない.
サービスマニュアルに規定トルク等の指示がある場合は,その通りに締め付ける.
無い場合は,緩めたときに必要だった力の8割くらいの力で締める.
締めるときに100の力で締めると,緩めるには120の力が必要となります.
ただし,これは経験則です.詳しいことはわかりません.

ネジの弾性域でなく,塑性域で締結しているものが,エンジンなどに タマにある.
(例:コンロッドボルト)この場合は,必ず新品のネジを使う.
あまり重要でない所のボルトも,頻繁に締めたり緩めたりする場合には,適当に交換した方が良い.

<塑性域締結法の注意>

最近は,トルクレンチだけでは締められないボルトがありますので,気を付けて下さい.
?! と思う方の為にスナップオンやKTCに有りますが角度計を使って締めている所があります.
(国産車にも有ったように思います)
例えば K100 のコンロッドボルト(本当はナット)ですが先ずイニシャルトルクは
20Nm で締めてその後で 80°締める様になっています.

これは 一般に『回転角法(だったかな??)』とか呼ばれている塑性域締結方法です.
他に『トルク勾配法』という塑性域締結方法が有名です.

<弾性域締結法の注意>

弾性域の場合に大事なのは,ネジ山や座面を綺麗に*洗う*ことです.ヤスリで削っちゃいけません.
トルクレンチの指示値 = 締結力 + 残留座面トルク ですから.

<締結トルク管理について>

トルク値表示: Nm は Newton meter と読みます.
1Kg/m = 9.80665Nm(9.81Nm) 位で換算します.
ただトルクレンチの誤差もあるので 1Kg/m を 10Nm と読み変えても問題は無いでしょう.
少くともバイクのエンジン等では..
なお,35+4 というのは,35プラス4マイナス0 という意味です.
(基準は34だけど プラス方向に4までは許容.マイナス方向の許容は0)

マニュアルを見ると厳重にトルク管理をし,また大きなトルクがかかる所があります.
その例がシリンダーヘッドでしょう.
また締め付けトルクは書かれているがそのトルクの小さな所があります.
例えばオイルパンでしょうか..

例をあげると BMW R シリーズ(OHV)

シリンダーヘッド

1回目 15Nm (10Nm だったかな?)
2回目 30Nm
3回目 35+4Nm

オイルパン 10Nm (9Nm になっていたかな?)

の様になっていますが,やはりオイルパンをいきなり 10Nm で締めるよりは適当
(ボルトの頭がオイルパンに軽く当たるくらい)に締めてから最終的に10Nm で締めた方ガ良いと思います.

注意:数字は覚えない,マニュアルを見ること.

<ねじロック,オイル等塗布の指定がある場合>

必要に応じて,オイル等をねじ,ボルトに塗布し,締め付ける.

ボルトの入る穴にオイル等を入れることは,絶対に避けること.
理由:何と無く同じ様に思えたり,ボルトを締めていくうちに余ったオイルが出てくると思われがちですが,
時には(場所によっては)閉じ込められたオイルの逃げ場が無く,
最悪の場合にはケースに亀裂が入る事があります.
ボルトにオイルを塗布する,ボルト穴にオイルを入れる,は
ボルトの潤滑として見た目は同じでも結果は*大違い*です.

<締め付け順序(ねじ,ボルトが複数である場合)>

すべてのボルトを緩く締めてから,次いで順に締め付ける.最初から強く締め付けてはいけない.

サービスマニュアルに締め付け順が記載されている場合は,記載通りの順序とする.
締め付け順序が無い場合には,歪みを外に逃がす様,基本的に内側から外側に向かって締める.

<事後処理>

また,締め付けてからしばらく走行した後,再度締め付けたボルトをチェックする.
振動により,締め付け時より緩んでいることがある.(振動により座面残留トルクが開放されて緩むことがある.)
一度緩むと 完全に外れるまでは アッと言う間です.
これが有るので,新車を買って初回点検に持っていくと必ず,締めつけの点検をします.

なお,定期的に締め増し(緩んでいないかチェック)しましょう.

シリンダーヘッドの場合:

ガスケットの質によっては,シリンダーヘッドの増し締めも行ないます.
昔のコルクをつかった,ガスケットなどは,いわゆるガスケットやせをしますので,
必ず増しじめをしなければなりません.
逆に,締結システム内にガスケット(塑性変形する)や液体パッキングなどがある場合は,
*バイク屋がドヘタな場合を除いて* 振動による緩みは めったに無いはずです.
その場合には,シリンダーヘッドはやらない方が良い.

増し締めをする例
BMW の R シリーズ( OHV )ではシリンダーヘッドの増し締めをしろと有る.

<補足>

あまり重要でない所(カウルをとめるねじとか)は勘で締めてもよろしいが,
シリンダーヘッドなどは勘締めは危険.

2.緩める.

基本的にねじ、ボルトは、簡単に取れない時は新品に交換すべきです。
錆やすい所にはステンレス製のボルト(+や−だったものはヘキサゴンのキャップ
ボルトにする)に交換したほうがいいです。
#市販車はコストダウンのため、あまり良いネジを使ってないです。

a. ねじ
1. 頭を見る.つぶれていなかったら,常識的な力で回してみる.はずれればここでおしまい.
はずれなければ CRC556 をねじとねじ穴の間にしみ込むようにかけ,
しばらくおいてから,再度挑戦.はずれればおしまい.はずれなければ 2. へ.
また,頭がつぶれていたら CRC556 しておいて 2. へ.
なお、2.へ行く前に,ちょっとだけ締める方向に回してみます.
それをキッカケに緩む場合もあります.
ただし、その場合には塑性域に入ってしまう可能性があるので、
これを行なった場合には,そのボルトを再利用しないほうが良い.

