ALAN CUMMING

実写版「花輪君」

・最新ニュース

・『プランケット&マクレーン』(1999)に貴族の役で出ているらしいが未見

・『タイタス』(1999)ではジェシカ・ラングに籠絡されるローマ帝王をニューロマ・メイクで演じている

・『追撃者』(2000)では、スタローンにボコボコにされるための敵役で登場

・ロバ−ト・ロドリゲスの大ヒット作『スパイ・キッズ』(2001)では、表向きは子供番組のスターなのに、実は悪の帝王という役をオバカに快演

・デボラ・カプラン&ハリー・エルフォントの傑作『Josie and the Pussycats』 (2001)では主役の三人娘を騙してスターダムに乗せる悪徳マネージャーを、モッドで派手なスーツに真ん中分けの長髪で大好演。『スパイ・キッズ』とこちら、出演作二作をボックスオフィスにチャート・インさせて、売れっ子ぶりを見せつけた

・IMDBにも載っていないが、実はエイミー・ヘッカリングの『Loser』(2000)(素晴らしい映画なのに、日本未公開で残念!)に意外な形でゲスト出演を果たしている

・最新出演作は、ジェニファー・ジェイソン・リーと共同で初監督を果たした『The Anniversary Party』(2001)。ジェニファー・ジェイソンと倦怠期の夫婦を演じている


 昨年度(98年度)トニー賞の授賞式は最高に面白かった。演劇界の重鎮に混じって、バズ・ラーマンの『ロミオとジュリエット』の怪演でお馴染みのジョン・レグイザモが一人芝居で作品賞にノミネート、そしてこの人、アラン・カミングが『キャバレー』でノミネートされて、何とミュージカル部門の主演男優賞をさらっていってしまったのである!

 白塗りのメークと半裸で耽美な「美しい男ぶり」だったが、映画での彼を知っていると、何だか狙って澄ましているようで、笑いが込み上げてしまう。

 確かに英国産美青年の条件は満たしている。中性的な華奢な体つきと整ったルックス。

 しかしよく見ると、まつげは冗談のようにカールしている、目の焦点は合っていない、あごの線が崩れていていやらしい、色が白すぎる。それでいつも花形満のように黒い前髪をはらりとおでこにたらして、自意識過剰気味にふっと遠くを見るのだから、これはもうギャグである。セルフパロディをやっている時の稲垣吾郎と、「エロイカより愛を込めて」のジェームズ君をシェイクしたらアラン・カミングスになる。といえば、雰囲気は伝わるだろうか。

 映画デビュー作の『プラハ』(91)では、サンドリヨン・ボネールや『ベルリン/天使の詩』のブルーノ・ガンツといった名優を相手に主演をはったにも関わらず、その後のフィルモグラフィーがどうにも軽いのは、本人の資質のなせる技か。私は大喜びだが。

 初めてこの人を意識したのは、ミニー・ドライヴァー主演のアイルランド青春映画『サークル・オブ・フレンズ』(95)

 ミニー・ドライヴァーの父親が経営する店の従業員だが、いつも窓からミニーを暗い情熱を込めた目で見つめている。セクシャルな欲望と同時に、あわよくば娘ごと店を自分のものに、という計算高さもある。「お前はブスで太っているから、俺がもらってやらなければ嫁に行けないだろう」と図々しく迫ってくる。実はミニーには大学に、ジュリー・オコネルというさわやか青年の恋人がいるのだが。

 ミニーの肩に置かれた指の湿った冷たさがこちらに伝わってくるような、不思議な魅力のねっとりとした悪役キャラだった。最後には店の売り上げ金を横領していたことがバレてしまうが、悪事がバレてからの開き直りも彼らしい。

 ボンドがピアーズ・ブロスナンになってからの『007/ゴールデンアイズ』(96)では、敵方のコンピュータープログラマー。辛くも最後まで生き延びるが、ボールペンをくるくる回す癖を利用されて、ペン型の小型爆弾で殺されてしまう。

 落ちこぼれ達の同窓会リターン・マッチ・ストーリーの『ロミー&ミッシェル』(97)では、高校の同窓生で最も成功した 発明王。高校時代はメガネをかけた粘着質の少年で、いかにもオタクという感じだったのに、いきなりタキシードで身を包んで、ヘリコプターで同窓会場に乗り付ける。

 昔憧れていたリサ・クードローに「成功したのね」と言われると、「成功?」と聞き返して前髪をかきあげて遠くを見る(お得意)。

 「ニューヨークにペントハウス、マリブに別荘、何十人もの召し使いに自家用ヘリに何台ものリムジン。そういうものを成功というのなら、それはそうだろう。でもたった一つ手に入れてないものがある、それは君だ」

 半分まぶたを降ろした薄目使い。「ちびまる子」の花輪君そのもの。この人は本当に自分というものを心得ている。この後の創作バレエみたいな変なダンスシーンは必見である。

 この後、当然のようにリサはアランのヘリコプターに乗ってしまうのだが、この人が高校時代に彼女に近づくとコーフンして、大きなノートでズボンの前を隠していたことは忘れたのだろうか。

 スパイス・ガールズ版『ヤア!ヤア!ヤア!』こと『スパイス・ザ・ムービー』(98)では、スパイス・ガールズのドキュメンタリーを撮ろうとして、5人(この頃はまだ) にいいように振り回されるテレビ・プロデューサーの役。

 最新作はキューブリック監督の『EYES WIDE SHUT』(99)。精神分析医夫妻(トム・クルーズとニコール・キッドマン)をめぐるサスペンス、ということだが秘密主義のキューブリックは内容を明らかにしていない。もしや、噂の「トム・クルーズと男のラブシーン」のお相手とは、アランのことなのでは?

 トニー賞の受賞インタビューでは相変わらず前髪をはらりとさせながら、「当然って感じかな」発言をしていたが、この人、これが本気なのかセルフパロディーなのか今一つ分らない。「笑わせる」と「笑われる」の中間のポジションに位置する、何とも得難い俳優であることは確かだ。

その後は

・『Company man』で最近役者づいているウディ・アレンと共演。60年代の平凡な高校教師(ウディ?)がスパイになるお話らしい。

 書き忘れていたけれど、『エマ』(95)の牧師役の彼も最高!特にエマ(グイネス・パルトロワ)と叔父様が座っているベンチにお尻をぎゅうぎゅう押し込んで割って入るシーンの目のぱちくりぶりは一見の価値あり。

 ・『アイズ・ワイド・シャット』では本筋とはほとんど絡まないホテルの受付役ながら、いつものマイペースなオカマ演技で場をかっさらっていきま した。超作家主義のキューブリックに対する俳優側の勝利、というと大げさだけど。

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