SETH GREEN

ドクター・イーブルの息子

・最新ニュース

・現在、ユージン・レヴィと共演した『Greg the Bunny』(2001)がテレビで放映中とのこと

・今夏アメリカ公開のロマンティック・コメディ『America's Sweethearts(2001)に出演。ハリウッドいちのおしどり俳優夫婦であるキャサリン・ゼダ・ジョーンズとジョン・キューザックが、ジュリア・ロバーツの出現のために危うくなるという話。脚本はビリー・クリスタルで、世間体を保つために恋をもみ消そうとするマネージャーの役で出演。セスは反対にキューザックとロバーツを応援するクリスタルのアシスタントを演じている

・『Josie and the Pussycats 』(2001)では、オープニング・シーンにアイドル・グループ「ドゥジュー」の一員として出演。彼だけ背が低い(5フィート4)ので、高い帽子で他のメンバーとバランスをとっていたのがおかしかった

・ザッカー兄弟の片割れ、ジェリー・ザッカー監督作のラスベガスもの『Rat Race 』(2001)に出演。共演がブレッキン・メイヤー、エイミー・スマートといった『ロード・トリップ』組であることをみると、自身のプロダクションの制作なのかもしれない


 彼のことは、多くの人が『オースティン・パワーズ』(97)のスコット・イーブル、いかにもX-ジェネレイターなドクター・イーブルの息子として認識していると思う。ところが。

 彼にそんなせこい肩書きをつけてはいけないのだった。セス・グリーンはデビュー作がトニー・リチャードソンで、映画出演三作目にして、多くの俳優たちが憧れる「ウディ・アレン映画の主役」をゲットした偉大なアクターなのだから。知られざる華麗な子役時代の話である。

 最初の映画は『ホテル・ニュー・ハンプシャー』(84)。ロブ・ロウやジョディ・フォスターといった錚々たる面々に囲まれてのメイン・キャスト。主人公一家の末息子。途中で事故によって死んでしまうエッグを演じた。この時わずか8才。

 12才の時、ウディ・アレンの自伝的作品の『ラジオ・デイズ』(87)の主演に大抜擢される。第二次世界大戦下のユダヤ・ファミリーの物語で、セス・グリーンはラジオドラマに夢中な末っ子の役。この時の、赤毛にグリーン・アイの彼はノーマン・ロクウェルの絵から抜け出てきたように愛らしく、ウディ・アレンが自己を投影するのは図々しいのではないかと思うほど。

 しかし、ラジオドラマのヒーローグッズを手に入れるため、イスラエル建国のために学校で集めた募金をちょろまかすシーンは、今のセス・グリーンを彷彿とさせる。口をななめにひんまげて片方の眉を上げ、「俺にまかせろ」なんて友達に請け合うところの顔は、まったく変わっていない。

 大きな商売の話ばかりをしていた自分の父親が、実はタクシーの運転手だったことを知った時の一瞬の(驚きと悲しみと父親に対する愛がいりまじった)表情、伯母さんに連れられてラジオ・シティ・ミュージック・ホールに来た時の感嘆した顔、この映画のセス・グリーンはまさに小さな名優で、感動的なくらい上手い。 

 この頃から彼がいかに上手いアクターだったかは、パトリック・デンプシー主演の『キャント・バイ・ミー・ラブ』(87)を観ても分かる。スウェイジの小さな(小賢しい)弟の役だが、立派にアンサンブルに食い込んでいる。兄貴がチアリーダーのガールフレンド(アマンダ・ピーターソン)を「お金で買った」ことがバレて高校で村八分になると、ピーターソンのところに意見しにいったりして、割と泣かせる。こんな上手い子役というと、他に思いつくのは『恋する人魚たち』の時のクリスティーナ・リッチくらい。

 子役時代から比べると地味ながら、その後も『今夜はトーク・ハード』(90)の不良役や『ビヴァリー・ヒルズ高校生白書』『X-file』のゲスト出演等で、手堅くキャリアを固めてはいた。

