映画パンフレット傑作選
グラン・プリ Grand prix 1966 監督 ジョン・フランケンハイマー 出演 ジェームス・ガードナー イブ・モンタン エバー・マリー・セイント フランソワーズ・アルディ
ただグラフィックがいいという訳ではなく、それによってかなりの情報量がさばかれているところに注目。映画の解説であるのと同時に、グランプリ・レースそのものの丁寧な入門編にもなっています。 カラー分けされたコース説明のページや、見開きで紹介された当時の人気選手のポートレイトを見ると、当時のF-1って何ておしゃれなの!って思わずにはいられません。解説は三保敬太郎。 アメリカ・フランス・イギリス・イタリア・日本、各国スターの顔見せ興行的なところもある映画なので、俳優紹介には8ページを費やしています。 撮影中のショットも実に決まっているスタイリッシュな一冊。 |
チップス先生さようなら Goodbye, Mr.Chips 1969 監督 ハーバート・ロス 出演 ピーター・オトゥール ペトゥラ・クラーク
映画のスチールとグラフィカルな書き文字で、ミュージカルの内容を説明していくという、今のパンフレットとほぼ同じ考えで作られていて、「映画のスーベニール」としてのパンフレットの魅力があますところなく発揮されています。 恐らく画面そのままのサイズでスチールが見せられるように工夫した結果が、このサイズと装丁だったのでしょう。本当に丁寧な作りで、ミュージカル映画のパンフレットはみんなこれにならって欲しいものです。 ディズニーの『チキチキ・バンバン』もこれと同じ作りなので、見つけたら買いですよ! |
哀愁の花びら Valley of the dolls 1967 監督 マーク・ロブソン 出演 バーバラ・パーキンズ パティ・デューク シャロン・テイト スーザン・ヘイワード リチャード・ドレイファス
原作者のジャクリーヌ・スーザンは、この世界に横行する金と欲とセックスの話をソフトながらも扇情的に書いて、この年代に一世を風靡した人で、作品のほとんどが映画化されています。 映画の内容に合わせてか、パンフレットは紙質からして厚くてゴージャス。ずっしりと重たいほどです。全30ページで、相当力が入っています。主要キャストの女性4人は、それぞれ2ページをさいて念入りに紹介されています。シャロン・テイトはマンソンに殺される前で、「ポランスキー監督」と結婚したばかり」というプロフィールの締めには涙。 こんなに中身が華やかなのに、この表紙はちょっと寂しいですね。女性3人がベッドにいるなまめかしい方の写真をメインに据えれば、もうパーフェクトだったのに。 |
サイレンサー/殺人部隊 Murderer's row 1966 監督 ヘンリー・レヴィン 出演 ディーン・マーティン アン・マーグレット カール・マルデン カミラ・スパーヴ ディノ・ディジ・アンド・ビリー
この映画といえば、いかにも60年代的デザインのグラフィックによるタイトル・ロールが印象的ですが、その躍動感が伝わる裏表紙が見事です。 悪趣味すれすれのアン・マーグレットのカラフルなファッションも、たっぷり楽しめる仕掛けになっています。この頃は「それ、本当に流行ったわけ?」というようなネーミングが文中にあったりしますが、これも名付けて「ヌード・ルック」(笑)。そんなのありかなあ。 他にも、「ブラスト・オフ」というのがあって、これはやたらとダンスクラブ・シーンがあるこの映画でアン・マーグレットが披露するダンスのリズムということ。「いわゆるモンキーダンスからゴーゴーへ移っていった激しいビートの一連が混じりあったようなダンス」「アメリカの若い人たちの間では早くも取り入れられ、ブームをよんでいる」って、マジ? |
むかし、マイラは男だった Myra Breckinridge 1969 監督 マイケル・サーン 出演 ラクウェル・ウェルチ メイ・ウェスト レックス・リード ジョン・ヒューストン ファラ・フォーセット
少ないながらも的確なスチール選択もさるところながら、このパンフレットの最大の魅力は淀川長治先生によるホットな絶賛レビュー。原作・監督・主演男優ともにゲイというこの映画を、淀川先生が涙なしに観るわけがないのです。 「ホモはもうホモの悲しいスタイルを叩きつぶし、当たりまえの立派な青年でそれがホモで当たりまえとなって描かれている。しかもラクウェル・ウェルチという女の中の女、1970年の女のシンボルである。ホモが性転換するとそんな女になり得たという図々しさ。ここには性転換の罪悪感はみじんもない。それがこの映画のすがすがしさなのである」(以上抜粋)。泣。 映画の主演がラクウェル・ウェルチなのにも関わらず、メイ・ウェストについての叙述とスペースの方が断然多いところに、宣伝部(アメリカ側)の苦労がかいま見えます。 |
ワイルド・パーティ Beyond the valley of the dolls 1970 監督 ラス・メイヤー 出演 ドーリー・リード シンシア・マイアーズ ジョン・ラザー マイケル・プロジェット デヴィッド・ガリアン エリカ・ギャビン
というか、この再映版のパンフの写真は全部このオリジナル版からのコピーというていたらく。私はちょっと怒っていたりします。 オリジナルにあった俳優のプロフィールさえ、今回はありませんでした。もう少し詳細な撮影こぼれ話とか書かないと、秘宝系パンフは渋谷系雰囲気パンフ以下だと言われても仕方がないのでは。 上映フィルムの状態も12チャンネル並でふざけんなケーブル・ホーグ!と思ったのは私だけではないはず。 どうでもいい話ですが、これが私が持っているパンフで一番の高値(1400円!相当迷った)。でも逆にいうと、レアなパンフなんてせいぜいそれくらいのお値段が妥当なのでは。10000円とかプレミアつける方がどうかしている。 |
ウェディング A wedding 1978 監督 ロバート・アルトマン 出演 リリアン・ギッシュ キャロル・バーネット ミア・ファロー 他総勢48名! ナッシュビル Nashville 1975 監督 ロバート・アルトマン 出演 リリー・トムリン シェリー・デュヴァル キース・キャラダイン 他総勢24名!
