3月25日(土)、ベル427のデモフライトが東京ヘリポートで行われた。

 ベル427は133ktの最大巡航速度性能を有し、4ブレードコンポジットメインローターシステムと広いキャビンを採用したベル社最新鋭の本格的な多目的小型双発機である。
現在世界47カ国、80機以上の注文を受けており、内4機は日本向けとなっている。

 今回は東京エアロスペース2000(TA2000)に併設したイベントとして行われ、おだやかな晴天の中、東京ヘリポートに軽やかなローター音を響かせた。
デモは午前は10時から11時半で終了。 午後は1時半から3時半までの計約14フライトの予定だったが、試乗希望者があとをたたず3時半以降にもさらに2フライトを追加するほどの盛況であった。

 今回の機体はカナダナンバー (C-GFLK)のデモ機。
白を基調とし一見シンプルだが実は左右側面のストライプの色が違う、という凝った塗装の機体である。
今回、Rotor Windではこの最新のベル427に試乗する機会を得たので、以下にその優れた特色毎に体験を交えてレポートする。

 

1.広く明るいキャビン   2.双発の安全性と十分なパワー

 ベル427は8人乗り、パイロットの他7名が搭乗可能だが、今回はパイロットがカナダ人の為、コパイ席には交信を受け持つ中日本航空の方が座り、試乗希望者にはキャビンのみが解放された。キャビンはベル社安全基準をクリアしたロールオーバーバルクヘッドと呼ばれる方式で、しっかり乗客を守ってくれる構造となっており、標準の対面シートで片側3名が向き合って座る6座席仕様である。

 筆者の席は右前席、パイロット席と背中合わせの位置である。向かいには外人が2名座ったが足がぶつかることもなく、足もとも十分広い。反対側の列には男女が向かい合って座り、計5名が搭乗した。 シートは衝撃吸収型で安全を考慮しヘッドレストが高く、キャビンから操縦席は見えないのが残念だが、これは搭乗者のプライバシー確保の意味もあるのかも知れない。
また窓は大きく採光も申し分なく、室内は十分明るい。天井は高く、頭とのスペース(クリアランス)も十分、エアー吹き出し口もつきエアライン並の装備。ベージュのレザー内張りはVIP気分を味合わせてくれる。

 

  タワーからの離陸許可が出てローター音が高まる。
地上共振も気にならない。機体がフワッと浮いたかと思うと滑らかにタキシング、R/W19からTake-off。
背中がシートに押しつけられるようなパワーを感じ上昇、右旋回し東京ヘリポートを右端に眺め、あっという間にお台場上空へ。左(反対側)の窓を見るとTA2000の会場である東京ビッグサイトが見えた。この後、機は東京遊覧よろしく、臨海副都心、新宿、東京タワー、ビッグエッグ(後楽園)、武道館等の名所を回って行く。


R/W19からTake-Off


3.抜群の視界   4. 静かな機内
  ベル427はとにかく窓が大きい。開口部は48インチ
(約1.2m)。6人が乗ってもどの席からも外の景色が眺められる。
これではピンと来ないかも知れないので、実際にどのように見えるかを記す。

 先ず、窓(ガラス部分)の横幅。
筆者は進行方向とは逆に後ろ向きに座っている、つまり尾翼側の方を見ていることになるのだが、この窓から水平安定板の補助翼が見える。通常は窓を開け身を乗り出さなければ、こんな後ろの方までは視界に入らない。

 次に縦幅。
縦幅も十分にある。肘掛け(アームレスト)の下側、腰のあたりまで開口部がある為、下方視界も十分に確保している。
東京タワー上空にさしかかった際、試しに真下を撮るような感じで縦位置でカメラを構えてみた。
通常は窓枠が邪魔して下側部分は入りきらない筈だが、全てファインダーのフレーム内に収まった。いかに開口部が広いかお分かりになろう。