 子役時代でもう一つ重要な作品を忘れていた。『花嫁はエイリアン』(88)。地球の調査に来たセクシーなエイリアン、キム・ベイシンガーが潜入した家庭にはローティーンの娘(アリソン・ハニンガン)がいた。セスはそのボーイフレンド役。きちんとタキシードでドレスアップしたハニンガンをエスコートする「小さな紳士」ぶりで、「大丈夫、8時までにはちゃんと娘さんをお帰します」なんて生意気を言って、父親(ダン・エイクロイド)をカリカリさせていた。

 ささやかに感動的なことに、この「小さな恋のメロディ」的カップルは約10年後、リユニオンする。ワーナー制作の人気テレビドラマ『バッフィ・ザ・ヴァンパイア・スレイヤー』(97〜)での事だ。

 アリソン・ハニンガンは、パワーブックを手放さないナードな女の子で、女子高生にしてヴァンパイア・ハンターであるヴァッフィ(サラ・ミッシェル・ゲラー)の親友。セスはそんなハニンガンに思いを寄せるオズという男の子の役だった。もちろんこんなドラマでは普通の役であるはずがなく、オズは後に狼少年であることが判明するのだが‥。

 共演が決まった時は二人とも、「キス・シーンとかあったら笑えるよなー」と言ってたらしいが、もうベッド・シーンも撮ってしまったというのだから!いやはや。ハニンガンもこのドラマでの好演によって、『アメリカン・パイ』で映画の方に本格的に復帰した。

 セスは実は映画版の方の『バッフィ・ザ・ヴァンパイア・キラー』(92)の方にも出演していたのだが、編集段階で出演シーンが没になったらしい。このドラマとの因縁を感じる。

 オズ役で人気を博した彼の「ジーク(お調子者)だけどスィート!」という評価が固まったのは、プロム・ムーヴィーの傑作『待ちきれなくて‥』(98)でのこと。名目上の主演はイーサン・エンブリーとジェニファー・ラブ・ヒューイットだったが、おいしかったのはセス・グリーン。

 白人のくせにヒップホップ・ファッションに身を包んだ小柄なバスケット部員で、童貞を捨てるためにプロムの夜に手当たり次第クラスメートに声をかける「お調子者」。こんな役なのに、この映画で最も切ないシークエンスを持っていってしまう!ずっと仲違いしていた幼なじみ(チャールズ・アンブローシア)とのラブシーンがそれ。

 日本公開されている最新作はご存じ『オースティン・パワーズ・デラックス』(99)の「ドクター・イーブルの息子」。今回は世界征服を企てる父親に胸を痛めて、「ジェリー・スプリンガー・ショウ」に出るシーンが面白かった。

 74年生まれだからもう25才のはずだが、小柄なせいか学生役が続く。『アイドル・ハンズ』(99)では、片手を殺人鬼の霊にのっとられた高校生、デボン・サワの親友役。一旦は彼の「片手」に殺されるらしいが、ゾンビとして蘇ってデボンを助ける役。『Stone brook』はカレッジを舞台にしたコン・ゲームもの。

 ライアン・フィリップス、ブレッキン・メイヤーとは親友で一緒に会社も設立したらしいが、その顔ぶれで経営は大丈夫なのか!? 

 子役からサバイブして、無事に大人になったセス・グリーン。ウディ・アレンはまた彼を起用しないのだろうか。

 その後は

『Knockaround Guys』ではデニス・ホッパーと初共演。最新作はいかにも!彼の出演作という感じのタイトル『Diary of a Mad Freshman』。

映画であまりに売れっ子になってしまったため、『バッフィ・ザ・バンパイヤ・スレイヤー』を降りるのでは?という噂が絶えないが、今シーズンはもう少し出演回数を増やすように調整中。外伝の『Angel』にも出演。

思い出したのだけれど、『ホテル・ニュー・ハンプシャー』の時の彼は、耳が悪いという設定でいつももどかしそうに怒鳴っていました。最初から名優。ジョディ・フォスターが監督するために作ったプロダクションの名前は、この時の彼の役名から取られています。ジョディもこの小さな名優に心を動かされた一人だったのでしょう。そうすると、彼女自身を描いたといわれている『リトル・マン・テイト』も実はセスがモデルなのではないかと推測可能です。

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