TONI COLLETTE

図々しいのも芸のうち

・最新ニュース

・イギリス映画『ホテル・スプレンディッド』 (2000)ではタイトルにある奇妙なホテルの従業員の役

・『ノッティング・ヒルの恋人』のロジャー・ミッチェル監督の本格ハリウッド進出作『Changing Lanes 』(2001)に出演。共演はベン・アフレック。サミュエル・L・ジャクソンとは再共演になる

・同じくオーストラリア出身のニコール・キッドマンがヴァージニア・ウルフを演じる(何か違う)『The Hours』(2000)では、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープらと共にウルフからインスパイアを受ける女性の一人を演じている

・現在、ニック・ホーンスビィ原作の『About a Boy 』(2002) を撮影中。共演はヒュー・グラントとレイチェル・ワイズ。つくづくイギリス人絡みの仕事が多い人だ

・2000年度トニー賞では『ワイルド・パーティ』でミュージカル部門主演女優賞にノミネート。実力者!


 日本に初お目見えした時、このオーストラリア女優は現時点より20キロ太っていた。お馬鹿な宣伝とは裏腹のビターなコメディ、『ミュリエルの結婚』(95)でのことである。冴えない主人公の役柄にあわせての増量で、20代の女の子とは思えないあっぱれなプロ根性に、「女デ・ニーロ」の称号まで飛び出した。

 でも私からすると、彼女はいわゆる「カメレオン女優」の類いとはちょっと違う。どんな役を演じていても、彼女自身の個性が透けて見えるような気がする。頭が良くて、抜け目なくて、物事を見据えるクールな側面。獲物を狙ったら逃さない、ハンターのように鋭い目をしていることにみんな気がついただろうか。

 そんな彼女だからこそ、『ミュリエルの結婚』は良質のコメディに成り得たのだろう。ただのいじめられっ子のリベンジ物語ではない。

 だいたい、あんなに太ってイケてなくてお馬鹿で不器用でアバを聞くしか楽しみがないような子が、ちゃっかりモテモテの金髪軍団に割って入ろうとすること自体が図々しいのだ。仲間はずれにされると、仕事先の小切手をちょろまかして、いけしゃあしゃあとみんなのバカンス先まで押し掛けてくる厚かましさ。結婚の予定もないのに、ウェディングドレスの試着逃げをする時の堂々振り。ビザのための偽造結婚なのに、盛大に結婚式をぶちかましてしまう厚顔無恥ぶり。タフでクールなところが身上である。それがラスト、癌を煩った親友を引き連れて、生まれ育った町を出ていく時のたくましい優しさに転嫁するところが感動的だったのだ。

 この演技で監督ともどもハリウッドに認められて進出。1作目は前作のふくよかぶりまだ濃厚な頃の『エマ』(96)。ジェーン・オースティンの原作作品で、彼女は貴族の血を引きながら、私生児のため貧しい暮らしを余議されなくされている娘の役だった。

 農家の青年からプロポーズされていたのが、他人の仲を取り持つことが生き甲斐のエマ(グイネス・パルトロワ)にそそのかされて、玉のこしを狙いはじめる。最初に狙った牧師(アラン・カミング。忘れていたけれど、この映画のカミングスのおばかぶりも最高!)は、エマに惚れてあえなくアウト。今度はエマの想い人の叔父様に恋をしてしまう。

 損な役回りのはずだが、どこかちゃっかりぶりが目立つ感じだった。美しくお金持ちのグイネスに嫉妬もせず、そんな友だちを誇りに思っている性格の良さがうかがえるシーンも多数。最後には最初に結婚を申し込んでくれた青年と幸せになる。

 続く『ハッピィ・ブルー』(96)でもグイネスのサポート役。彼女の高校時代の友だちで、ずっと彼女に片思いしていた主人公のデヴィッド・シュワイマーとの仲を取り持ってあげようとする。実はトニの同棲中の恋人もグイネスを狙っているのだが…。スリムな女の子の引き立て役ばかりでは退屈だろうと思うが。

 本国オーストラリアに戻っての出演作は『ハーモニー』(96)。精神病院の患者たちをキャストにして、「コシ・ファン・トゥッテ」を上演しようとする若手演出家の物語。ここではすっかり痩せて、麻薬中毒患者で両親に無理矢理病院に入れられたパンク少女を演じていた。当然、症状も他の患者たちよりずっと軽く、主人公と恋に落ちそうになる。スリムになったせいか、目の迫力が増していて辛口な個性を発揮している。

 オペラが主題の物語なだけに、この作品では美声も披露。なかなか堂々とした歌いっぷり。ラストにかかるクラウデット・ハウスの『Don't dream it's over』のカバーがなかなかいいと思っていたら、彼女のボーカルによるものだった。

 デビッド・ボウイとイギー・ポップの「やおい話」として、真性グラム・ファンには評判が悪かった『ベルベット・ゴールド・マイン』(98)では、ジョナサン・リッチ・マイヤーズを磨いてスターにする、アメリカのクラブ・クイーン。自分の支配下においたつもりの彼に逃げられてしまう。

 最新作はピーター・グリーナウェイ監督の『8 2/1の女達』(99)。グリーナウェイらしい、自分の国の文化に傾倒する女たちを描いたシュールな物語だということだが、果たして吉と出るか凶と出るか。ブルース・ウィルス主演、『キャメロットガーデンの少女』(98)の美少女スター・ミーシャ・バートン共演の『The six sense』(99)のキャストにも名前を列ねている。

 その後は

 ・ご存じの通り、『シックス・センス』は大ヒット、ショーン・オスメント・ハウエル君の美しい(!)母親役を演じた彼女はアカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。

 ・サミュエル・L・ジャクソン主演の『シャフト』では、犯罪現場を目撃してしまったばかりに、連続殺人犯クリスチャン・ベールにつきまとわれるウェイトレスの役。

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