テーマパークとしての寺社
須磨寺(兵庫県)

 須磨寺。旅行のガイドブックには概ねこう書いてある――源平ゆかりの地に建つ須磨寺は、境内に、熊谷次郎直実と平敦盛の一騎打ちを再現した「源平の庭」や小石で作った人形で源平合戦の様子を描いた「小石人形舎」などがある。宝物館には敦盛の笛などの品々が展示されている云々……いわゆる古刹というヤツである。

 山陽電鉄の須磨寺駅から歩いて5分ほどで、どっしりとした感じの山門が見えてくる。周辺には、こじんまりとした商店が立ち並び、門前町の情緒ある雰囲気が漂っている。魚屋の店先には活きたシャコがたらいの中ではねまわり、ここが明石の好漁場に近いことを思わせる。
 お寺参りのお婆さんとすれ違う。須磨寺に一番似合いそうな客層だ。

平敦盛と熊谷次郎直実

 入って左手に「源平の庭」。笛の名手で美少年といわれた平敦盛は合戦の折り、熊谷次郎直実に一騎打ちを挑まれ、若くしてその命を落とした。「討たれし平家の公達あはれ」と歌唱「若葉の笛」にも歌われているもの悲しいエピソードだ。砂利が敷き詰められて山水文様がついている庭には、馬上から名乗りを上げ決戦を挑む直実と、受けて立つ平敦盛の像がある。

 が、どうもなんか様子がヘンだ。よくみると山水の文様はミゾを掘ったプラスチックだ。石庭がプラスチック製である。由緒ある古刹が、急にスペックダウンした気分!

一つ事占い  境内は広いし、それなりに古くて立派。
 しかし、ところどころにヘンなものがある。「一つ事占い」と称する鳥かごのなかに下駄が入っているオブジェ。ハンドルを回すと下駄が弾かれ、表になったり裏になったりして明日の天気が分かる(!)。
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