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CONNIE FRANCIS
SINGS BACHARACH AND DAVID(MGM)
腐っても鯛の貫禄を漂わせる、大御所のバカラック集。
こういうものは間違えるとジャズ/スタンダード寄りの面白くもなんともないモノになるのですが、クラウス・オガーマンの元曲に逆らった大胆なアレンジで素晴らしい上がりになっています。
白眉はボッサの「涙でさようなら」と、ホーンで「恋するハート」のフレーズが入る「DON'T
MAKE ME OVER」。「プロミセス・プロミセス」のスパニッシュ・ギターも効いています。劇場の待合い時間向き。
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ALIVE AND
IN LOVE / SUE RANEY(imperial)
アイドルジャズ歌手として有名な彼女、60年代の末にはインペリアルレーベルからMOR寄りのアルバムを3枚だしています。
このアルバムでは3曲バカラックをカバー。「ANY OLD TIME OF THE DAY」のアレンジには大滝詠一ファンは全員涙ですね。この頃のインペリアルの白人向け音楽のいいとこどり。ちなみにインペリアルでの彼女のラストアルバムが最高なのだが、それは次の機会に。オープンテラスのあるカフェのBGM向き。
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MORE TODAY
THAN YESTERDAY/Barbara Mcnair (Audio Fidelity)
一部で有名なバーバラ・マクニールのソフトロック的アルバム。表題作のスパイラル・ステアケースの曲は、自分のキーいっぱいいっぱいの高さで歌って、パット・アプトンが音を上げるところを落とす、という荒技でかなり強引に自分のものに。
その芸人根性は「ウィンドウ・オブ・ザ・ワールド〜世界は愛を求めている」のカバーでも変わりません。ゆったりしたバラード〜ワルツテンポの出だしを聞いて、ああわりと正統的だなと思っていたら、途中ボッサリズムにチェンジして見る見るうちにリズム隊は前にしゃしゃり出てくるわ、ホーンが高らかに鳴り出すわ、気がついたら「ビートでジャンプ」パターンになって締めという、聞く者の予断をまったく許さないカメレオンバージョン。ちょっと感動すらしました。
アソシエイションの「さよならコロンバス」からの曲も取り上げていますが、うち1曲はチャールズ・フォックスのインストの方のボーカルバージョン、「It's
gatta be real」はオリジナルの3倍はファンキーで一聴の価値あり。サービス過剰な旅館の仲居のようなアルバムですこと。
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THE SECRET
LIFE OF HARPERS BIZARRE(WARNER BROS.)
60sバーバンクのソフトロックの大名盤。音楽で地球を一周、がテーマのアルバムで、中ジャケでメンバーが着物を着てお辞儀している通り、Aラスで『ミー・ジャパニーズ・ボーイ』を取り上げています。
ティミー・ユーロによる元曲は、ピアノとギターと最小限の弦をバックにしたシンプルなものでしたが、ニック・デ・カロが彼の得意の繊細なストリングスをウェハースのようにバックに重ねて、ドリーミィ度20パーセントアップ。ハーパーズらしいユニゾン・コーラスがまた夢見心地感に拍車をかけて、曲が終わってもしばらくぼーっとして気がつきません。
実は琴・三味線などの安易な「日本小物」が入っていないのもポイント。旋律は日本か中国か分かりゃしないエキゾものではありますが。
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ARE YOU
READY FOR THIS? / JACKIE DeSHANNON(imperial)
ジャッキーがブレイカウェイズをコーラスに迎えてガールズ・サウンドを聞かせるアルバム。トニー・ハッチファンも狂喜しそうです。
何度聞いても「WINDOWS AND DOORS」の無茶な展開には冷や冷やさせられます。よくこんな綱渡りみたいな曲をポップにまとめられるものです。それをお気に入りのシャツでも着こなすように余裕で歌うジャッキーには、B.Bもさぞしびれたことでしょう。アルバム全体は女の子のパジャマパーティー向き。
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RAINDROPS/Free
Desighn (Siesta)
かわいい女の子はみんな大好きな、プロジェクト3が誇るジャズ的兄妹混声ソフトコーラスグループ。写真はスペインのギタポレーベルによる、ナンパなベスト集。
でも、他のベスト盤CDとかぶっている曲が1曲もないナイスな選曲です。各アルバムにばらけて入っているバカラック・カバーもまとめて聞けるので、もしあなたがソフトロッカーではないのなら、これとシェスタのもう1枚の方のベストか、VARESE
SARABANDEのベストで充分です。
