EC155B試乗レポート
     

 

 

 この度、川鉄商事(株)殿のご厚意で、試乗の機会を頂いたので以下にレポートする。

 

 2000年7月22日(土)、ユーロコプターEC155Bのデモフライトが東京ヘリポートで行われた。

 EC155Bはユーロコプター社のベストセラー、AS365Nドーファンをさらに大型化した機体で、最大搭乗者数は15名。5枚ブレードのスフェリフレックスローターシステムや新型フェネストロンの採用により、騒音が大幅に減少した他、最新のグラスコクピット「アビオニクヌーベル」を搭載した最新双発ヘリコプターである。
 スペックは全長14.30m、最大重量4,800kg、最高巡航速度285km/h、最大航続距離875km。
エンジンはチュルボメカ社製アリエル2C1(最大出力977shp)2基でFADECを装備。

  中型双発機ではトップクラスの低騒音、N3に比べ3割増となった大型キャビン、優れた高速性能などを売り物とし、この夏デビューした。

 


1.<搭乗〜タキシング>   2.<離陸>

 背をかがめ、機体に近づく。
間近で見る白い機体はさすがに大きい。
機首は長く、全高も高い。大きく開け放たれたスライディングドア。キャビンのブルーのイスがセンスを感じさせる。

  右側から乗り込む。一瞬満席かと思ったが、乗り込むとまだ空席があった。 通常のドーファンであれば、定員オーバーというところだ。 さすがに広い。同乗者は各有名航空誌の記者とカメラマン、皆顔見知りである。

  中央右窓側の席に座り、シートベルトを締める。
管制塔からクリアランス(離陸許可)が出てタキシング開始 この席でも機長側の窓が大きいため前方向もよく見える。

 

 離着陸帯でホバリング。
ゆっくりと浮き上がる感じだ。
搭乗客は10名なのでいささか重いのかと思ったが、機体はRW19から離陸、速度を上げ一気に上昇、そんな懸念を吹き飛ばす余裕のパワーを見せつけた。

 海上へ出たところでタイトなレフトターン。(左旋回)
深いバンク角でコクピット越しに見える水平線が見る見る傾いてゆく。
若干機首下げ状態の為、葛西臨海公園が目前に迫ってくる。機首を起こし水平に戻す、右下に葛西臨海公園の海岸線、その向こうに東京ディズニーランドを見ながら飛行する。

 上空は晴天、明るい日差しがキャビンに差し込む。


   


3. <チップトップの機体>   4. <安定したフライト>

  その後、機体の運動性を証明するかのように右、左とバンクを繰り返しながら進路を修正し、北へ向かう。
左へ操縦桿を傾けると左へ、すぐに右へ倒しても少しも遅れることなく右へ機体が追随する。まるで起きあがりこぼしのように元へ戻る。これだけ大きな機体なのに実に俊敏な反応である。さすがチップトップの機体と言われるだけのことはある。
これは高性能コンピューターを積んでいて非常に反応が速い、運動性が良いという意味なのだが、Tip topには最上級、最高級の・・の形容詞という意味もある。なるほど・・と実感した。

 この間、各種CRTやウェザーレーダーがカラフルな扇形を描き、アビオニクヌーベルのグラスコクピットに目は釘付けになる。  

 

 巡航レベルになり、カメラマンによる各種計器、室内、搭乗客の撮影が始まる。
開口部の広い窓のおかげで室内は十分明るく、フラッシュも必要ないくらいである。

  操縦中の姿を撮影したいというカメラマンからのリクエストに宇田川キャプテンもにこやかに応じる。が、その際も周囲への注意を怠らずプロの貫禄を感じさせた。
この際、カメラマンが席を移動したりと色々動き回ったが、全く安定が崩れることなく、機体は水平に保たれていた。
勿論機長の腕が一流ということもあるのだが、運動性だけでなく、安定性も十分と感じた。

 


5. <高度6000feetへ>   6. < 高層ビル群上を旋回>

 北上しながら少しずつ上昇、高度を上げる。
同社の大型ヘリ、AS332Lシュペルピューマの時のような高速エレベーターに乗って上昇するようなGは感じない。
目立って上昇している感じはないが眼下の町並みが小さくなり、やがて点のように見えてくる。

 機体は大宮上空へ。
高度6000feet(約2000m)まで上昇。
北関東平野が一望出来るようになり、水平線がどこまでも続く。蛇のように曲がりくねった川の水面に太陽の光が反射し、キラリと光るさまが美しい。

