コードブルーのドクターヘリ事故を検証する!

 TVドラマ「コードブルー シーズン3」で、ドクターヘリの事故が描かれました。
しかしどうも事故原因に納得できません。
ドラマの世界ではありますが、夏休み特別企画第2弾(?)として小サイトの視点で検証してみました。


コードブルーに登場するドクターヘリ

  高視聴率でスタートしたコードブルー3だが、ここのところ視聴率の横ばいが続き、視聴者から色々な意見が飛び交っているという。
多いのは脚本家が男性から女性に変わったことに対してであり、ファンの間で物議をかもしている。

「院内ドラマより“現場で患者の頭にゴリゴリ穴をあける山P”が見たい!」
「恋愛要素は不要! 」
「ヘリのシーンが少ない!」(これは同感)など

 そこで、シーズン2を見直してみたが、死や別れにより主人公たちが成長する等、テーマが重いだけにやはり暗い。
その点、シーズン3の方は主人公達に余裕が出てきて、人を育てることがテーマとなっており、チームビルディング的な要素やコミカルなシーンもあり、私はこちらの方が好きだ。
十人十色、好みは皆違うのだから万人が満足するドラマなど存在しない。
「恋愛要素があってもいいのでは?」などと思っていた・・

しかし、2017年8月28日(月)に放送された第7回に関しては首を傾げた。
ドクターヘリの事故を描いたことである。
タブーにあえて触れたのかもしれないが、事故原因に合点が行かない。

 内容はこんな感じ

ドクターヘリが現場に急行するが、見物人の退避が間に合っていないので上空待機する。
しかし、焦ったフェロー(研修生)がパイロットに着陸をせかす。
パイロットははフェローの依頼を受け、「場所をずらして着陸できるかもしれません。」と別の着陸地点を探す。
これを見てガッキー(新垣結衣)演じる白石Drが「医者がパイロットに指示を出すことは禁じられており規程違反である」とフェローを強い口調で叱責する。
そのさなか、急に機体が右に傾き、医療器具がキャビンに崩れ落ち、木々の緑が窓外に迫り「出力最大!」の声が聞こえ、機内騒然となる。

画面が切り替わり

CS(Communication Specialist) から緊急報告が入る
「ドクターヘリが着陸に失敗しました。・・墜落かも知れません。」
殺気立つ院内だが、白石Drと無線で連絡がとれ、幸い乗員は無事と判明。

着陸失敗?のシーンは一切なしで画面が切り替わり
次のシーンではメインローターが折れたMD900がグラウンドに駐機。
医師たちも打撲を負ったらしく足をひきずっていた。

その後 審査委員会が開かれ、原因究明のシーンとなる。

パイロットの証言では
「当日は夏場にしては湿度が低く、ダウンウォッシュで砂埃が舞い、それで視界不良となり方向感覚、高度感覚を失い、気が付いた時にはメインローターを木に接触させていました。すべて機長である私の責任です。」
着陸を急がせたフェロー(規程違反)をかばい、毅然と答える機長
エアマンシップを思わせる感動のシーン・・
その後、フェローが「せかせた自分のせい」と告白し、物語は進んでゆくのだが・・

?????? ここで疑問が浮かぶ

事故は1つの原因では起きない。
2つ以上のエラーが重なり、事故になる。

この場合、エラーは2つ
1つ目は、指定以外の着陸場所に着陸しようとしたこと
2つ目は、ダウンウォッシュによる視界不良である

これを検証すると

1つ目
通常ランデブーポイントには消防が先に行き、着陸地点にダウンウォッシュで砂埃が立たないよう散水して到着を待つが、この場合、散水した場所以外に着陸しようとしたということだと思うが、(視聴者にそこまで分かるか疑問であるが・・)
ダウンウォッシュが起こるというのは接地寸前であり、この低高度でメインローターを木に接触させるなど、木々に囲まれた相当狭い所に着陸しようとした以外考えられない。
テールローターを木に接触したなら分かるが、MD900はテールローターが無い。
それでメインローターの設定にしたのだと思うが、メインローターが接触するような距離に木があるなど論外で、そんな危険な場所にパイロットが降りるわけがない。

2つ目
不整地に降りる場合のダウンウォッシュによる視界不良は想定内、ベテランパイロットには十分対処できるスキルがある。ダウンウォッシュは常であり、ベテランパイロットが視界不良でパニックになるなど考えにくい。

・・という訳で、Flight Simulatorを使用し状況を再現してみた・・


状況から推察すると着陸場所は木々に囲まれた狭い場所?


機体と木々との距離が近すぎる こんな所に降りる?


コクピットからはこんな風に見える きわめて危険と感じる筈



それでも着陸を強行!


不整地なのでダウンウォッシュで砂埃が舞う!


ダウンウォッシュで視界不良となる



高度、方向感覚を失い、バランスを崩し、メインローターブレードを木に接触!


メインローターブレードを破損


 ・・こんな感じである。
ベテランパイロットがこんな所に降りて、しかもダウンウォッシュにパニックになる初歩的なミスを犯すだろうか?
どうも不自然さが目立つ。

シーズン3では1度しか姿を見せていないが、1〜2で機長をつとめた寺島進演じる梶パイロットがこの場に居たら、例のべらんめぇ口調で、「おめぇ、何やってんだ!それでもパイロットか?!」と頭をピシャピシャ叩かれているところだ。

また着陸失敗と言っているが、ちゃんと接地している。
横転したなら分かるが、この場合、ハードランディングと言ってほしい。

私は今回の脚本を批判しているのではない、こんないいシーンもある。

修理の終わった機体の傍らでガッキーが山Pに語るシーン

「ドクターヘリは16年間無事故だった。1万回以上の出動、5000時間以上の飛行、私達を安全に運んでくれた。でもたった1回の事故で世間は騒ぎ立てる、それにもう、1万回以上安全に運んでくれたことには目を向けてはくれない。」
というセリフも「不寛容の時代」を反映し意味深で考えさせられた。

ドクターヘリは事故を起こしてはならない。
その安全を確保した上での計画的飛行が前提なので、ヒューマンエラーや機体トラブル以外の“どうしても避けられなかった事故”でなければ合点がいかない。

ドラマでは登場人物が次々と不幸な出来事に遭遇する。
それを乗り越えて成長してゆくのだが、ドクターヘリの事故だけは描いてほしくなかった。
最終回まで無事故でいてほしかった・・そう思うのは私だけであろうか・・

2017/9/7



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