あるカメラマンの独り言
 シリーズ No.016
嗚呼、アクチュアル!
(Japanese Text Only)

 
 秋・・実りの秋、スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋・・そして航空祭シーズンの秋・・
晴れ渡った空の下、各地で色々な航空イベントが催される。その中で皆が楽しみにしているのが空の日である。そして「空の日」のイベント等で防災ヘリコプターが地上展示される機会も多い。その際、宣伝HPやチラシ等にこんな注意書きがあるのをご存じだろうか?

「ヘリコプターは災害対応等で出動していることがあります。その際は見学できませんので、ご了承下さい」
この実際の出動をActual Mission、略してActual(アクチュアル)という。
消防防災ヘリは平時は空港に待機、災害発生時には即座にその対応に当たる。
だから、地上展示が予定されていても、災害発生時には参加できず、展示キャンセルということもあり得る。



緊急出動する東京消防庁のAS365N2 ドーファン2
(Actualのイメージです)

  しかし、逆の場合もある。それは、こんな例・・・
羽田で行われた「空の日」、海上保安庁のAS332Lが地上展示されていた。
当時、TV、映画で「海猿」が大人気。劇中で活躍する潜水士達は女子のヒーローで、追っかけ隊が居るほどの人気ぶりだった。
羽田には特殊救難隊(特救隊)が所属している。そこに緊急出動命令が下った。
突然周りが慌ただしくなり、ヘリがエンジン始動、本物の潜水士達がヘリに乗り込み出動してゆく。
憧れの潜水士達の出動が真近で見られ、女子たちはムネキュン、そして航空マニアは轟音を上げて離陸してゆくスーパーピューマに胸を躍らせた。


空の日の会場を後に緊急離陸する海上保安庁のAS332L 

 また、地方の基地祭では隣県から来て、地上展示されていた機体が、救難命令を受け飛び立ったり、地上展示だけの筈だったドクターヘリに指示が下り、緊急離陸するというシーンにも遭遇した。

このように、航空祭、基地祭等でのアクチュアルは「地上展示だけだった機体が突然ローターを回す」 という図式となり、ちょっと得した気分になったものだ。

(勿論、実際の出動となれば、不幸にも事故や災害に遭遇した方が居る訳で、出動は無いに越したことはない。不謹慎と思われる方もいらっしゃると思う。私も勿論同感だが、ここは「独り言」ということで、お許し願いたい)


航空祭での機体展示中に急患が発生、緊急離陸するドクターヘリ

 ・・ということで、私にはアクチュアル(Actual)にはプラスのイメージがあった。

そう、つい先日までは・・・・
先日、こんなことがあった。

あるショッピングセンターで消防防災訓練があるという情報が入った。
そこは筆者もよく知っている施設だが、何とヘリコプターが参加するという。
聞くと、臨着場は、そのすぐ近く。小規模な訓練ではあるが、そう遠くないので下見に出掛けることにした。

 現地(臨着場)に着く。
そこはただの広場でスーパーの臨時駐車場として使われていた。
すぐにカメラを取り出し、撮影シミュレーションを行おうとしたのだが・・
その日は休日でもあり、大勢の家族連れが車を停め、敷地内は子どもの遊び場と化していた。
このご時勢、へたに望遠レンズを向けると怪しい人と勘違いされそうなので子ども達が去るまで、他で時間を潰して、待たねばならなかった。不寛容の時代・・全く困ったものである。

日が傾き始め、子ども達が去ったのを確認し、ヘリの進入経路を想定して、撮影シミュレーションを行う。
バックには色づき始めた紅葉が見てとれ、アングル次第でいい写真になりそうだ。
しかし、訓練当日の予報は曇り、美しいバックは期待できそうもない。

だが、数日後の訓練前夜、TVで天気予報を見ると、翌日は快晴に変わっていた。
「やったぜ!」と幸運に感謝
その後もTVを見ていたら、ある番組で興味深いことを言っていた。


脳科学の研究:「いらすとや」より

 「おやじギャグが生れるメカニズム」

ちょっと話はそれるが、興味をそそられたので書いてみようと思う。
「おやじギャグ」とは中年男性が口にする、その場をしらけさせるようなダジャレのことである。
『トイレにいっといれ、そんなバナナ(馬鹿な)、コーディネイトはこうでねーと、ネクタイ締めてネクタイ(肉体)労働、罪を憎んで人を肉まん(憎まん)・・・』等々
何故、おやじと呼ばれる世代の男はそんな(くだらない)ことを言うのか???
結論から言うと、「中年男性は、その”言いたい”という衝動を抑えられないから」だというのである。

脳科学的説明はこうである。
人間の脳には色々な情報が蓄積され、年齢と共にボキャブラリも増える。
50〜60代はそのボキャブラリが一番豊富で、何か単語を聞くと、それに似た言葉を探そうとする。
するとシナプスがつながり、関連語が頭に浮かぶ、だがこの後の行動が年齢によって分かれる。
例えば、会議中に、ダジャレが頭に浮かんだとする。
20〜30代は「面白いけど、今、この場で言ったら、まずいだろうな」と思い、自制する。
しかし50代はその言いたい衝動にかられ、TPOを考えずについ口に出し、場をしらけさせる。
何故か?この衝動を抑えるという力は脳の中の前頭葉にあり、20代前半をピークに年齢と共に減ってゆく。
何と50〜60代は12歳(小6)と同じ程度という。だから、つい口に出してしまう・というのである。
なるほど、確かに上司はダジャレを連発して喜んでいたっけ・・と妙に納得してしまった。

話を元に戻そう



 訓練の当日は、天気は快晴、北北東の風3m、
ヘリは南側から進入するから、下見で決めた撮影ポイントでは早朝はバッチリ順光で撮れる。
ホバリングは風に正対して行う。ホイストは右側(パイロット側)についているから
北北東に機首を向ければ、こちらからは吊上げの様子が良く分かるベストアングルとなる。
「こいつぁ、久しぶりにいい写真が撮れるぞ!」意気揚々と車で現場へ出掛けた。


↑青空をバックにこんな感じでばっちり撮れる筈・・・うふふ

 だが、現地では待機している筈の消防車の姿が見えない!
おかしいな?と思い、関係者を見つけ尋ねると、衝撃の言葉が返ってきた。
「あ、訓練は中止になりました。先程起きた事故でヘリが出動中ですので、訓練自体が中止に・・」
中止に・・以降の言葉は上の空だったのでよく覚えていないが、とにかく礼を言って、その場を引き上げた。
訓練開始はAM9:00 ヘリは何とAM8:30に出動してしまって、来ない・・
「嗚呼、アクチュアル!」
この時、頭の中で、プラスのイメージだったものが、ガラガラと音を立て崩れ、マイナスイメージへと一気に急降下した・・
そして、呆然自失状態で駐車場へ引き返す・・気がつくと車に戻って、車内で一人で叫んでいた。

「アクチュアルってこと?」
「そんな、バナナ?! これが本当の最悪ちゅあるっぅうう・・なんちゃって」

思わず、おやじギャグ、もとい、ダジャレを連発してしまった。
秋の深まりとともに、また、年齢にも深まりを感じてしまう、今日この頃である・・(S)


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