AOR




SOMETIME LATE AT NIGHT/Carol Bayer Sager

 バカラックの奥さんだった彼女が、曲とアレンジを全面バカラックに任せたアルバム。裏ジャケットでは新妻にデレデレしている御大の姿が見られますが、アルバム全体も曲と曲のインターミッションをメロウなストリングスでつなぎ、恋人たちがいちゃいちゃする時のBGMとしてはもーたまらんというスウィートな出来です。「この頃のバカラックが一番好きだ」と言ってはばからないAORファンがいるのもうなずけます。

 しかし、あえて苦言を言わせてもらえば、この頃のB.Bはアレンジ能力も曲作りも、セイガーのもう一人の相方、デビット・フォスターに負けてる! 彼にはなかなか「素直になれなくて」だったんですが、「Stronger than before」のまさしく力強い(あざとい)アレンジを聞くに至って、脱帽しました。









NICOLETTE/Nicolette Larson

 リンダ・ロンシュタットから始まった女性シンガーブームの恩恵を被った、西海岸ガールのファースト。ニール・ヤングの「Lotta love」のカバーは有名です。いかにも78年ウェストコースト産らしい、ドライヴ感ありつつもどこか泣きが入ってて甘い感じのプロダクション。同時期のヴァレリー・カーターのセカンドが好きな人は、間違いなくこれも好き。プロデュースは元ハーパース・ビザールのテッド・テンプルマン。かすかにバーバンクの匂いもします。ゆえに「Mexican divoce」のカバーも納得といったところでしょうか。

 しかし、「涙のメキシコ」「メキシコでさよなら」、そしてそのものズバリの「メキシコ式離婚」と多くの邦題を持つ、偽マリアッチのこの曲。(私がタイトルをつけるとしたら、「メキシコ風にさよなら」)オリジナルのドリフターズのバージョンは、「今日結婚して、明日さよなら。メキシコじゃ万事がそんな風なのさ」(超訳)といった、メキシコよいとこ・男にゃ天国・一度はおいでのひどい誤解の上に成り立った歌詞だったはずです。

 いつの間に、このニコレットのバージョンのように「私たちがあんな風にメキシコ式のお別れをしたのは間違いだったわ」というラブソングになったんでしょう。確かライ・クーダー・バージョンには既にこの歌詞があった記憶があります。歌詞のつけ加えの時期を知っているバカラック・マニアの皆さん、どうぞ私に教えてください。







HEARTLIGHT/Niel Diamond(Sony)

 バカラック・ファンはどうも、みんなで示し合わせて彼の80年代ワークスはなかったことにしているような感があります。逆にAOR〜ブラコン好きにとっては、バカラックといえば80年代仕事です。

 ニール・ダイアモンドのこの82年盤は、バカラックとベイヤー・セイガーとがっぷり組んで作ったもの。表題作はビルボードでトップ10入りの大ヒットを記録しました。スピルバーグの『E.T』をヒントにしたという歌詞が、何というか『かもめのジョナサン』の人らしい。

 バカラックはベイヤー・セイガー期の彼の特色である美メロサビで勝負!という曲をこのアルバムのために多数書いています。個人的には「汽車と船と飛行機」を換骨奪胎して作られた「Lost among the stars」という曲の存在が嬉しい。100円コーナーにあったらゲットです。


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