Our Dairy Cup 04/02/2000 Invitation
あなたがもし、
ラブストーリーはハッピーエンドで終わるべきだと信じるなら
女優が歌う下手くそな歌が好きなら
ラジオからふいに流れてきた曲に心臓をつかまれて立ちつくしたことがあるなら
映画に出てきたブルーの水着の少女に恋をしたことがあるのなら
美術館には一人で行くのが好きなら
古い雑誌から気に入ったグラビアや広告ページを切り抜いて取っておいたことがあるなら
シャンペンを注ぐ音のようにかすかなヴィブラフォンの響きに耳を傾けるなら
短編集が好きで、90分以上ある映画は観るのを躊躇するほど飽きっぽいなら
エリオット・グールドをスタイリッシュだと思うなら
冬の寒い日にココアにバター、ホットミルクにラムを落として飲むのが好きなら
もっと寒い日にはレモン水と砂糖でわったワインを温めて飲むのが好きなら
喫茶店で文庫本をまるまる一冊読み潰してしまうタイプなら
プロム・パーティが出てくるアメリカのティーン・ムーヴィが好きなら
眠りに落ちる直前まで小さな音で音楽を流しておきたいタイプなら
ウエハースや湯葉といったはかない食べ物が好物なら
みんなに内緒にしてあるとびきりの自転車コースがあるなら
感性によって選択された知性、といったものを信じるなら
旅先でパスポートや切符が見つからない時に『いつも二人で』を思い出すなら
回転ドアを見るたび『ピンク・パンサー2』を、カーラジオでクイズを聞くたび『抱きしめたい』を思い出すなら
午前中の図書館の、水の中のような静けさが好きなら
朝起きて朝ご飯の代わりに甘いものが食べたいと思うなら
お気に入りの傍役俳優がいるのなら
「水に描く」という単語が好きなら
おしゃれリーダーというと、幸田文や向田邦子や白州正子を思い浮かべるなら
バスルームに雑誌とポータブルラジオを持ち込んで長風呂する習慣があるなら
夏休みにはブラッドベリ、秋の公園ではクリフォード・D・シマック、雪が降る日にはジャック・フィニィを読みたいと思うなら
古本屋の映画パンフレット・コーナーにときめくなら
2分半かそこらであっけなく終わるポップ・ミュージックが好きなら
映画のヒロインと同じ型の服を探してブティックや古着屋をさまよったことがあるのなら
小説に出てきた料理のレシピを参考にキッチンで何か作ったことがあるなら
雨の日にボサノヴァを聴くのが趣味なら
五月になると生きる歓びを感じるなら
そして、人生にはティー・ブレイクと推理小説が必要だと思うなら。
ほんの少しの間、くだらないお喋りに付き合って欲しいと思う。覚えておいても何の得にもならない、「ささやかだけど役に立たないこと」ばかりのコンテンツ。それはマニア受けするには少しミーハーが過ぎて、誰もが口ずさめるヒット曲のように気安く、目立たない同級生みたいにすぐ忘れられてしまう。たとえば、クイック・シルバー・メッセンジャー・サーヴィスが出ていた映画を知っている? いぶしたベーコンによく似た味がするお茶のことは?フォー・フレッシュ・メンがドナルド・フェイゲンをカバーしたアルバムは聴いてみたい? それともそんなことはどうだっていいいのかな?
ふう。ところで、お茶かコーヒーはもう一杯いかが?
would you like more cup of Tea or Coffee?