JOEY LAUREN ADAMS

野良猫のスピリッツ

・最新ニュース

・未公開コメディーの『Beautiful 』(2000)ではシングル・マザーでミスコン優勝を狙うミニー・ドライバーの親友役。ミニー・ドライバーとの身長差がおかしかった

・サラ・ミシェル・ゲラー主演の大学コメディー『Harvard Man 』(2001)に出演。まさか同級生役ではあるまいと思うけれど、彼女(71年生まれ)より二つ年下なだけなのにいまだ高校生役をやっているレベッカ・ゲイハートが休演しているところをみると‥

・『Jay and Silent Bob Strike Back』 (2001) でケヴィン・スミスの映画に復帰。なんと『チェイシング・エイミー』の時と同じアリッサ役で出演

・アクション・コメディー『In the Shadows(2001)ではヒロインの模様


 ケヴィン・スミスの『チェイシング・エイミー』(97)の主演に抜擢されて、一躍話題になった女優。もともとはテレビのコメディ・ショー出身のコメディエンヌ。一度聞いたら忘れられない、甘ったるいくせにどこかかすれた「はすっぱ声」と、小柄な体が特徴。『チェイシング・エイミー』では、ベン・アフレックの胸に届くか届かないかというような身長差だった。

 ベン・アフレックとは既に、76年版の青春グラフィティ、『バット・チューニング』(91)で共演している。この映画、ミラ・ジョボウォッチやパーカー・ポージィ等、未来のスターが総出演だった。ジョーイは秋に入ってくる新入生の女の子たちを嬉々としていじめる先輩の役。

 『コーン・ヘッズ』(93)『スリープ・ウィズ・ミー』(94)でも、パーカー・ポージィとコンビで登場。

 『スリープ・ウィズ・ミー』では、男たちのポーカーの定例会に出て勝手なことばかりやって、会を台無しにしてしまう二人組の片われ。ポーカーのテーブルでギターを弾いて彼女が歌うシーンが印象に残っている。「パパはキライだったけど、ある日ママが言ったの、私たちの間にはもう愛はないけれど、お前の父さんなんだから大事にしなきゃいけないって…」クレジットを見たら、実際にジョーイ自身の自作曲だった。『チェイシング・エイミー』でも歌っていたところをみると、テレビ・ショーで歌い慣れているのかもしれない。

 正直なところ、今まで挙げた役には、特別なパーソナリティは書き込まれていない。ちょっとすれたところもあるけど、気のいいアメリカン・ガールというステレオ・タイプの役回りばかり。本人も映画と映画の間にウェイトレスをして食いつなぐなど、苦労していたらしい。

 そんなジョーイにチャンスを与えたのが、後に恋人になる「ミルウォーキーのマンガおたくのデブ」、ケヴィン・スミスだった。彼の『モール・ラッツ』(95)で、初めてジョーイはすれた女の子の内側にある、あたたかいハートを演じる機会を得た。

 他に娯楽もない田舎町のモールで、うろうろしている女の子。下着の試着をするたびに、監督本人演じるサイレント・ボブが試着室に乱入してくるので、最後はやけになって店先でパンティの試着を始める。

 恋人と破局の危機にあるジェイソン・ロンドンの昔のガールフレンド。彼をちゃかした後、本当は恋敵のはずの今の彼女、クレア・フォラーニにアドバイスに行く。「あんなに優しい男はいないわ。彼みたいな人が他にいたとしても、きっと彼とくらべものにはならない」。これ幸いと昔の彼のよりを戻そうとなんてしない、フェアな女の子ぶりだった。

 そして『チェイシング・エイミー』である。不器用なマンガ家のホールデンが好きになったレズビアンのアリッサ。実は女ばかりではなく、男たちとも豊富な経験があったと知って、ベン・アフレック演じるホールデンはすっかり混乱してしまう。

 最初ミラマックスは、この役にドリュー・バリモアを推してきたらしい。ところが、ケヴィンがどうしてもジョーイでと譲らなかったので、低予算で撮影せざるをえなかったとか。

 ドリューは甘くて毒があるけれど、ジョーイは熱くて痛い。ドリューが演じたらファンタジーになるところを、ジョーイは徹底して生身の女の子のままで「彼女自身のように」アリッサを演じた。

 ホールデンに過去の体験を責められたとき、アリッサが泣きながら訴えた時のセリフは忘れられない。「あなたと違って私は生き方の地図を持たなかった、だから全部試したのよ」「ただの高校時代のセックスじゃない、それが愛だと勘違いしたこともあったの」

 愛情のガイドラインは普通、両親が示す。その両親の関係が破綻していると、子供たちは愛がどういうものか分からず、セックスにそれを求めることがある。ところが、セックスは愛そのものではないので傷つけられる。その傷を癒そうと、別のセックスを求める。その結果、女の子として消費されてしまう。「両親は不仲だった」「いつも家にいなかった」というセリフから推測するに、アリッサもそんな悪循環にはまったティーン・エイジャーだったのだろう。

 それでも、アリッサは汚れた女なんかではなかった。野良猫のように自分の傷はなめて癒して、本当に愛する人が現れた時にはまっさらな心を捧げたのだから。自分を理解してくれないホールデンに、彼女は最後の一瞬まで優しかった。

 残念ながらこの映画の撮影の後、ケヴィン・スミスとジョーイもホールデンとアリッサのように別れている。

 それでも『チェイシング〜』を見ると、あまり映像センスがないケヴィン・スミスが、いかに力を入れてジョーイを撮っているかが分かる。タランティーノなら才気と技で到達するレベルに、「女に惚れて撮る」ことによってリーチ・アウトしたケヴィン・スミスのこの映画を、私は当分忘れないだろう。

 『デンジャラス・マインド』(95)のジョン・N・スミス監督の『Cool dry place』ではデボン・サワの姉役。妻に逃げられて子育てに奮闘中のヴィンス・ヴォーンと恋に落ちる気のいい女の子。この作品で共演したヴィンス・ボーンと現在も交際中とのこと。

 アダム・サンドラーの『ビック・ダディ』では堂々のヒロイン。仕事一途に生きてきたのに、サンドラーと彼が引き取った子供に惹かれてとまどうキャリア・ガール役を好演。ひょっとして新境地?

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