PHILIPE SEYMOUR HOFFMAN

変化自在のファットマン

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・キャメロン・クロウの『あの頃ペニー・レインと』(2000)の彼は泣かせた!主人公の少年の憧れの音楽ジャーナリスト、レスター・バンクス。電話で「憧れと罪悪感が人をアーティストにするんだ」なんてところが!

・まだタイトルが決まっていない、アダム・サンドラー主演、エミリー・ワトソン・ヒロインのポール・トーマス・アンダーソン監督の新作にも、アンダーソン常連組のルイス・ガスマンと共に出演

・『ハイ・フィデリティ』での好演が記憶に新しい、俳優トッド・ルイーゾの監督作『Love Liza』(2001)に出演

・サスペンス・ホラーの『Owning Mahowny』(2002)ではタイトル・ロール。ミニー・ドライバーを怖がらせる。


 今やハリウッドで「あのデブ」といえば彼、フィリップ・シーモア・ホフマンのことである。P.T.アンダーソンの『ブギーナイツ』(1998)で、マーク・ウォルヴァーグ演じるダーク・ディグラーに純情を捧げるゲイのポルノ映画クルーを演じてから、あらゆる映画で引っ張りだこだ。淀川長治は生きていたらこの映画の彼を絶賛しただろう。(何せ体型が彼好みだし)ダーク・ディグラーが好きなのに言い出せず、彼が堕ちていってもどこまでも彼の後をついていくいじらしいホモ。キスを迫って拒絶された後も、「この車が好きかい?‥よかった。君が嫌いだって言ったら明日返品するつもりだったんだ」なんて泣かせる。

 1965年生まれ。高校時代はレスリング部の有力選手だったが途中で演劇に目覚め、高校演劇で『マッシュ』や『セールスマンの死』で主演をつとめた後、ニューヨーク大学の演劇科に進学した。映画初出演作の『セント・オブ・ウーマン』(1992)で印象を残してからのキャリアは順調そのものだ。

 メグ・ライアンとアンディ・ガルシア主演の『男が女を愛する時』(1994)では、メグ・ライアンが入院するアルコール中毒のリハビリ・センターの患者の役で、ワンシーンだけ出演。繊細で優しい男の役で、本国ではこの映画で彼に注目した人も多かったらしい。

 こうしてみると「気の優しいデブ」というタイプの役が多いようにみえるが、芸の幅が広いのが彼の面白いところだ。ヤン・デ・ボン監督の竜巻アクション『ツイスター』(1996)では、狂信的な竜巻マニアの研究者の役。熱に浮かされたようにクレイジーに語り、竜巻が近づいてくると機材を積んだトレイラーテレビからディープ・パープルのライブ映像を流して、「Buuurn!」を謳いながら突進していく。

 かと思うと、コーエン兄弟の『ビック・リボウスキ』(1998)では、お金持ちの方のリボウスキーの秘書を「上品に」演じて、慇懃な笑顔を浮かべる。もちろん「この作為的な表情の裏ではいやーなことを考えているんですよ」と相手に知らせる「無礼な」表情である。

 『ワンダーランド駅で』(1998)では、ホープ・デイヴィスをふる政治活動家の彼氏。インディアン保護や環境問題のデモには熱心だが、生活力のない最低男の役で、おそらくは看護婦をしているデイヴィスに食べさせてもらってたくせに、別れる理由をいくつも並べ立てたビデオを作って、「君は理解がなくて頑固だ」と言いながら布団やビデオデッキを持っていって家を出てしまう。

 アンダーソン映画でずっと共演しているジョン・C・ライリーとはもともと親友で、ブロードウェイの舞台でも共演している。おそらくはライリーの紹介でアンダーソンに会ったのだろう。彼のデビュー作『ハード・エイト』(1996)からレギュラーのように出演が続き、今やジュリアン・ムーアやフィリップ・ベイカー・ホール等を含めて「アンダーソン組」と呼べるかもしれない。

 アンダーソンの最新作『マグノリア』(1999)では、悩みを抱えるキャスト陣の中で、唯一人々を受け止める側にいる役を好演した。瀕死の患者(ジェイソン・ロバーツ)のために彼の息子を捜し出して引き合わせる献身的な看護夫で、彼ロバーツが今や吸うことが出来ない煙草を持つ仕草をすると、その架空の煙草に火をつけてやるシーンは泣かせた。ジェイソン・ロバーツと息子のトム・クルーズとの再会シーンで、画面の隅でもらい泣きしているところなんかが、彼のうまさである。

 公開が控えている作品としては、『リプリー』(1999)がある。『太陽がいっぱい』のリメイクで、ジュード・ロウと絡むシーンがある小さな役だそうだが、お見逃しのないよう。『ウェルカム・ドール・ハウス』の監督の最新作『Happiness』(1999)では、隣の部屋に住んでいる女の子に欲情して、マスターベーションをしては壁に精液をかけるショッキングな役を演じている。

 他に『パッチ・アダムス』(1998)のロビン・ウィリアムズの同級生等。デビット・マメットの『State and main』(2000)では、同じくアンダーソン組のウィリアム・H・メイシーとまたも共演となる。


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