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タイトル: ティーンズノベル・フェスティバル第ゼロ回
日付: 2001年 10月 18日 20:29

◆まえがき

10月13日、第ゼロ回が開催された「ティーンズノベル・フェスティバル(以下"TNF")」。
すこし出だしでは厳しいことを書かざるを得ませんが、エンディング時には個人的にとても楽しくて、ためになったイベントだったことを前もって書いておきます。

またイベントの感想文の域を出ず、会場の事はともかく調べ方が足りないなどあって、もし事実関係に間違いがありましたらお知らせください。調査の上、修正いたします。

ティーンズノベル・フェスティバルの公式サイトはこちら
作家のご氏名につけたリンクは、同TNFサイトで紹介されているもののみです。
参加された作家や作品などについては同サイトを参照してください。
文章中で取り上げさせていただいた以外にも、作家、イラストレーター、編集者の方々が来場していて、無償でカンファレンスなどに登場されていました。

◆ティーンズノベルって?

「ティーンズノベル」とは、文字通り中学生から二十歳前後までを対象とし、イラストと組み合わせてビジュアル的な要素を取り入れメディアミックスへの展開も多いライトノベルを主に指します。
具体的に代表的なレーベルとしてあげると、ソノラマ文庫、富士見ファンタジア文庫、ファミ通文庫、そして角川スニーカー文庫。女子向けではコバルト文庫、小学館スーパーダッシュ文庫などです。
さらに最近は、新書サイズでも同様の層を対象としたレーベルが発刊されていたりします。

◆みどころ

そのような読み物の祭典がTNFで、読者と作り手側の交流を想定して予約参加者には特製名刺を作るというサービスがありました。
ゲストもそれらのレーベルの巨匠や賞の受賞者、イラストレーターなど贅沢なものです。

目玉は豪華ゲストのお話を直接聞くことができるカンファレンスです。メインは「イラストレーターというお仕事」「作家というお仕事」「ルーツを探れ!」の3種は男子向け女子向けにそれぞれで2部、その合間にサイン会などがあったり、ティールームでのフリーディスカッションなどが出来たようです。

◆午前中

開会式である「オープニング」で、開催関係者は青ざめたのではないでしょうか。
ひいきめに見ても少ない人数でしたし、年齢層がどうみてもティーンじゃないのです。
実際には多くが業界関係者で、他の作家だったり出版社の編集者だったりしたようです。
これは私としては開催日の選定が無用心だったのではないかと思っていますが、同日に幕張メッセでは「東京ゲームショー」が開催されてしましたし、公立の中学校、高校は第2土曜日で登校日だったと思われます。
書籍などでの告知は費用の面で問題があるとしても、公式のホームページがあるにしてはインターネットでの告知の量はお世辞にも多かったとは言えないと思われました。
あるいは「第ゼロ回」ということで、控えめだったのかもしれませんが。

そんな中で私が入ったのは「これが書きたい!」というカンファレンス。三人の作家に「日本で1番ティーンズノベルに詳しい」書評家(コラムニストというべきでしょうか?)が進行を担当するものです。
作家の方は秋津 透さん(サイト)、一条 理希さん(サイト)、伊東 京一さんの御三方。進行の書評家が三村 美衣さん。
3人の作家の来歴が各々ご当人から語られたあと、このジャンルがどこから来て、次のように続いていくのか、最近の書き手志望の人たちや読み手についてなど、聞き手側だけでなく語り手側も楽しんで話された話題はどれも興味深く拝聴しました。