しばらく飛んだのち機体は進路を変え、Uターン。
南下して新宿へ向かう。

 

 

 機速は約140kt(ノット) (約260km/h)。
特に高速で飛行している感じはないが、あっという間に新宿の高層ビル群が見えてくる。
だが左側でよく見えない。「右側に見えれば・・」と思ったその一瞬後機体は左へバンクし、すぐに右へバンク、8の字を描いてターン。

  もう右手にビル群が見える。
操縦桿がさらに右へ倒され、体が真横になる。
こうなると横というよりはもう真下にビル群が見える感じだ
  新宿上空は気流の関係で、風の強い日は小型双発ヘリで飛んでいても頭を押さえられ、機速が上がらないような錯覚に陥る。また多少の揺れを感じることがあるが、今回は安定しており、前進感があった。

 また視界が広いため、手の届きそうなところにビルが見え、実際は安全高度を保っているのだが、かなり低空を飛行しているように感じ、迫力満点である。


 

 

 

 

 

 

 


7. <レインボーブリッジ上を旋回>   8. <アプローチ〜着陸>

 その後、緑に囲まれた皇居を右に眺めながら南下、レインボーブリッジ上空へ出る。

 ここでも深いバンク角をとった姿勢でブリッジの上空を一回り。旋回半径が小さいためGを感じながらの上空からの眺めは、機体が橋の周りを旋回しているのではなく、逆に(機体は固定されており)眼下のブリッジの方がグルグル回転している感じだ。(注:目が回っている訳ではない)
「水面に映った天橋立(あまのはしだて)を股の下から顔を出して逆さまになって見る」というのがあるが、まさにブリッジが逆さまになったような錯覚を覚えた。

 旋回終了、機体が水平になり、フジテレビ本社などお台場でお馴染みの景色を眺めながら帰路につく。

 

 有明から新木場方面へ向かい、夢の島公園などを右手に見ながら高度を落とし、首都高速湾岸線を横切る。
目の前に東京へリポートが見えてくる。

 滑らかにアプローチ、フワリと接地。タキシングしながら、東邦航空前のスポットへ。機体が止まり、ドアが外部から開けられる。大型の乗降用ステップに足を掛け機外へ出る。       
 ローターの真下に居てもうるさいとは感じない。
背を屈めてスポットの外へ。これだけ近くにいてもフェネストロンの甲高い金属音は聞こえない。
搭乗客が全員降りたところで、エンジンストップ。

 ローターブレーキが掛けられ、あっという間にローターの回転が止まった・・・。


   


9. 評価   10.終わりに

◎室内:乗り込む際に「まだ乗れるの?」という感じで、さすがに広い。 さらに横4席でも狭いとは感じなかったし、足を置くスペースも十分、頭と天井まで空間の余裕は十分すぎるほど、また窓の開口部が広い為、室内は明るく、視界も良かった。

◎機外騒音:パンフレットには高周波が消滅と書かれており、減少ではなく消滅というところに自信が感じられるが、確かにあの甲高いキーンという金属音が消え、かわりにメインローターからのブーンという低いうなり程度しか聞こえない。ユーロコプター自慢の5ブレードローターの消音効果が発揮されている。

◎機内騒音:今回は防音内壁が未完成とのことだったが、それでもヘッドセットなしで会話が出来た。今後この防音が施されればさらに快適な乗り心地になろう。

◎振動:さほど感じず、窓外の景色を撮影する際にも気にならない。 特に脚出し入れ時の振動をまったく感じなかった。

 

  今回のフライトは通常の客でなく、記者相手だったため、機体の俊敏さを見せようと、かなりタイトな旋回、バンクをやってくれたため(1〜2G程度は掛かっていたと思われる)快適というよりはスリル満点という飛行であったが、それでもロールの際は上下動がなく、不安感はなかった。

 但し決して危険なフライトではなく、報道取材では日常茶飯事に行われている程度のものである。この程度の飛行は朝飯前というところだろう。

 これから、1年間かけて、各地でデモフライトが開催される予定という。是非この機会にこの低騒音を実感して頂きたい。

取材協力:川鉄商事(株)航空宇宙本部
                                       航空機部
               東邦航空(株)                

以上 2000/7/22搭乗 8/20記事掲載


 EC155Bに関するお問合わせは

 川鉄商事(株)
  航空宇宙本部 航空機部まで

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