80s/New Wave


SHOWPEOPLE / MARI WILSON

 80年代のブリル・ビルディング的存在、コンパクト・オーガニゼーション。

 誰かがバカラックをやっていなくちゃそりゃ嘘で、ビーハイヴの髪型も60sガールな看板歌姫が「ARE YOU THERE」をやっています。

 シンセドラムの音には好き嫌いが分かれるところですが、今となってはこのキラキラ感が新鮮ですらあります。トニー・マンスフィールド・マジック!カフェバー向き。





DON'T LEAVE ME BEHIND/Everything but the girl

 エブリシング・バット・ザ・ガールは、この12インチのB面で「Alfie 」とジミー・ウェブの「Where's playground,Susie」(こちらのボーカルはベン・ワット)をカバーするという、ポップス・ファンの胸をかきむしるようなことをやっています。バカラックとジミー・ウェブの相性の良さは、アン・マレーとグレン・キャンベルの「恋はフェニックス/小さな願い」を交互にやるカバーで証明されています。

 ベン・ワットがオーケストレーションに凝っていた頃なので、アレンジがやや教科書通りなのが惜しまれます。どうせなら、「Night and day 」みたいにアコースティックでやればよかったのに。しかし、トレーシー・ソーンのあの「低温な声」は、ソフトにメロウに歌う数多い女性シンガーの「Alfie 」カバーの中でも際立っています。

 余談ですが、ジャケットは彼らのレコードの中でも最高の部類に入るのでは。



NAKED EYES/NAKED EYES

 マリ・ウィルソンの素晴らしい「Are you there 」で、打ち込みキラキラサウンドとバカラックの意外な相性の良さを知らしめたトニー・マンスフィールドの仕事。

 しかし、イントロの有名なホーンフレーズのところに、割れた鐘の音のようなシンセの音で別のフレーズをぶち込み、サビをフェイクさせて歌うこのニューウェイヴ・バージョンはいろんな意味ですごい(笑)。下手すると、これが「リアルタイムで聞くバカラック初体験」だった人もかなり多いのでは?

 それにしても、80年代なのに邦題はまだ「恋のウェイトリフティング」なんですね。






WELCOME TO PLEASUREDOME/Frankiegoes to Hollywood (ZTT)

 トレヴァー・ホーンのおもちゃ的存在だったバンドの、今となっては、郷愁さえ感じるヒット曲が並ぶファースト。二枚組というのが、当時の彼らの人気と勢いを物語るよう。

 このアルバムに「サン・ホセ」のカバーが収められているのは、あんまり有名じゃない話。アコギとボーカルが左スピーカーから、シンセの音とドラムが右スピーカーから分かれて聞こえるという疑似ステレオのバージョンになっています。思いもかけず味がある。

 このバージョンがなかったら、後のワイルド・バンチの「恋の面影」もなかった、というのは言い過ぎだけど、60〜90年代にかけて、バカラックのクラシクスが決しておっこちることなく手を換え品を換えカバーされ続ける、イギリスのミュージックシーンの懐の深さは確実に物語っているのではないでしょうか。








BABY IT'S YOU/Nick Lowe&Elvis Costello

 98年、バカラックと組んで素晴らしいアルバムを出したエルビス・コステロとニック・ロウがデュエットしている「Baby it's you 」。イギリス人だけどアメリカ音楽が好き好き、なパブ・ロックの連中の音楽的志向を端的に表す一枚と言えるんじゃないでしょうか。(もう一枚はやはりニック・ロウとデイヴ・エドマンズがデュエットしているエヴァリー・ブラザーズ・カバーの7インチね)

 何せ、二人の歌唱はかなりシュレルスのオリジナルに近いんです。ビートルズ・バージョンの方の影響がまったく見られないのは、面白い話です。意識的に避けているんでしょうけど。二人がささやき声で乙女に「Cheat,cheat 」とコーラスするところは気持ち悪いような、感動的であるような。

 コステロはバカラックを歌う時は声を抑えざるをえないので、いつもの泣き節が苦手な人もこれはオッケーなはずです。






Word of Mouth/Toni Basil(Virgin Record) NEW!

 祝・『チアーズ!』公開。この映画のラストにも使われていたのが、永遠のチアリーダー・アンセムであるところのはチン&チャップマンの「ミッキー」。歌うトニ・バジルもチアリーダー出身です。歌手で元チアというと、エミリオ・エステベスの奥さんだったこともあったポーラ・アブトゥールくらいしかいないから貴重です。

 「ミッキー」のヒットを受けて作られたこのファースト・アルバムでは、「マイ・リトル・レッド・ブック」を、「ミッキー」と同じプロダクションによるバックでカバー。当然キャッチーなものを期待するはずですが、これが非常にゆるいダルな出来で、トニ・バジルの歌唱もどこかエキセントリックでうらみ節。キーボードはおばけ屋敷のテーマのようなフレーズを入れるし、回転数を倍に上げても不穏さが消せない暗黒なバージョンになっています。面白いから好きですけれどね。


BACK TO MR.ROMANTIC!