ILLENA DOUGLAS

女は顔が命

・最新ニュース

・実はケヴィン・スミスの『チェイシング・エイミー』(1997)にもジョーイ・ローレン・アダムスのルーム・メイト役で出演していたが、そのシーンはカットになっている

・『二番目に幸せなこと』(2000)では、マドンナのしっかり者の親友という彼女十八番の役

・苦い青春映画の傑作『ゴースト・ワールド』(2001)では、ソーラ・バーチの補習に当たる美術講師。現代美術の上澄みのダメなところを全部ひっかぶったパーな女。気はいいのだが、結果的にはソーラ・バーチの希望を奪ってしまう

・エディ・マーフィー主演の未来の宇宙時代マフィアもの『Pluto Nash 』(2002) に、パム・グリアやジョー・パントリアーノといったおいしい面々と共にメイン・キャストでエントリーしている

・98年にテレビ・プロデューサーと結婚している


 大きく飛び出た瞳に特徴のある鼻のライン。一度見たら決して忘れないほど印象的だ。スタッフから女優へという経緯を知って、てっきりあまりにも特異なそのルックスに目をつけたスコセッシが、「そんな顔をしているんだから、君は女優になるべきだ!」と言って無理矢理キャストに入れたのだと思っていた。

 ところが調べると、本人は最初から女優志願だったらしい。それもそのはず、名優メルヴィン・ダグラスの孫娘にあたるそうだ。ちょっと驚き。

 本格的な映画デビューはスコセッシの『ケープ・フィアー』(91)。それからも『生きてこそ』(93)『クイズ・ショウ』(95)と順調にキャリアを積んでいる。

 曲者ぶりを発揮し始めたのは、『サーチ&デストロイ』(95)あたりからか。テレビ伝道師のデニス・ホッパーの元愛人で、プロデューサーのグリフィン・ダンの相棒になる秘書の役。

 ガス・ヴァン・サントの『誘う女』(95)では、ニコール・キッドマンが結婚するマット・ディロンの姉の役。

 ピッツァの店を経営するイタリア系ファミリーの長女で、プロのフィギア・スケーターの役。テレビに出て有名になることしか頭にないニコール・キッドマンに「プロとしてやっていくつもりならあなたは整形した方がいい」と言われて激怒していた。ニコール・キッドマンの危険な欲望をいち早く察知するが、彼女にベタ惚れの弟は耳を貸さない。あげく殺されてしまうのだが、きちんと報復するところがイタリアン・ファミリー(笑)。ニコール・キッドマンの死体を沈めた湖に氷を張って、彼女が嬉々としてフィギア・ショーを繰り広げるラストシーンは強烈だった。あれはイレーナ・ダグラスが本当に滑っているのだろうか?そうだとしたら、かなりの腕前だ。

 日本の映画ファンに一気に顔が知られるきっかけになったのは、恩人スコセッシ製作でアリシア・アンダーソン監督作の『グレイス・オブ・マイ・ハート』(96)。

 60年代のヒット・ポップス制作工場であったブリル・ビルディングを舞台にした作品で、彼女は「どう考えてもモデルはキャロル・キング」という女性シンガー・ソング・ライターを演じた。「どう考えてもブライアン・ウィルソン」なマット・ディロンと恋に落ちるというとびきりのフィクションには、ポップス・ファンは大喜びだった。

 好感が持てたのは、彼女が才能がありながら男運には恵まれない普通の女として、この超モデル限定の役を演じたこと。ばりばりのキャリアでもエキセントリックなアーティストでもない「キャロル」像は音楽にぴったりだった。傷ついて泣いても最後にはそれが音楽になってしまうしなやかなたくましさも含めて。60〜70年代のファッションの着こなしも楽しかった。

 インディの小作品『ワン・ナイト・ウェディング』(97)では、「結婚すれば一人前っていうなら、結婚して一夜で離婚してやろうじゃないの」とラスヴェガスに乗り込む3人娘の一人。メンバーの中では一番大人で良識派で、自分の仕事に自信も持って自由に恋愛しているように見える。ところが、内実は深く傷ついている。「ルックスに自信がないから、働く女になった」「本当はチアリーダーになりたかったけれど、東欧系だから無理だと思った」と、酔った勢いで男性に打ち明けるシーンがせつない。イタリア系だと信じていたけど、そう言われれば東欧的に見えなくもない。

 ジェニファー・アニトン主演のラブコメ『ピクチャー・パーフェクト』(97)でも、主人公のアニトンの同僚兼良きアドヴァイサー。結婚していないために昇進が出来ない(アメリカっていうのはなんのかんの言って封建的なシステムが根強い国だね)彼女のために、偽の婚約者(ジョン・モール)を仕立て上げることを思いつく。

 自身の監督作品もある働く「イイ女」が似合う女優。ピカソが描くジャクリーヌに似ている、というとちょっと誉め過ぎかもしれないけれど、あのルックスも今やチャーミングに見える。ヤセっぽちで背が高いところも含めて、野宮真貴にはよく似ている。

その後は

ナスターシャ・キンスキー主演のテレビドラマで「ハリウッド版極道の女たち」の『ベラ・マフィア』(1998)に出演。マフィア・ファミリーの女性の一人で、ジェニファー・ティリーと共に余裕でマフィア女に見えました。

・『メッセージ・イン・ボトル』(1999)にもメインで出演。ロビン・ライト・ペンのしっかり者の女友達という彼女のタイプキャスト。

・『Stir of Echoes (1999)ではケビン・ベーコン扮する弟に催眠術をかけて霊能力者にしてしまい、苦しめる姉の役。

現在放映中のテレビドラマ『Action (1999)はジェイ・モール主演のアクション・コメディで、イレーナは悪徳映画プロデューサーの彼の相棒として出演。

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