EC130B4試乗レポート
     

 

ユーロコプターEC130B4 (JA123Y)

 

 2004年1月20日(火)、ユーロコプターEC130B4のデモフライトが東京ヘリポートで行われた。

 EC130B4はユーロコプター社のベストセラー、AS350Bエキュレイユをパワーアップした機体で、世界で最も厳しいと言われる騒音基準(GCNP Rule)をクリアすべく総力を結集して開発された最新鋭の単発小型ヘリコプターである。

 スペックは胴体長10.68m、最大離陸重量2,427kg、
高速巡航速度127Kt、騒音データ84.3db、搭乗者数7名。
エンジンはチュルボメカ社製アリエル2B1(最大出力847shp)でDual Chanel FADECを装備している。

  AS350からスターフレックスローター、EC135からフェネストロン、EC120からキャノピー、ドア、スキッドなど、実証されたコンポーネントを流用し開発期間を短縮、1999年6月の初飛行から僅か1.5年後という異例の早さで2000年12月14日にT/C(型式証明)を取得。2003/1月に日本に納入された後、10月28日には海外のヘリコプターとしては初めて日本のT/Cを取得。日本の空にデビューした。

 この度、販売総代理店のユーロヘリ(株)殿のご厚意で、試乗の機会を頂いたので以下にレポートする。


1.<搭乗〜タキシング>   2.<離陸>

  ・・EC130B4が着陸。我々の番が回ってきた。
係りの方に誘導されて機体へ近づく
「前に乗る方は右側からお願いします。」
一瞬「え?」(通常は左側から)と思ったがすぐに理由が分かった。機長席は左側だ。資料で分かっていたものの実感がなかった。
間近で見る純白の機体は横幅の広がったAS350Bという感じだが、中はさすがに広く、天井も高い。席に着き、シートベルトを締める。広い!足を投げ出してもキャノピーに届かない。(注:筆者が短足なのではない)

  搭乗者は6名。各有名航空誌の記者とカメラマン、2名ずつの搭乗である。
既にローターは回転しているが、大型のスキッドでがっちりとホールドされている為か、地上共振は全く感じない。

機長から「ヘッドセットはありませんが、質問の時は遠慮なく声を掛けて下さい」と説明を受ける。

 

 "Harumi radio,one two three yankey request・・"

いよいよ離陸。管制塔からクリアランス(離陸許可)が出てタキシング開始。機体がふわっと浮き上がる。前方視界は極めて良好である。離着陸帯までホバータキシー。低速時での上下動がない、スーっと滑る感じである。

誘導路から離着陸帯へ入りホバリング。前傾し「黄色で描かれたHの文字」を舐めるように前進、R/W01から有明デパーチャーで離陸、速度を上げ上昇。強力なエンジンのパワーを感じる。

 すぐに滑らかなレフトターン。(左旋回)
水平線がゆっくりと傾いてゆく。右側に夢の島、ゴミ焼却場を見ながら西へ、と飛行する。

 上空は晴天、明るい日差しがキャビンに差し込む。




タキシングするEC130B4
   


誘導路から着陸帯へ

3. <横風に強いB4>   4. <静かな機内>

  B4は低騒音、高視界だけでなく、高安定性、特に横風に強いという特徴を持つ。

その秘密はEC135から流用した大型フェネストロン。
B4は2.4tクラス、これに2.8tクラスの物をつけているのだから強い。小さな機体に大きなテールローターの組み合わせで、横風47ノットまでのホバリングが実証済みという。

強風時のフライトは機体が揺れ、乗り心地が悪く乗る気はしないが、「横風に強い」等と聞くと体験してみたくなる。
しかし今回は晴天、おだやかな天気で風もなく絶好のフライト日和。しばし遊覧気分で空の散歩を楽しむことにした。

 

 機内は本当に静か、ヘッドセットが無くても普通に会話が出来る。天井の窓から上を見るとローターが回っているのが見えるが、その音は入ってこないし、また振動も感じない。
開口部の広い窓のおかげで室内は十分明るく、撮影にストロボは必要ないくらいである。(操縦に差し支えるのでストロボは遠慮したが・・)

