3分でわかるデニス・ホッパー by 高木壮太

デニス・ホッパー、もうすぐ死んで、追悼特集とかで、やや盛り
上がりますから、いまのうちにサクっと予習しときましょう

デニス・ホッパーはカンサスの大平原の農場で生まれました、
家族でサンディエゴに引越しして地元の劇団に入って真面目に演劇
していましたが、幼少の頃からシンナーを吸うのが趣味だったようです。

とあるTVドラマのオーディションで、てんかんの少年の演技を
完璧にやって大抜擢されてハリウッドの俳優エージェントにスカウト
されます。

大スター街道バクシン中の故ジェームス・ディーンの弟分として、
常に行動をともにします。石原裕次郎と川地民夫のような
関係です。当時5万人くらいいたマーロン・ブランドの八十二番煎じ
くらいの若手スターとしてめきめき頭角をあらわして、ウルスラ・アン
ドリュースとかナタリー・ウッドとか人気女優とセックスしまくります。

突然ジェームス・ディーンがポルシェで200Kmで自爆して死にます。
以降ホッパーはジェームス・ディーン・コンプレックスが解けること
なく生涯を送ります。

ド派手なハリウッドファミリーの奥さんを貰い、ジャズや
モダンアートやドラッグやハードゲイの世界に耽溺します。
このころなかなかすごいセンスの写真も撮っていまして
写真集が出ていますのでおすすめです

ラリり仲間のJ・ニコルソンやP・フォンダとフィル・スペクターと
『イージー・ライダー』というバイク西部劇を製作して大当たり、
一躍時代の寵児となります。ちなみに『イージー・ライダー』の
主役二人はどちらもジェームス・ディーンが演じることを想定して
書いたそうです

ママス・アンド・パパスのM・フィリップスと結婚しますが、
ドラッグ癖があまりにも度を過ぎているので新婚旅行の最中に
新婦は逃げ出したりしますが、ホッパーは会心の次回作
『ザ・ラスト・ムービー』の製作に乗り出します。

グルーピー軍団数十人を引き連れて南米ペルーで撮影を
敢行します、撮影中幻覚状態で廃墟の教会にいると、とつぜん
ジェームス・ディーンの形見の指輪が粉々に砕け散ったので
「こりゃいかん」と思ったそうですが
あまりのドラッグ乱痴気騒ぎにペルー陸軍が出動
して、強制国外追放になります。

その後1年半、幻覚状態と乱交パーティに明け暮れながら
『ザ・ラスト・ムービー』を完成させます。超傑作なのですが、あまりにも
支離滅裂で日曜映画劇場で放映しても淀川長治がデニスホッパーの
横顔と二の腕を褒めちぎることしかできないような映画なので
半お蔵入りとなります。

失意のホッパーはその後、ますますブランデー・アレクサンダーと
LSDとコカインに耽溺し、自分にしか見えない敵や宇宙人に
むかって毎日発砲するという人になったので、物理的にだれも
近寄れなくなりました。

砂漠の真ん中の砦のようなところにスタントマンの子分どもと
グルーピーに囲まれ70年代と80年代を過ごします。
ときどき『地獄の黙示録』のような映画にちょこっと出演しますが
まあ現実も役柄どおりの錯乱状態だったようです。

しかし映画を作る情熱は失せることなく、カナダ産の低予算映画
『アウト・オブ・ブルー』を監督の座を強奪して完成させます。
ハーモニー・コリン映画にも出てるリンダ・マンツが
不思議エルビス非行少女、ムショ帰りの父親がホッパー、最後は
近親相姦で全員爆発して炎に包まれて死ぬ。という楽しい映画で、
当時はショーン・ペンしか褒めませんでしたが、
『ザ・ラスト・ムービー』と同じく今ではカルトムービーです。

「おれの悪運のすべてはコカインのせいだ!」と悟ったホッパーは
コカインをやめます。当時はコカインを注射していたそうです。
しかし、ジェームス・ディーンの幻覚と乱交パーティはますますエスカレート、
ついに、メキシコで撮影中に宇宙人に連れ去られると思った
ホッパーはすっぱだかで逃走しますが追っ手に捕まり、
気が付くとブタ箱で血だらけで瀕死の状態で横たわっているところを
撮影クルーに発見されます。監督もよくもまあそんな俳優と契約
したものです。

「コカインのせいではなかった、すべては酒のせいだった」
と悟ったホッパーは突然クリーンになります。実質的にはホッパーは
このとき死にました、その後、カラーズやらアヒルちゃんやら
クッパ大王やらスピードとかバスキアとかに出てますが、
まあ抜け殻です。

カンサスの大平原で産まれ育った無垢なカウボーイ少年が
ハリウッドバビロンの中で崩壊し、金とパワーがすべてを律する
資本主義社会のアイコンとして周囲と同化結晶化していくという悲劇。
「アメリカの喪失の物語」のメタファとしての神話的人物。
それがデニス・ホッパーという「最後のカウボーイ俳優」でした




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夜中に古い白黒のトワイライトゾーンを見ていたら、
若くてハンサムなデニス・ホッパーが「ヒトラーの霊が取り付いて
一人ナチス党を結成する男」を迫真の演技で演じていました。
ハマってて、なおかつこれがかっこいいんですなあ