 右旋回時(自分側に機体が傾く)には更に下方視界が広がり、真下を見ることも出来る。送電線監視、パトロール、報道などにはうってつけだろう。また、もし遊覧などに使用すれば座高の低い子供でも窓枠を気にせずに外を見ることが出来、喜ばれるに違いない。

 

 先ず、ベル206の機内音、あの独特のクォーンという感じの高周波の音がない。
機内騒音は小さく、強力なエンジンを積んでいるにもかかわらずエンジン音が機内に入ってこないことに驚いた。
ローター音はするもののヘッドセットなしで会話が出来る。

 振動は少なく、天井に手を当ててみても「こんなもんか?」と思えるほど小さい。 搭乗前に陽気なカナダ人整備士が盛んに「バイブレーションの低さを実感してくれ」と言っていたことを思い出した。前の席の外人客も満足げに会話していたが、その内容が機内でちゃんと聞き取れるほどだ。

 こうして都内見物もほぼ終了。 機は大きく右旋回して帰途につく。



5.低速域での優れた静寂性と安定性   6.スムーズな乗降

 フライトも終盤に近づき、機速を抑えて高度を落とし、首都高速湾岸線を飛び越してアプローチコースに入ると、途端に機内騒音が小さくなった。
一瞬、No1エンジンをカットしたのか?またはローノイズモードに切り替えたのか?と思った程である。(言うまでもなく飛行中のエンジンカットはありえないし、ローノイズモードは搭載していない)本当にこの静かさは特筆ものである。
急に静かになったので同乗者も「おやっ?」という顔をしていた。この時になりあの懐かしい(?)206のクォーンという音がかすかに聞こえてきた。
「あぁ、やはりベルだな」という安心感が身体を包む。

 東京ヘリポートが見えてきた。緩やかに右旋回し直線コースに乗る。もう、揺れも振動も感じない。低速域の安定性、振動の低さには驚くべきものがある。

 

 R/W19にアプローチ、滑らかに下降する。
揺れは全くない。フレアー時のGも感じぬままタキシング、軽くスキッドの音がしたと思うと着地。
段差もなく楽に機外に出ることが出来た。

 礼儀上、前に座った外人の方に順番を譲り2番目に降りたが、ドアが大きいのでもし2人同時に出ようとしても問題なかったと思う。ベル427はオプションとしてEMS仕様も選択可能。これだけドアの開口部が大きければ楽にストレッチャーの出し入れが出来、ドクターヘリとしても十分に使える機体と感じた。


7.評価   8.最後に

 こうして約15分のフライトは終了した。
繰り返しになるが視界の良さと、低速での安定性と静寂製、振動の低さに驚いた。

 全体的には新宿上空で多少の揺れを感じたので、多少減点となったが、ここはもともと気流が悪く、他の小型機であればもっと揺れたことだろう。これがなければ満点をつけたかった所である。

 

 

 洗練された機体なのだが、おしむらくはデビューが遅過ぎたこと。 警察のベル206の老朽化が進み、双発機への代替が進み始めた当初に世に出ていれば、確実に導入数を増やせたと思うと残念でならない。

 しかし今後、この機体の良さが認識されれば、自然と導入数は伸びて行くに違いない。
今後の動向を大きな興味を持って、見守りたい。

 尚、今後は名古屋、福岡、八尾、神戸等で4月1日迄デモフライトを行う予定。

 是非、この機会に多くの方にこの乗り心地を実感して頂きたい。

                 2000/3/27 (S )
                 2000/4/1 画像追加


9.補足 2000/5/28 加筆)    
 本デモフライトツアーは東京、静岡、名古屋、大阪、福岡で2週間に渡り実施。
フライト回数は延べ85回、計425名が試乗した。
 

以上 取材協力

 三井物産エアロスペース(株)
      ヘリコプター営業部


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 三井物産エアロスペース(株)
 ヘリコプター営業部まで

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