カバー曲は「Window of the world」と「雨に濡れても」。メインを務めるサンディー・デドリックの清楚な声が、この2曲をありそうで実はない純正フォークバージョンにしています。兄妹らしい同族声によるコーラスも、雨上がりの森を吹き抜けたきた風のように爽やか。
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DO YOU KNOW
THE WAY TO SAN JOSE/Bossa Rio (A&M)
バカラックが好きだと言っておきながら、定番なはずのA&Mものを私があんまり取り上げない理由は何でしょう? 1.今更恥ずかしいから 2.きりがないから 3.両方 アトランティックにおいて「Son
of preacherman」が68年度社歌であるごとく、「サンホセへの道」はA&M社歌ですからね。
で、これはセルメンが本国ブラジルから引っ張ってきたボッサ・グループによるバージョン。女性ボーカルのグレイシナ・ラポラスは後にブラジル’66に加入します。
セルメンの女子二人のユニゾン・コーラスに対して、こちらは男女のツインボーカル。ユニゾンが途中ハーモニーに変わるのが売りです。しかし、このバージョンの最大の魅力はリーダーのマンフレッド・フェストによるオルガン。ワルター・ワンダレー感に溢れていてさわやか且つスピード感があり、あくまでへなちょこ。ようするにそれがA&Mテイスト。
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GOLDEN DOUBLE
DELUXE/Claudine Longet (A&M)
さて、A&Mの殺人鬼、じゃなかったお姫様といえば元祖ウィスパリング・ボイスのクロディーヌ・ロンジェです。写真は筒美京平先生の「絵本の中で」も収録の日本オリジナル編集盤。
ダスティでお馴染みの「恋の面影」を歌っていますが、たどたどしい唱法がいたいけで、いけないものを聞いているようなドキドキ感を誘います。ダスティのオリジナルに勝るバージョンがない曲だけど、あえて自分のものにしたとすれば、実はクロディーヌなのではないでしょうか。もちろんそれは、ほとんどのカバーが忠実に残しているホーンフレーズをばっさり切って、ストリングスを中心に清潔感溢れるアレンジを施したニック・デカロの手腕があってこそでしょうが。
この二人によるバカラックカバーでは、クロディーヌがバーナビーに移っての第一弾アルバムに収められた「遙かなる影」も愛らしくていいです。
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THE CARNIVAL
(World Pacific Record)
元セルメンのメンバーが、プロデューサーのボ−ン・ハウ以下フィフス・ディメンジョンのバックによるサポートで作った、どこぞの国の新党のような体制のグループのレコード。
ボーン・ハウからA&Mへの回答といった趣のラテン・ロックだけど、本家よりちょい下世話な楽しいパーティ・アルバム。
「Reach out for me」「Walk on by」の二曲のバカラック・カバーも、女子二人のユニゾン・ボーカルを追いかけて男性がコーラスでハーモニーをつけるという、セルメンとボサ・リオを足して二で割ったようなタイプのもの。ですが、やっぱりプロダクションがよく練れているため相当いい出来です。
ソフトロック経由バカラック行きの人たちが最も好むパターンだと思います。(私も好き)
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DUSTY IN
MENPHIS/Dusty springfield(Atlantic)
彼女の歌うバカラックというと、「Look of love」があまりにも有名ですが、これは彼女がアトランティックのスタッフとがっぷり組んで作ったホワイトR&Bの大名盤。タランティーノも、このアルバムからシングルカットされた「Son
of preacherman」をサントラで使っています。
色気もないおばさん顔のイギリス女が、こんなにぞくぞくするようなセクシーさで自分たちの音楽を歌うなんて、アトランティックのソウルシンガー達もさぞ悔しがったことでしょう。
ここでのバカラック・カバーは、シタールとコンガの響きが死ぬほど悲しい「In the land
of make believe 」。私のフェイバリットのバカラック・カバーのベスト3に入ります。ダスティは全編せつなげなファルセットで歌っていて、それが聞いている人の胸を締めつけます。レコーディング・スタジオ中の人間が、彼女の歌に魂を奪われた瞬間が封じ込まれたような魔力。
まだダスティの歌うバカラックを一枚も持っていないという人には、この間フィリップスが、ダスティが歌うバカラックとゴフィン/キングのソングブックスを2in1でCDとして出したので、そちらをお勧めします。私のように中途半端にオリジナル音源を持っている人間には地獄のような素晴らしい企画ですね
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tOUCH'EM
WITH LOVE/Bobbie Gentry
