INSTANT BOOK REVIEW
〜インスタントコーヒーのようなお手軽書評〜


DEAD DATE BOOK〜絶滅種、絶滅危惧種のBOOKたち
『TABIDAS(たびだす)'92』(日本交通公社出版事業局・1992年)

 副題にJTBの旅行情報源最新版とあるように、旅行ガイドの事典である。目次からちょっと拾うと、「テーマパーク」「動物園」「水族館」「美術館」……などのジャンルに分けられて紹介されている。全国にどんな施設があるのかが、ばーっと網羅してあるのである。モノクロなので見た目こそ地味なものの、情報量はたっぷりあり内容は充実している。ジャンルわけも凝っている。前述したもののほか、「町並み」「街道」「建築」「岬・海岸」「島」「洞窟」「スキー場」「ゴルフ場」、さらには「漬け物」「名物だんご」「珍味」なんていうのも含め全部で70ジャンル、それぞれについての全国のスポットが網羅されているのだ。旅好きならば買わずばなるまいと思いきや、JTBではこの1992年版を最後に絶版にしている。思うに、制作に恐ろしく手間がかかることと、これを一冊買ってしまえば、ほかのガイドを買わなくなるということから絶版にしたのではないだろうか。今から7年前の情報であっても、これだけのジャンルについて全国をフォローした事典はそうはない。古本屋でみつけたら即買いだろう。


DEAD DATE BOOK〜絶滅種、絶滅危惧種のBOOKたち
『朝日百科 動物たちの地球』(朝日新聞社・1991年)

 朝日新聞社が1991年から「週刊朝日百科」として発行していた動物もの。無脊椎動物から哺乳類までをカバーしているほか、探す・逃げる・群れるなどをキーワードにした「生活戦略」や、熱帯林・ツンドラ・湿地など環境毎に取り上げた「環境と動物群集」、細胞やDNAなどを詳説した「からだ作りの神秘」など、テーマ別の構成も充実している。現在は全14巻の合本となって、図書館などで見ることができる。カラー写真と第一線の研究者による解説がついており、とくに最新の知見が載っているというのは、普段学術書を読むことのない専門外の人間にとってはありがたいもので、さっそく「魚類」の巻でも買い求めようかと、朝日新聞社に問い合わせたら、全巻揃いで13万円だかでないと売らないという。この大会社の殿様商売め! かくて、ここに収録されている最新の知見と貴重な生態写真の数々は、2度と市井に出回ることはなく、図書館の棚で眠りにつくのである。貴重な資料が小出しにされることすらなく、死蔵される適例。


『地図のない旅なんて!』(大沼一雄著・東洋書店・1996年)

 著者は元高校の先生。地図を活用するといかに魅力的な旅になるかということを説く。そもそも、鉄道や道路、集落などは、最初から偶然そこにあるのではなく、その土地の人々の生活の積み重ねの上に形成されていったものだ。地図を「読む」ことで、現地の地形や景色だけではなく、その土地に刻み込まれた“人々の暮らし”や“文化”を読み解く楽しみがでてくる。

“島民はどんな生活をしているか……海辺近くに住んでいないので漁業中心の暮らしではないと思われる。とはいっても耕地はごく一部に桑畑が見られるだけで、畑らしいところは、ほとんど見当たらない。島全体が樹木に覆われている。南の特定地区界で囲まれた中が放牧地なので、牧畜業が中心なのか……放牧場の南に養殖場がある。どんな水産物が育てられているのだろう”という具合。

 これにさらに、古い地図と対比することで、町や産業の盛衰と絡んだその土地の移り変わりがわかる。地図はさながら土地情報の宝庫、町の風土記というわけだ。

 しかし、この本がただの旅行本にとどまらないのは、あとがきや本文の随所で語られる「旅の準備」、というより「人生設計」についてのノウハウである。そこにはいかにして旅行資金を捻出するかという知恵が縷々記されている。

“年金の方はすべて生活資金に回すので、手をつけるわけにはいかない”“5年前に自由金利の大口定期で年利8%であったものが、なんと今では0.4%なのである。年金生活者にとってこれほど大きな痛手はない”ので“これまで二日に一度の買い出しを週に一度に切り換えた”云々。