2. 方法はいくつかある.(2-0 は最初にやる。2-1〜6 は順不同。)
 2-0(a) 軸方向に軽く叩く.
  (b) 円周方向に軽く叩く.
目的は 座面残留トルクの開放と 締結面の圧力を 一瞬開放してやることによる緩みの促進です.
2-1 バイスプライヤーでねじの頭をつかんで回す.
2-2 ショックドライバーではずす.
2-3 一回り大きいドライバーが入れば,それで回してみる.
2-4 ねじの頭に先の丸くなった棒をあて,棒をハンマーでたたく.次にドライバーを頭にあて, ハンマーでたたく.で,回してみる.
(特に,車載などのお粗末なドライバーしかない場合に,)
2-5 しっかりドライバーをねじに押しつけておいて,
プライヤーでドライバーの柄をつかんで回す.
2-6 ドライバーをねじに押しつけたまま,ほんのちょっと緩む方向に滑らせてやってドライバーの頭を
ハンマーで叩きながら回す.というのもあります.
ただ,これは解体屋で車のエンジンをばらす時に使う方法です.
分解専門ですからそれがいいかどうかは個人の判断でお願いします.

3. どれもだめだったら先の尖ったものをねじの頭の中心軸からやや離れた場所にあて,
緩む方向に回るようにこんこんとたたく.ある程度出てきたらプライヤーなどでつかんではずす.

先の尖ったもの,これにはポンチとタガネ等を使います.
螺の頭( + でも - でも)が駄目になった時はタガネで - の溝を作って
ドライバで回してみたりもします. + の頭を - にして回して見るのも一つの方法です.

4. なおもだめなら,最終手段.中心軸にドリルで穴を開け,タップで逆ねじを切る.
このねじ穴に逆ねじを捩じ込み,さらに捻じると元のねじごと取れる.

  ただし、この逆タップはかなり高等です。ドリルの刃がボルトの中で折れてしまったり
逆タップが折れてしまったり..でも何事も挑戦ですかね...

エキストラクター(折れ込みボルト除去工具)という専用工具が存在します。
使い方はネジの中心軸にドリルで穴を開けて、エキストラクターを差込んでネジが
緩む方に回すとエキストラクターが穴に食い込んでいき最終的にネジが取れるというものです。

#タップが折れた場合の除去専用工具(ニュープールタップ)もあります。

また、錆たりどうしても回らないナットを割って外す「ナットブレーカー」という工具があります。

b. ボルト
1. モンキーやスパナは極力避ける(なめやすい).なるだけ,メガネレンチやボックスレンチを使おう.
2. 常識的な力で回してみる.固かったらレンチの先を拳骨で軽くたたいてみる.
だめなら CRC556 してみて,やってみる.とれたらおしまい.

3. バイスプライヤーを使ってみる.それでもだめなら,a. ねじの 4. の最終手段をする.

以上のいくつかの手は,捩じ切った時にも使えます.

<緩める順序>

マニュアルに締め付け順序が記載されている場合は、その逆に緩めるのが一般的です.
また順序が記載されていない場合には、締め付ける時の逆に、外側から内側に向かって緩めていきます.

<追加>

それから順位を何処にするか何とも言えませんが以下の方法は有効な方法だと思います.

螺,ボルトが緩み難い場合には螺,ボルトの周囲を暖める.

これは螺,ボルトが鉄(それ位がいのも有るのですが)で出来ておりエンジン等は
アルミで出来ているので暖めればアルミの方が先に膨張する為に緩める事ができます.
暖める温度は80〜100°C で良いでしょう.何で暖めるかですが
私はブタンガスのバーナーを使っています.他には火を使わなくて良い工業用の
電気ヒーター(ヘアドライヤーの強力な物)が良いでしょう.
間違ってもガス溶接機等は使わないこと!融けますよ..
温度は手で触って「熱い!」と思う位でも良いのですが正確にはサーモクレヨン(チョーク?)
と言うのが市販されていますのでこれを使うと良いでしょう.

ここでは螺,ボルトの締め方,緩め方についての話しなのですが、この暖める(冷やす)と言う
温度差を使って行なった方が良いのは他にも有りますので以下に書きます.
(こっちが本当で螺を緩めるのは応用偏です)

ベアリングの交換には場所にもよりますがケースを暖めてやると簡単に交換できます.

例えばエンジン,トランスミッションに(ラジアル)ボールベアリングが打ち込まれている所があります.
この様な場合にはケースを暖めておきベアリングをコールドスプレー等で冷やしてやれば外す時も簡単に外れます.
また入れる時にも簡単に入ってくれます.

ホイールのハブを暖めてベアリングを冷やしてやれば軽くハンマーで叩く程度でベアリングは抜け出てきます.
入れる時はこの逆をやれば良いのです.

ところが何故かバイク屋さんはこの程度の事もせずに力任せに叩いています.
これをやるとベアリングは新しくなってもハブはその度に痩せてしまいます.
(そこまで乗らないから良いのかな?)

#この辺りの方法は BMW の修理をやると必ずマニュアルに必ず出て来ます.
BMW の修理の面倒(?)なのはこの*焼き填め*があるからです.これを知らずにやると壊します.
K シリーズ以降は少くなっているんですが 旧 R シリーズはこの連続です.
ベアリング以外にも,ここを外すには何度に暖めてと,こと細かく書かれています.

#しかし,これは BMW に限らず全てのバイクに応用出来る筈です.
また,年配のバイク屋さんは昔の国産車でもやっていたよと言う人がいますネ.

<超裏技か?>

超音波振動だと M12のボルトだって 1秒とかかりませんぜ.