PARKER POSEY

働き者のパーティ・ガール

・最新ニュース

・モキュメーションの傑作『ドッグ・ショウ!』(2000)では、犬をショウに出品する弁護士夫婦。犬のお気に入りのおもちゃが見つからなくてヒステリーを起こすシーンがいかにも彼女らしい

・『Josie and the Pussycats』 (2001)では、レイチェル・リー達のバンドを売り出して、大儲けしようとする広告代理店の女社長。相変わらずのイライラした女っぷりと、ラストシーンがさいこう!

・その時共演したアラン・カミングに誘われたのか、彼とジェニファー・ジェイソン・リーの初監督作品『The Anniversary Party』(2001) に出演している

・最新作はキャメロン・ディアス主演の『The Sweetest Thing』(2001)。『クルーエル・インテンションズ』のロジャー・キンブル監督作で、イイ男をゲットするために口説き方を研究する女の子たちのコメディ。共演はセルマ・ブレア等

・パーカーという名前は、50年代のスーパー・モデル、スージー・パーカーにちなんでつけられたのだとか


 パーカー・ポージィのことはこのコーナーを作った当初から頭にあったのに、書くのが予想以上に遅れてしまった。

 理由は彼女があまりに働き者だからである。「ハリウッドで最も忙しい女優」「インディ映画クィーン」は、ここ5年で20本以上の映画に出演した。昨年のサンダンス映画祭では、実に4本が彼女の出演作だった。アメリカのケーブル・テレビではパーカー・ポージィ・マラソンというプログラムが組まれた。あんた働き過ぎだよである。出演作なんて網羅しきれないのである。

 そんな訳で90年代は「あの頃はいつも(映画に)パーカー・ポージィがいた」という時代になってしまった。インディ映画では主演、メジャー作品では主役を食う印象的な傍役という、理想的な「女ブシェーミ」。英国のサブカルチャー(この言葉大嫌い!)雑誌「Dazed and confused」がインディ映画特集を組む時に、ブシェーミやリリ・テイラーと並んで彼女を表紙にしたのもむべるかな。

 そう言えば彼女のごく初期の出演作の原題も『Dazed and confused』。リチャード・リンクレイターのアメ・グラ・タイプの青春群像劇の大傑作『バッド・チューニング』(93)のことである。76年版夏休みグラフィティのこの映画では、ジョーイ・ローレン・アダムスと共に新入生いじめにせいを出すチアリーダー。学校が終わって深夜の野外パーティで新入生の女の子に会っても、屈辱的な命令をけしかける。その命令が聞かれないとなると、「OK、楽しみな新学期になるわあ!」。怖くていやーな先輩。この時68年生まれのパーカー・ポージィ、実に25才だった(泣)。超遅咲き姫である。

 ま、アメリカの俳優が20代半ばで高校生役をやるのはよくあることである。でもパーカーの場合、はっきりと「老け顔」なのに、臆面なくティーンエイジャーをやってしまうのだからすごいものがある。藤真利子の若い時をちょっとブスにしたようなというか、ヤング・ジュディ・デイビスというか。ジュディ・デイビスと決定的に違うところは、パーカーにはまったく貫禄とか大人の色気とかがないところ。どっか軽くて頼りない。出演作があまりに多いのも、そこらへんに由来しているのではないか。「パーカー、役が一個あるんだけど、来週スケジュール空いてない?ギャラは安いけど頼むよー!」というインディ監督の声が聞こえるようである。

 それを証明するかのように、彼女のフィルモグラフィーには友達関係の作品が並ぶ。ジョーイ・ローレン・アダムスとは縁があってその後2本共演。一本は『コーンヘッズ』(93)、もう一本は俳優のエリック・ストルツ(彼もキャメロン・クロウと濃い友人でその関係の仕事が多い裏インディ王)が友達を集めて作った煮え切らない三角関係ラブストーリーの『スリープ・ウイズ・ミー』(94)。主人公の一人とセクシーなシーンもある「パーティ荒らし」の役だったが、さっさと脱いで彼の上にまたがって「やりたかやっていいけど本気にはならないでね」という乾いた女ぶりがあの目尻のしわの乾燥資質に合いすぎて‥!

 そのエリック・ストルツの関係で最近は『僕と彼女がいる場所』(95)にも出演。大人になれない男女の同級生ものには、『バッド・チューニング』の「同級生」マリサ・リビジーも出ていた。

 クレイグ・アラーキー監督の『ドゥーム・ジェネレーション』(95)にもちょこっと出演。友達監督で有名なのはハル・ハートリー。『愛・アマチュア』(94)で使ったのを筆頭に、『フラート』(95)のアメリカ編、最新作の『 Henry fool』(97)にも出演させている。

 リンクレイター監督の作品にも『subUbia』(97)に続けて出演。マリサ・リビジーの双子の弟ジョバンニ・リビジー主演の青春もので、パーカーはまたも若作りの役だった。この時29才(泣)。

