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アンナ・カリーナがやってくる〜女優が歌うレコード

 皆さん、アンナ・カリーナのファースト・アルバム(笑)、『恋物語』はもう購入されました? というか、購入するんですか『恋物語』。そして行かれるんですか、カトリーヌがバックを務める天王洲アイルのコンサート。でも皆さんが本当にお好きなカリーナ、ゴダールによってイメージ操作されていた女の子はもう映画の中にしかいないんですよ。なんて意地悪く。もしかして「いい女」になっているのかも知れないけれど、それはまた別の人生。

でも私も、『気狂いピエロ』で彼女が歌う、決して巧くはない「いつまでも愛するとは言わなかった」に痺れたタチではあります。女優の歌う下手くそな歌が大好き。お気に入りの女優レコードを集めてみました。

 
 Disque d'Or/Marie Laforet (Columbia)


 マリー・ラフォレのこのベスト盤は、私の実家のスタンダードでした。ですから私は、女優としてよりも歌手としての彼女を先に知っていたわけです。「赤と青のブルース」の二曲は収められていませんが、「マンチェスターとリバプール」をはじめ、本国で多くのヒット曲を持つ彼女の、あのちょっと独特のビブラートがかかる歌声は充分楽しめる内容です。

 ラーガな「黒く塗れ」(少し笑えます)、Hの音を落としっぱなしで「アウ・メニー・タイムス〜」と歌う「風に吹かれて」等のカバー曲も多彩です。彼女は結構フォーク声だと思います。

 彼女のレコードは見かけたらなるだけ買うようにしているのですが、今探しているのは、「スティング」のテーマに歌詞をつけて歌っているやつ。八十年代半ばくらいに出したアルバムだったと思いますが、引っ越しの時にどこかにいっちゃったんですよねー。


 Cybill does it ‥for Cole Poter/Cybill Sheperd (MCA)


 彼女というと、スタン・ゲッツをバックに迎えた『mad about the boys』が有名ですが、コール・ポーター作品集のこちらは恐らくは歌手としてのデビュー作ではないでしょうか。

 プロデューサーが当時の恋人だった映画監督のピーター・ボグダノウィッチで、おいおいと言いたくはなりますが、『おかしなおかしな大追跡』のオープニングに「You're the top」なんか使っているところをみると、彼は本当にコール・ポーターが好きなんでしょうね。

 彼女の歌は軽やかな歌唱とは到底いえませんが、「社交界のパーティでピアノをバックに皆様にお披露目する令嬢」といった感があって、つんとお澄ましなところ、ちょっと固いところが逆にこの盤の魅力にはなっています。

 Romance is on the rise/Genevieve Waite (Paramour)


 お次も恋人がプロデューサー。元「ママス&パパス」のジョン・フィリップスが『ジョアンナ』の主演女優、ジュヌビエーヌ・ウェイトに歌わせたお遊びレコード。

 映画での「亜土ちゃん喋り」から発する期待に違わぬ、ベティ・ブー歌唱を余すところなく、下品なくらい陽気に聞かせてくれます。内容はオールド・タイミー。「Biting my nail」は余裕でクラブ使用可です。

 でもこのレコードの一番の魅力は何といってもリチャード・アヴェドンによるキュートなジャケット写真でしょう。聞きたいというよりも、飾っておきたいレコードの最右翼。


 Funny face O.S.T (MGM Recoreds)


 おっと、こちらもジャケットはアヴェドンですね。

 名作『マイ・フェア・レディ』(セシル・ビートン!私が二番目に好きなオードリィ映画)でもオードリィは一応歌ってはいるのですが、メインの歌の大部分は吹き替え。そんな訳で決して上手ではないけれどキュートでおきゃんな彼女の歌声が堪能出来るのは、この『パリの恋人』(三番目に好きなオードリィ映画)のサントラということになります。

 ガーシュインの胸躍るメロディに、洒脱とはこの事よというフレッド・アステアの歌声がのると、それだけで満足はしちゃうんですけれど。ああ、ただえんえんと階段を降りていくショットが何と様になったことか!

 オードリィの歌のハイライトは「How to be lovely」。きちんとハモらないでごまかしているところなんかが、逆にチャーミングなんですからね!


 Sabrina/高岡早紀 (Victor)


 とはいえ、私が一押しする「女優が歌うレコード」といえばコレです。エロなジャケの完成度の高さを見よ。

 プロデューサーがゲンズブール・マニアということで、まんま「ジュテーム・モア・ノン・プリュ」な「太陽は一人ぼっち」という曲があったり、「パパに似ているから困らせてみただけよ」な小悪魔ロリータな歌があったり。加藤和彦をはじめとする製作陣のおじ様達の「かわいいよねえ」という舌なめずりが聞こえてきそう。

 アイドルのレコードにおけるある種の高み。そういえば彼女は、「和製ジェーン・バーキン」だった時代の小林麻美の名曲、「哀しみのスパイ」もカバーしています。

ところで現在、アンナ・カリーナはパリでカトリーヌと同棲中という噂です。それってミルクマン斉藤と加賀まり子が付き合うようなものかしら?(違う、多分)

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