FAX NEWS Vol-34 1998.9.7



今月のTOPIC やるリスク、やらないリスク
「結局、相続対策などせずに、じっとしている方が利口だ」と耳にすることがあります。 バブル全盛の時代に『借入』を主目的とした相続対策が散々実行されました。 結果、当初考えていた効果を発揮せず、逆に相続発生時までの経営や家計を圧迫し、苦境に立ってしまったと いう事例があることは事実です。 しかし、相続対策は全て無益でしようか? 日本の税制は、結果平等主義と言われています。 簡単に言えば「持つ人からたくさん徴収する」という発想です。 相続税に関して言えば、年間死亡者数の約5%の方が毎年納税対象になっています。 この傾向は当面変わらないでしょう。何故ならば、相続税は景気や収入には直接関わらぬ、既に存在する 財産に対して課税されるもので、国庫にとっては極めて安定した収入源であるからです。 さて、端的に言えば地主さんは持って生まれた借金(相続税)があると言えます。 何も対策を講じないと間違いなく財産は減ります。 一相続について、課税遺産総額が1億円から2億円なら、およそ全財産の4割強、2億円から4億円なら5割強、4億円以上となれば全財産の実に6割以上が相続税として徴収されることはご存じの通りです。 さらに相続リスクの深刻な点は、失う量ではなく、質の問題なのです。 全財産を一個の饅頭とすれば、相続で失う部分は、そうアンコの部分(一番おいしい所)です。 相続税は10ヶ月以内に現金納付という基本を忘れてはなりません。 物納、延納などの手段はあるにせよ、当然それらに対しては様々な制約やデメリットが用意されています。 「やらないリスク」では、たった一回の相続でも、大切な財産の内、優良資産(アンコの部分)をすっかり失う危険性を覚悟しなければなりません。 一方、相続対策を行うにしても「やるリスク」と比較した時、割合自己制御し易いリスクであると言えます。 リスク制御の考え方としては、例えば土地活用で言えば「本当に有効活用となり得るか」という点でしょう。 自信にとって不要の土地は、他人にとっても不要の土地であることがほとんどです。 安易に空地に賃貸アパートを建てて、評価減と家賃収入を図る。といったこちら本意の発想では経営は困難です。 アパート経営においても、マーケティングを重視し、あくまでもユーザー本意の考えを持つことが、自信の相続対策並びに経営にとって最も重要だという発想が、これからは益々必要です。 いずれにしても、これからの相続対策は「安心」「長続き」をキーワードとして、全体を見通した対策を講じることが大切と言えましょう。
文責:ファイナンシャルプランナー 古谷 肇

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