「ビリー・ジョーの歌」のヒットで有名な彼女が、69年に発表したフリー・ソウル・アルバム。彼女はカントリー畑の人なのですが、ヒット曲の「ビリー・ジョー」が語りブルースものだったことで分かるように、ハスキーでブルース的な歌唱をする人です。
そういう人が逆に軽く「I'll never fallin'love again」なんかを歌うと、絶妙のところでかすれていい味を出します。このバージョンはコノイシューの「バカラック/デビットソングブック」にも収められているので、耳にしたことがある人も多いかもしれません。
しかし、このアルバムの選曲は端的です。「Son of preacherman」やジミー・ウェブの「Where's
playground Johnny 」、そしてやはりメル・トーメがバカラック・カバーをやっているアルバムにも収められている「You've
made me very happy 」と、バカラックとセットになってカバーされる曲というのは決まっているんでしょうかね。
アルバムは全曲を通して、95年頃トニー・ジョー・ホワイトとか聞いてて「南部で踊る」ブームにはまってた人には最高!の一枚。
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A GOURP
CALLED SMITH/Smith
アメリカ人にも関わらずビートルズ・バージョンの「Baby it's you 」しか知らなかったのが、このグループのボーカルだったゲイリー・マコーミック。
それはこのグループをプロデュースしてダンヒルに売り込んだデル・シャノンの狙い通りだったとか。ふといベースと狙いが分かりすぎるオルガンをバックに彼女が歌うこのバージョンは、かなりスワンプ風味です。あくまでも「風味」ですけどね。
ただ、彼女自身のボーカルは決してタフなシャウトに耐えうるものではないので、ところどころ苦しげに細くなります。実はそこが魅力の一曲。
ちなみにこのグループは、オリジナル曲の権利が取れなかった「イージー・ライダー」のサントラのためにザ・バンドの「The
weight」を吹き込んでいることで有名です。
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EVERYBODY'S
OUT OF TOWN / B.J.THOMAS(SCEPTER)
バカラックのカントリーっぽいサイドを代表する曲といったら「雨に濡れても」だけど、ホルンがとぼけたフレーズを奏でるこの曲も相当呑気。
バカラック作品を歌う時の、B.J.トーマスのノンシャランスはどういうわけかポール・マッカートニーを思い出させます。何が似ているとうわけではないのだが。 のんびり朝寝坊をしたい日曜日の朝向き。
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THE VERY
BEST OF CILLA BLACK (EMI)
ダスティ・スプリングフィールド! ペトゥラ・クラーク! ジャッキー・トレント! ルル! スウィンギン・ロンドンを代表する女子はどうしてこうもおばはんでルックスに難がありなのか!(真実を言ったからって石を投げないでね)「歌さえ上手ければルックスなんて二の次」という風潮があったんでしょうか?ここのところだけは同時期のイエイエを見習って欲しかったものです。(サンディ・ショウもクールだけど美人とはいえない)
その中でもおかめなのがこのシラ・ブラックだということに異論はないと思うのですが。歌が上手いからいいのか。でも、その上手さが何というか水仙寺清子的な上手さなんですよ。こぶしをまわすまわす。聞き所に来ると張り切るったら。
そんな彼女が何故「アルフィー」において名唱を残しえたのか。それは彼女が声を自由に操れる音域よりもほんの少しだけキーが高かったから。波一つない水面のようなクリアな歌声は楽曲チョイスの勝利。他のバカラックカバーもなかなか聞かせます。どんな田舎娘でもソフィスティケイテッド・レディに仕立て上げるのがバカラック・マジックなんでしょう。
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JOHNNY MATHIS
SINGS THE MUSIC OF BURT BACHARACH (Sony)
この間観た『カラー・オブ・ハート』でも、50年代的健全さ漂う歌手として、ペリー・コモと並べて語られていたジョニー・マチス。ラテン系ですがロマンティックな唱法で有名な人です。バカラックもちょこちょこ色んなアルバムでカバーしているのですが、「1曲のために(安価とはいえ)買うのはどうも」と思っていたところ、編集盤を発見。あるとは思ってましたが。
でもこの人、基本的に50年代の人なのでどうもリズムに弱いところがあります。バカラックの魅力の一つににめまぐるしく変わる拍子がありますが、ところどころついていけていないところがある。
ま、こんなものかなとあきらめかけたところに、バカラックの59年の初期作品を発見。この「Heavenly」という曲が名曲でした。いわゆるバチェラー・ミュージックというか、ジャッキー・グリースン風の厚いけれどあくまで浮遊感漂うストリングスに甘い声で、ありそでなかったB.Bのパターン。まさしくヘヴンリーな1曲。
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