 彼女を気に入っている監督で唯一メジャーなのは、ノーラ・エルフロン。スティーブ・マーチン主演の『ミックス・ナッツ〜イブに逢えたら』(94)では話は特に絡まずにローラー・ブレードで街を走っている変な女の子の役。『ユー・ガット・メイル』(98)ではセンスのいいスーツに細身の体を包んで編集者だった。

 スーツといえば、伝説的な画廊の女主人を演じた『バスキア』(96)では、モデルとなる本人から借りたシャネルを着ていた。80年代、ジャン・ミッシェル・バスキアを時代の寵児にするのに一役買って、落ち目になったら彼を切り捨てるクールな女の役で、この時は珍しく年相応。

 とはいえ、彼女はシャネルなんかいつまでも着ていちゃいけない。モードなお洋服は大好きだけど貧乏でなくては。パーティに夢中でその日暮らしで、いつまでも地に足がつかない生活をしてなくては。

 そんなパーカー・ポージィ像を観客に植えつけたのは、初の主演作『パーティ・ガール』(95)。楽しいことは大好きだけど、明日が見えなくてじたばたしているマリー。私が個人的に「専門学校生もの」と呼んでいるジャンルの佳作。(あとは『猫が行方不明』とか)マリーは「文化服装学院」って感じですね。Tシャツを首を通さないでカーディガンみたいに着るテクニックとか、三枚重ねて着てウェストで色のグラデーションを見せるとか、『キューティ』な着こなし満載。お金がなくて自分の服を古着屋に売りに行って、「ギャルソンの先シーズンのものなのに、何でこんなに安い値しか付かないのよ!」って切れるところなんかシャレにならない感じ。

 でも、本の分類法に目覚めて司書目指しちゃったり、イスラエル移民でインテリの売店の売り子に惚れちゃうあたり、人の良さがうかがえる。なんだか憎めなくてキュート。

 いかにもアメリカ・インディのロード・ムービー『デイトリッパー』(96)の、姉(『ワンダーランド駅で』のホープ・デイヴィス)は愛の危機を抱えて大変なのに、一緒に長距離ドライブにつき合って買い物に行くことしか考えていない一見アーパーな妹の役は、このマリー役をふまえてのことなんだろう。最後には傷ついた姉を優しく包む。

 「インディ映画の女王」なだけに、日本未公開作も数知れず。再び主役を演じた『House of yes』(97)ではキュートな殺人鬼(子役時代を演じるのはレイチェル・リー・クック!)、『Clockwathers』(97)は、彼女と並ぶ主演格がトニ・コレットとリサ・クードローというおいし過ぎるOLもの。両方観たい!

 そう言えば数年前のインタビューでは、「注目のニューカマーとか言われているけど、あたしは未だにものすごおく貧乏なのよ!」とぶうたれていたけど、今はどうなんだろう。いつまでもウェイトレスをしないで済む程度に貧乏でいて欲しい。

 さてインディ映画のクィーンは(なかば予想通り)現在脚本を執筆していて、映画化してくれるプロデューサーを物色中とか。共同執筆は「悪友」ジョーイ・ローレン・アダムス。楽しみじゃないですか。

その後は

 ・『ユー・ガット・メール』(98)ではトム・ハンクスの恋人役。ハンクス演じるジョー曰く「彼女はすごいよ、コーヒーまでいらだたせることが   出来る女性だ」。エレベーターに閉じこめられるシーンでは、他の登場人物たちが「ここを出られたらママと仲直りをする」「彼女にプロポーズする」と打ち明けるしんみりした場面で、「私は目のシワを取る手術をするわ」(泣)。ご都合主義的に消えてく損な役だったけど、ここのところだけ彼女らしい。

 ・『House of Yes』(98)は『ストーム』というタイトルで後にビデオ発売。ジャッキー・ケネディ・マニアで実の兄と近親相姦経験ありの精神異常者を演じてました。内容はかったるいサイコサスペンスだったけど、パーカーの少女時代を演じるレイチェル・リー・クックが怪しげで色っぽかったからまあ許す。

 ・ハル・ハートリーの『ヘンリー・フール』では、文学者を名乗る怪しげな居候のヘンリー・フールと結婚してしまう主人公の姉を好演。ヘンリーの誘いの手から一度逃げてじらしておいて、自分の寝室で煙草をプッカーとふかしながら彼が部屋に押し掛けるのを待っている、そのシークエンスの神経質そうな演技がいかにも彼女らしい。

 ・『スクリーム3』では、ウェウスボローの事件を基に作られた『スタブ3』という映画中映画で、ゲイル(コートニー・コックス)の役を演じている女優。ヒューイット(デヴィッド・アークウェット)の現在の彼女という設定で、コートニー・コックスをやきもきさせていた。おまけに自分の役に心酔していて、ゲイル本人に向かって、「ゲイルはそんなことでくじけるような女じゃないのよ!」とレクチャーを始める。なんというか、まあ、前作までのコートニー・コックスの「汚れ」の部分を一身に引き受けているような役でした。


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