そして時間がオーバーしつつあったのですが、お約束の来場者側の質問の時間。
早速、手を上げて一番乗りで質問しました。話の中で、秋津先生が「賞の審査などをしていて、過去に見たものを繰り返しているだけに近い作品がみかけられる。自分では過去に同じようなものがあれば避けるが、そこに世代の違いを感じる。」という話に対しての質問でした。
それは「マーケットとして第二次ベビーブームを対象として、テーマは新しいが『エヴァ』のような過去のコラージュが多く見えたり、リニューアルされるものが供給されていることに対してお考えがあったら聴きたい。」というものです。
もうすこし付け加えると、「それらが供給される事で、過去の作品を"つかう"ことを推奨していることになっていると感じるのですが」ということなのですけど、まあこれは後の祭り。
ですが、会場ではそれぞれ納得のいくお話を聴けました。
秋津先生曰く「受けて側がどう消化しているかということで、自分の場合はそうではないし、そうする人はそういう受け止め方をしているということ。」
一条先生は「受け取って自分なりのフィルターがかかるので、実際にはまるきり同じものでは、どちらかというとなくなってしまう。」
伊東先生は「自分なりには、(受賞作を)書いている時点で過去のある作品に似ていると自分でも思って、ひとひねりしたおかげで受賞が出来る作品が書けた。」
質問をした私としては、やはりイコールなままではなくなにか工夫は必要なのだな、と思いました。
もとより良し悪しではなく、作家としてどう思うかを質問させてもらったので、私としては十分なお答えでした。

◆午後ひとつめ

午後の前半に選んだのは「作家というお仕事!」。秋津 透さんと中里 融司さん(サイト)に田中芳樹事務所の方が進行。
お2人の来歴に、担当編集者との関係や生活のパターン、これから何を書いていきたいか、女性読者と男性読者の作品への愛着の持ち方の違い、キャラを作って言うべき決め台詞ができれば作品になる、などのお話が続きました。

ここでも一番ではなかったものの、やはり質問。
「ティーンズノベルはイラストと組み合わされて、ビジュアルも大きな要素を受け持つジャンルだが、その書き手になろうとする側は賞などに応募する際には選ぶことはできない。それに関してアドバイスかなどがないでしょうか?」
秋津先生は角川スニーカー発刊の先鋒として私もシリーズ通して追いかけた「魔獣戦士ルナ・ヴァルガー」が、漫画家あろひろし先生のイラストとの組み合わせでそれがデビュー作だったとのこともあり、ゼヒお尋ねしたい質問だったです。
結論的にはお2人とも「文章でガッチリ描くしかない。だが自分ではどんなイラストがつくのか楽しみにしている。」ということでした。
細かくは、秋津先生は最初のルナ・ヴァルガーでは出版以前にあろひろしイラストがつくことがわかっていたため、2作目以降、書きあがってからイラストが決定するというプロセスにしばらく困惑していたそうです。
一方の中里先生は漫画原作から始まったため、もとから自分の話をどのようなキャラクターが演じるのかが楽しみだったそうです。

◆午後ふたつめ

午後の後半には「ルーツを探れ!」という、作家が創作をする原点を、というカンファレンス。
こちらはバリバリに女性向けティーンズノベル作家お二人、ホワイトハート文庫でご活躍の宮乃崎 桜子さんとコバルト文庫でご活躍の金蓮花さん(サイト)でナビゲーションは三村 美衣さん。
私にとって問題だったのは、お2人の作品を読んだことがないこと。ではどうしてこのカンファレンスを取ったかというと、並行していたもう1つのカンファレンスが「編集というお仕事」というもので、「創作」ということではこちらの方がなにか聞くことができるのではないかと考えたからです。
お2人とも(ご当人は「すこし違う」といわれていましたが)「陰陽師もの」を書いてらっしゃるそうです。

で、お2人の来歴から「原点は?」というお話になったのですが、実際にはアピールしなくては気がすまないタチに思われるほど、金蓮花先生が「『踊り』が原点」ということでそのビデオなどの上映もあって、圧倒的に序盤の時間を占めていました。
とくに金蓮花先生は東京生まれ東京育ちとはいえ、朝鮮学校から朝鮮大学と日本における在日朝鮮人教育をうけた経歴をお持ちで、語り口ははっきりしたものでしたが、その文化の違いや差別、教育の偏りといったことも、朝鮮の昔話などにほとんど触れる事が出来なかったことが、憧れとして今の作品作りの原動力のひとつになっているという風に語られて、非常に印象に残りました。
(小学校時代、文化大革命の影響で、それ以前の風俗や言い伝え、故事なども一切教育の中には出てこなかったそうです。)

