Special(特集)

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EMSに関する緊急提言

 1998年2月28日、脳死患者からの臓器搬送が高知県消防防災S-76Bヘリ「りょうま」により行われた。

暗闇の中サーチライトを点灯しながら大阪空港へ着陸する「りょうま」の姿がTVで放映されたが、シコルスキーS-76BはPW-PT6エンジンを2基装備、最高速度は約280km/h、防災ヘリとしては現在最速の機体であり、この任務にはうってつけだったと言えよう。(S-76Bは 高知県の他、新潟県、山梨県でも消防防災ヘリとして活躍している。)

 ヘリコプターによるEMS(Emergency Medical Service:救急医療)は欧米では盛んに行われ、臓器搬送も頻繁に行われている。今回は我が国では初めてのケースだったにもかかわらず、見事に成し遂げた。このような場合を想定した実験(訓練)が最近数回行われており、この不断の訓練が今回の搬送を成功させたと言えよう。
 また行政側の対応も際立っていた。
高知空港は「(臓器提供者の)善意を生かす為の態勢は出来ている」として時間外のヘリの運用(待機)を認め、一方肝臓は民間小型ジェット機で長野に運ばれたが、松本空港は機の到着まで空港のクローズ時刻を延長するなどの緊急措置をとった。
このような病院関係者、行政が共に一丸となって最善を尽くした結果が成功を導いたと言っても過言ではない。関係者の努力、各機関の柔軟な対応に拍手を送りたい。

 今回の件はヘリコプターの有用性をアピールした。しかし残念だったのはヘリの使われ方である。ヘリの利点はSpot to Spot、2地点間をダイレクトに結ぶことが出来る点である。今回は夜間だったこともあり空港間の搬送にとどまったが、ヘリの利点を生かす為にも今後は病院の屋上ヘリポートなどの整備をすすめ、直接屋上に離発着できる態勢を整える必要があるだろう。もしこれが駄目ならば病院のできるだけ近くの公園や駐車場に降りるという手もある。

航空法第79条には「航空機は陸上にあっては飛行場以外の場所において離陸しまたは着陸してはならない。但し、運輸大臣の許可を受けた場合はこの限りではない。」とある。
この例外として航空法第81条2項があり、「警察、消防などの航空機が航空機の事故、海難、その他の事故に際して捜索または救助のために行う飛行については、この許可は不要」となっている。


 今回の場合、消防防災ヘリであり航空法第81条2項は適用される航空機だが「臓器の搬送」が「その他の事故に際して捜索または救助のために行う飛行」に当たるかどうかは法律上の解釈が別れるところであるが、十分拡大解釈できる範囲であり、次回の時は公園や駐車場に降りることは十分可能であると考える。
また航空法第79条に「但し、民間ヘリに於いても緊急と救命の場合は例外とする。」この一文を追加するだけでヘリの活用はもっと広がると考える。

ヘリコプターは人命を救う。ヘリはヘリポートや空港から離発着するものという固定概念をやめ、ヘリの利点をもっと生かせる体制作りが進むことを願ってやまない。

尚、パイロットのワークロードを減らす為にも、照明、航法援助施設などが整ったヘリポートの建設を同時に進めて行く重要性は言うまでもない。

初版:1999/3/7
1999/12/1加筆


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