「現在、機速は100kt(ノット)(約185km/h)、高度は1500フィートです。」説明する機長の声がはっきりと聞こえる。 速度、高度計はアナログだが、その右側の液晶パネル、自慢のVEMDが刻々と色鮮やかにエンジンや飛行状態を表示する。 非常にコンパクトにまとまったコクピットである。



飛行音はEC135そっくり


 

 

 

 

 

 

 



パネル中央がVEMD


5. <六本木ヒルズ〜レインボーブリッジ>   6. <アプローチ〜着陸>
 しばらくすると 右手眼下に品川、港区の景観が広がる。
東京タワー、そして新しいランドマーク「六本木ヒルズ」の窓ガラスがキラリと光る。

とにかく視界が良い。正面キャノピー越し、左前方窓越しにと「おのぼりさん気分」で東京のパノラマ撮影を行う。

その後、手前に緑に囲まれた皇居を、向こうに新宿副都心を見ながら右旋回、帰途につく。
今度は左側に六本木ヒルズが見えてくるので、パイロット越しに建物を入れるという構図に悪戦苦闘している内に、もう目の前にレインボーブリッジが見えてきた。上空では遅く感じるが実際は速い。向こうには
フジテレビ本社などお台場お馴染みの景色が広がり、これがゆっくりと近づいてくるさまは、まさに TVドラマ 「踊る大走査線」のタイトルバック!あの軽快なテーマ曲が聞こえてきそうである。

 

 有明から新木場方面へ向かい、夢の島公園などを左手に見ながら高度を落とし、右旋回して海上へ出てアプローチコースに乗る。左手手前に葛西臨海公園、向こう側にディズニーランドやホテル群が見える。右側に眼を転じるともう眼下には東京へリポートの全景が広がっている。平行に飛んだ後、ダウンウィンドからタイトなライトターンでアプローチ、非常に滑らかで、テールが自然とついてくる感じである。

 R/W01へアプローチ、ホバータキシーしてスポットへ向かう。右の窓後方に機体の影が映る。スポット前でゆっくりとホバリング、高度がすーと下がり、目の前にいる誘導員の合図で接地を知る。着地のショックは全く感じない。ドアが外部から開けられる。大型の乗降用ステップに足を掛け機外へ出る。 背を屈めてスポットの外へ。近くにいてもフェネストロンのあの飛行時のブーンという音は聞こえない。
こうして 快適なフライトは終わった・・



左に六本木ヒルズ 右に東京タワーを臨む
   

東京ヘリポート全景(機内右窓より)

7. 評価   8.終わりに

◆室内:
 前席は横3列だから多少きついかと思ったが充分な余裕があり、更に1席増やして前4名、計8名仕様に出来るというのももうなずける。更に
足を置くスペースも十分、足のやり場に困るほどで、いわば旅客機のファーストクラス並。
頭と天井までの空間は十分で、窓の開口部が広い為、室内は明るい。

◆機外騒音:
 アプローチして来る際の飛行時の音はあのブーンという独特なEC135と区別がつかず、静か。

◆機内騒音:
  パイロットとその後ろ(後席左外側)との会話が、ヘッドセットなしで前席右側に座っている筆者からも聞き取れた。

◆振動:
 地上、上空共、全く感じず窓外の景色を撮影する際にも気にならない。

◆視界:
  撮影した窓外の景色の写真を見ると28mm広角レンズを使用しているのにもかかわらず、皆窓枠が写っておらず前から撮ったものか、横から撮ったものかが区別が付かない。
これだけ視界が良いということは特筆すべき事であり、
本機の用途も遊覧・人員輸送が40%弱を占めるというのもうなづけよう。
海外ではワイメアの滝やグランドキャニオンの景観が360度パノラマとなって眼前に迫ってくることだろう。

 

 低騒音、高視界、快適な居住性・・
一言で言えばまさに乗り心地を追求したような機体である。

 ふと、ある車の評論家の言葉を思い出した。
「A社の車は運転する側に立って技術を、B社は乗る人のことを考えて乗り心地を追求、やはりB社の方が全体的なバランスがとれていますね」・・

 そう、顧客志向こそが、優れた機体を作る鍵なのかも知れない。
今回のフライトを体験し、あらためてそう感じた。

取材協力:ユーロヘリ(株)民間営業部       

以上 2004/1/20搭乗 1/30記事掲載



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