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ドクターヘリ、厚生省が予算要求

 厚生省は8月末、来年度概算要求としてドクターヘリを含む環境整備に83億円を要求、
いよいよ我が国のEMS(救急医療)体制が本格的に動き出す。


  「ドクターヘリ」の普及を目指している厚生省は、全国二か所の試行事業でその効果が証明できたとして、全国の救命救急センターに専門医の待機、及びドクターヘリの患者搬送体制整備の為、来年度予算の概算要求に83億円を盛り込んだ。

  ドクターヘリは、早期治療が可能となるため、救命だけでなく、後遺症の軽減、良好な予後、社会復帰期間の短縮、入院費の削減などにつながるなど、経済効果も大きい。
この事業は、日本新生プランの一つ「メディカル・フロンティア」の一環として進められ、来年度から5年間で整備を目指す。計画では初年度は7カ所、5年後には全国30カ所に拡大する予定。

 83億円の内、ドクターヘリに直接関係する予算は約7億円。
ドクターヘリの1回当たりの出動経費は約50〜60万円といわれる。
これはヘリ運航会社からのチャーター料金、パイロットや整備士、同乗医師、ナースらの人件費が必要となる為で、この費用をどこが負担するかが問題となっていた。
この件に関してはドクターヘリ調査検討委員会に於いても、救急車と同様に無料にするか、受益者負担とするか、健康保険に組み入れるか、など活発な論議が行われた経緯がある。

 今回はこれを受けて
厚生省は「掛かった経費の3分の1を病院などが負担すること」を基本としているが、 とりあえず来年度は病院からの負担は求めず、国が病院負担分も合わせて計3分の2、自治体が3分の1を支出することにして、計7億円の予算を要求することとなった。 (参考:今年度の試行事業での予算は約1億円)

  その他の予算は
全国135カ所の救命救急センターの専門医配置を強化。脳外科や神経内科、循環器科などの医師が24時間態勢で待機し、心筋梗塞や脳卒中で救急搬送された患者の治療を即時に始められるようにするなど、その人件費として27億円があてられ、ドクターヘリとの連携、環境整備を目指す。

 今後の展開としては
すでに試験的運用を実施している岡山県の川崎医科大付属病院など7カ所の病院に、騒音の少ない専用ヘリを導入する。

 また、災害時に限らず、専門医がいる高度医療施設から離れた地域に住む人々が心筋梗塞などで倒れた際にも、早急に搬送するのが目的で、並行して市町村ごとのヘリポート設置などを促す。


 以上、これを見ても分かるように特別な事故や災害などではなく、脳卒中、心筋梗塞など一刻も早い治療を要する患者(高齢者も含む)に対してもドクターヘリを使用することとなっている。

これは脳卒中と心筋梗塞で亡くなる人はそれぞれ年間約14万人にのぼり、特に脳卒中は、寝たきりになる原因の4割を占めるという。
 東海大学病院(神奈川県)と川崎医大(岡山県)で昨年度試行したドクターヘリ事業では、命が助かった人や身体機能の障害に至らなかった人の割合が、ヘリを使わなかった場合に比べると倍増したとされ、この結果を受けたものである。(下図参照:「救急車」はドクターヘリを使わなかった場合の意味)

  また、運航体制だけではなく、ヘリポート整備も盛り込まれており、ドクターヘリ調査検討委員会報告書が生かされている。


 悲願だったドクターへり。
試行事業のたゆみない努力の積み重ね、無事故運航、大きな実績がついに日本を動かした。
欧米に比べずっと立ち遅れていた救急体制だが、これにより一気に加速することになろう。

  一方、使用機種や委託会社の選定基準、運用者にとって本当に使えるヘリポート作り、早期人材の育成、最適な通信手段の確保(防災無線や携帯電話はドクターヘリでは使用できない)など課題も大きい。

 しかし、今経済面という一番大きな障害をクリアしドクターヘリは離陸した。

  ヘリコプターは人命を救う・・・
やっとその本来の使われ方が国のプランとして軌道に乗ろうとしている。
これからも種々の問題を解決し、ドクターヘリが我々のもっと身近な存在になることを期待してやまない。


コメント(編集部より)

  Rotor Windでは、「ヘリコプターは人命を救う」をコンセプトにヘリコプターの有用性をアピール、特にドクターヘリに関しては力を入れて行きたいと考え特集を計画しておりましたが、掲載が遅れました。

  本件はすでに新聞などで報道済みでご承知のこととは思いますが、多くの方にこの動きを知ってもらいたいとその最新動向をまとめました。

 「Rotor Windを見てドクターヘリに興味を持った」というメールを読者の方からときどき頂きます。
そんな方が一人でも増えれば・・そのような思いでこれからも活動を続けて行きたいと思います。

2000/10/14



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