その経験から言います。アルトマンの群像劇をパンフなしで観るなんて、そんな無謀なことはおよしなさい。人物の紹介も説明もなく突き進むストーリーとオーヴァーダビングされた会話シーン。複雑に絡み合う相関図。間違いなく頭が混乱でスパークします。「外人の顔覚えが悪い」という人は絶対です。 本職が俳優ではない人も多数の、バラエティに富んだ顔ぶれはひとつ、くわしいプロフィール付きで味わいたいものです。 『ナッシュビル』はアメリカ最大のカントリー・フェスティバルに集まった人々の悲喜こもごも、『ウェディング』は南部の豪家同士(片方はマフィア)の結婚式という大所帯ドラマ。『ウェディング』はまるで名古屋の結婚式のような派手こさです。 思わぬ有名どころや後にブレイクする俳優のプロフィールも多彩。『ナッシュビル』にはそう言えばもとはアルトマン・ファミリーだったジェフ・ゴールドブラムが、『ウェディング』には『サイレンサー/殺人部隊』にも出演していた「ディノ・デシ・アンド・ビリー」のディノ・マーティンが出ていたりします。 |
ハロルドとモード 少年は虹を渡る Harold and Maude 1971 監督 ハル・アシュビー 出演 ルース・ゴードン バッド・コート ビビアン・ピックルズ シリル・カサック
常に私の心のベスト10上位にある映画ですが、まずは表紙のイラストと中表紙のコラージュが素晴らしく、それだけでも持っている価値は充分にあります。 この頃のバッド・コートは、フリッパーズ時代の小山田圭吾の最もいいイメージを更に繊細にしたようなルックスで本当に可愛い。 実はさりげなく鋭いこの映画の彼のファッションの数々もカラー・スチールで堪能出来ます。小柄だけど等身のバランスがいい、という絶妙の体型にしか似合わないタイプのものではありますが、男子諸君は秋冬のおしゃれの参考にどうぞ。 衝撃だったのは、ラストページのクレジット。何と、脚本家のコリン・ヒギンズ名義で原作本が二見書房から出ているではありませんか! これは何としても手に入れなければ。(←その後、経堂の古本屋で百円で手に入れました) |
ガラスの墓標 Cannabis 1970 監督 ピエール・コラルニック 出演 セルジュ・ゲンズブール ジェーン・バーキン ポ−ル・ニコラス
中身はフランス70年代初期にありがちな、陰鬱で耽美なハード・ボイルドなんですけど、再映パンフはきっと相当おしゃれに作り込んであったことでしょう。 じゃ、なんで初映版の方を押すのかというと、時代色が全面に出ているからです。 映画のプロモーションで来たバーキン・ゲンズブールの記者会見はat六本木ムゲン(笑)。解説は当時はまだアンアンの編集部にいた今野雄二。(かなりねちっこくホモの美学を語っています) 傑作なのは、川村義之(何者?)による、「ガラスの墓標・ミニライブラリー」。「結婚」はサルトル、「悪」については三島由紀夫、「女」の項目はどうしてか星新一と朝日新聞、「愛」に至っては富岡多恵子と小中陽一郎と日向あき子という、どう考えても一貫性のない有識者の意見の引用集。本人はどうやらかっこいいつもりらしく、得意満面といった感じです。 |
幸福 Le bodard 1965 監督 アニエス・ヴァルダ 出演 ジャン・クロード・ドルオー クレール・ドルオー マリー・フランス・ボワイエ
綴じ込みグラビアで映画のワンシーンを入れる力の入れようで、出来うる限りこの映画の詩情を観客に伝えなければという製作陣の意気込みや良し。 当時のものとしては、カラーのスチール写真が多いのも大きな特徴。(60年代もののパンフはよほどの大作でない限り、表紙以外のスチールは全部モノクロの場合が主なので) この頃の特徴である、わりとベタっとした発色も期せずして映画の色調に合っています。 主題歌レコードのクレジットに心ふるわせるフレンチな方もいらっしゃるでしょうが、『スウェーデンの城』と同じく、ムード歌謡の歌手による単なるイメージレコードなので、探したりしない方が無難でしょう。 |
それでもまだまだサルヴェージ
ということで、以下の映画のパンフレットを安価で探しています(笑)
抱きしめたい/初体験リッジモンド・ハイ/サンタモニカの週末/ジョージィ・ガール/ひとりぼっちの青春
ifもしも‥/キャンディ/ピストン野郎/ミニミニ大作戦/10億ドルの頭脳/紳士泥棒大ゴールデン作戦
美しい冒険旅行/バニー・レイクは行方不明/水の中の小さな太陽/悪魔のような恋人
ラブ・マシーン/いちご白書/BIRD★SHT/USAブルース/無責任恋愛作戦/パパずれてるゥ!
カンサス・シティの爆弾娘/おませなツインキー/グループ/サボテンの花/バタフライはフリー
スリーパー/雨のなかの女/女房の殺し方教えます/ラブド・ワン/裸足で散歩/スローターハウス5
泳ぐ人/太ももに蝶/アルフィー/かわいい毒草/瞳の中の太陽/ジョンとメリー/ボブ&キャロル&テッド&アリス
ロールス・ロイスに銀の銃/ホット・ロック/汚れた7人/百万挺のライフル/殺人者たち/ザ・ヤクザ