なんか最後は株の話にまでなっている。こうしてつくりだした予算で、長くて1〜2カ月、普通で2〜3週間の旅を年に3〜4回楽しむというのである。

 世に「旅行ライター」は掃いて捨てるほどいるが、旅行費用の捻出の仕方をこれだけ語れる者は一体いかほどいるだろうか。自腹を切って旅をする人間だけが書ける技術論である。著者のように退職を迎えた人のみならず、学生など時間に余裕のある人、若い身空で老後の人生設計などをぼんやり考えている人には一読をお勧めする。


『オホーツクのホタテ漁業』(西浜雄二著・北海道大学図書刊行会・1994年)

 オホーツク海、とくにサロマ湖近辺のホタテ漁業の問題点や現状を、歴史的な経緯とともに解説している。なんだ、専門書かというなかれ。オホーツクのホタテ貝が今日の地位を築くに至った背景にはさまざまな努力と偶然が隠されているのだ。
 そもそもサロマ湖は近年に至るまで、海とつながってはいなかった。網走寄りにわずかな湖口があるのみで、それも冬には砂で埋もれてしまい、春に村民総出で掘り返すということの繰り返しだったという。サロマ湖は広大な湖である。外洋への出口は湖の南端に一カ所のみ、湖の北側の村民にとっては不便なことこのうえなかった。
 そこで、北の村民が、砂丘の部分に新たな水路を掘り始めた。何回か失敗した後、1929(昭和4)年に現在の河口の開削に成功。それで、北はめでたしめでたしなのだが、今度は湖の水位が変わってしまい、本来の南側の湖口が土砂で埋もれてしまった。のみならず、外洋の冷たい海水の流入で、それまで、湖内の主要産物であった牡蛎が全滅してしまった。南側の村民にすれば、水路は塞がるわ、牡蛎は全滅するわで、ふんだりけったりである。いまだに南側の常呂町史には恨み節が書いてあるというが、ともかく牡蛎が全滅してしまったので、そこから外洋にいたホタテ貝に目を付け、ホタテの栽培漁業が始まったというわけ。
 このほか、ホタテ貝に不定期で大量発生する貝毒についての研究など、その原因を突き止めていくプロセスはまるで推理小説を読むようである。
 北海道、とくにオホーツク海に出かける時にはぜひ一読を勧めたい。どこの料理屋がうまいかだけをインプットしていくよりもまた違った「味」がある。きっと、かみしめるホタテから歴史が伝わってくることであろう。


『Uガイド 新潟・佐渡』(昭文社・1991年)

 新書版サイズのガイドブックだが、ポケットガイドやブルーガイドに比べて知られていないシリーズだろう。この本は、やたら旅行記のスペースが多い。普通、ガイドブックといえば箇条書きにガイドを羅列し、囲み記事でコラムが入るという構成が主だが、これは数ページものの旅行記が20本近く入っている。
 その内容たるや“…村上にはまだ武士が生きているという。武士の末裔と町人の末裔とはいまだに決して相いれないというのだ。それはともかく、ここの昼めしはうまかった”とか“さて食事の相手を頼もうか、としたら、本日はどこかで宴会があるとかで女性は出払っているという。ムムッ!で、女給さんのお給仕で食事をそうそうにすました”といった案配。女給さんも女だろうが…という疑問は通用しない。どうやら“女”が相手してないと不機嫌になるタイプ。
 この著者は、奥付に名前は出ているが、年齢や経歴などの説明はいっさいない。うーむ、きっと年輩の、小島功の美人画とかが好きなおっさんに違いない。まるで『新解さんの謎』のようなガイドブックである。よくよく読めば、箇条書きのガイドの部分にも価値判断が。ポケットガイドの無機的な記述や、るるぶの妙になれなれしい文章に飽きた方には是非。


『水族館行こミーンズI Love You』(内田春菊著・扶桑社・1996年)

 シーラカンスをキャラクターにしてるぐらいだから当然水族館マニアである春菊の、水族館訪問雑感。水槽の隅にいるヘンなキャラ(例えばザラビクニンとか)にページを割いていて、こだわりを感じる。“ヘラチョウザメはフェラチオザメと聞こえないようにしっかり発音しよう”…などとボソッと書いていたりするのも春菊らしい!?


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