謎の名前

それは会社の新人研修で、製品の検査職場に行った時の事でした。
研修と言うからには当然、仕事らしき事をさせられます。その時振られた仕事は、製品の大きさが設計図通りであるかどうか、という事をチェックするというものでした。ノギス(0.1mm単位で大きさをばっちり計れる定規)片手に設計図を広げた時、視界の中にどこかで見たような文字が飛び込んで来ました。
設計図には、製品の大きさ・形状を描く場所の他に製品を構成する部品のリスト・材質を記述する欄が存在します(普通、設計図の上の方)。問題の文字列はそこに書かれていました。

設計図
謎の文字列 (注:上は研修の時に見たものとは違う図面の物です)

なんじゃこりゃぁぁっ!! (C)松田優作

設計図に「ナコ」。違和感大爆発の状況に半分めまいを起こしながらも、近くにいた研修の担当者におずおずと訪ねました。

私  「あ、あの〜…」
担当者「ん、チェック終わったの?」
私  「いえ、ちょっと質問なんですが」
担当者「何?」
私  「こ、この『ナコ』ってのは一体…」
担当者「ああ、なべ小ねじだよ。」
私  「は?」

なべ小ねじ
なべ小ねじ(座金付:左がM3×16、右がM5×10)

担当者「なべ小ねじ。略して『ナコ』。」
私  「………」

何とも紛らわしい略し方が有ったものです。普通、設計図中の文字は、英数字かカタカナを使用します(最近はCADの発達でひらがなも使われるようになってきました)ので、紛らわしさに拍車がかかったものと思われます。

このなべ小ねじは非常によく使われる部品の一つです。よって設計図、特に組立図には必ずと言っていいほど出て来ます。
という訳で、今日も今日とで社内を飛び交う設計図には「ナコ」の文字が踊っているのです。






余談

多分、頭の形状が鍋を伏せたような形をしているから付いたのであろう名称「なべ小ねじ」。これは決してローカルな呼び方では無いようです(製図をやったことがないので詳しいことは分かりませんが)。何故ならJIS(日本工業規格)にその名前が出てくるからです。

JISハンドブック
JISハンドブックより

ということは、日本中の設計図に「ナコ」の文字があるのでしょうか(^_^;。面白いような怖いような…


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Last Modefied: '97/10/09