とはいえ中盤からはノって来た宮乃崎先生と三村さんのナビゲーションが噛み合ったのか、シリーズについてそれまでより饒舌に。
学生時代に手伝いに行った漫画研究会で連れて行かれたコミックマーケットがきっかけだったとか、シリーズで今後展開していこうと思っていたラインを、実は先に実行している作家の方がいて現行シリーズの先はまだ未定になってしまった、シリーズは陰陽師ものと言われているが安倍晴明の死んだ後という設定でもあるし自分では陰陽ものとは思っていないことなど、読んでいなくてもわかる話で、興味深く聞き入りました。

◆突発企画

このあと、元からのタイムテーブルだと宮乃崎先生と金蓮花先生のサイン&お茶会で、私的には閉会式であるエンディングまで時間が空くところでした。
ですが突発企画ということで、会場にいらしていて頼み込まれたのでしょうか?吉岡 平さんと霜越 かほるさん(*補足)がコメンテーターで、エンディングの会場となるホールでのカンファレンス。
この際の進行が午後一の「作家というお仕事」と同じ方だったのでイラストの話になり、現行は「付いてくるのがどんなイラストか楽しみ。」ということでした。
面白かったのが吉岡先生で、「六十歳近くになってから『萌え』なイラストをつけて男読者を捕まえられる作品を書くのが野望。」とのお話でした。

◆エンディング

そこからなだれ込んだエンディングは、スタッフが持ち寄ったりお願いして回ってそろえたと思われるずいぶん多くのプレゼントの抽選会がメインでした。
抽選以外にも、小物などがラストには来場者全員に配られて、サイトに書いてあった「おみあげもいっぱい」はホントでした。
じゃんけんで勝ち残りが抽選方法だったのですけど、そのなかで私はエニックスから発刊されているレーベル「EXノベル」の既刊(1冊だけ11月発売のフライングゲット)24冊セットに勝ち残って、めでたく紙袋一杯の"ティーンズノベル新書"を担いで帰る事になりました。
毎月買う数冊の新刊とあわせると、今年一杯は読む本に困らない量です。

実行委員長の挨拶もあり、来場者の多くが業界の方々だったのだとは思うのですけど、「継続していきたいと思います」という言葉に大拍手で継続本格決定宣言となりました。

◆最後に

このようなイベントで、1日中とても楽しめました。
いちばんはやはり作家先生方の話を聞き、質問をして答えていただけた事です。
特に秋津先生にはふたつのカンファレンスにまたがって、いずれの質問にも丁寧にお答えくださって、遅ればせながらお礼申し上げます。
また抽選ではありましたが、EXノベル・フルセット、ありがとうございました。

とっくに「ティーン」ではないですけど、第1回以降も参加したいと思います。

(*補足)
吉岡先生と霜越先生については、TNFのサイトからでも探しにくいと思われるので、簡単に補足しておきます。

△吉岡 平(よしおか ひとし)
富士見ファンタジア文庫「宇宙一の無責任男」シリーズで大ブレイク。
「無責任」シリーズの最新作がファミ通文庫で継続中のほか、多数のシリーズを持つ。スペオペのほか、ミリタリー色の強い作品も多い。
双葉文庫に収録されている「ルパン三世」のゲームブックなども手がけている。(現在絶版/「復刊ドットコム」で投票中。こちらこちら)

△霜越 かほる(しもごえ かほる)
「高天原なリアル」で'99年度ロマン大賞を受賞し同作デビュー。
代表作として「双色の瞳 ヘルズガルド戦史」、最新作は「KLAN」シリーズ。いずれも集英社スーパーダッシュ文庫収録。

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