Part2 ベル429特集 ベルの代理店である三井物産エアロスペース(株)はベル429を展示した。 ベル429はベル社が誇る最新軽量双発ヘリコプター。 PW207D1 ターボシャフトエンジン(625 shp)× 2基を搭載、最新のグラスコクピットを持ち、パイロット1名での計器飛行方式(IFR)が可能。また、4枚ブレードのテールローター、クラムシェルドアなど、ベル社初とも言える技術を多く採用している。 |
乗員: 1名、定員: 7名、全長: 113.11m、全高: 4.04 m
、キャビン容積は5.78立方メートルと同クラスでは最大容積を誇る(ベル公式サイトより) 本機は当初から救急ヘリコプター(EMS)(日本ではドクターヘリ)市場をターゲットとしており、マーケット戦略を変え、顧客からのニーズを徹底的に取り入れ開発を行ったという。その為フライトナース等、現場の意見もナレッジとして生かされ、装備として随所に取り入れられている。 |
安全にも配慮され、テールローターは剥き出しだが、それをガードするリング状のものが装着されている。 また後部のクラムシェルドアも独特な機構となっており、鳥が羽をたたんだような格好で前後にスライドし、風で煽られて不意に開かぬよう配慮がなされている。 このクラムシェルドアとフラットなキャビンはEMS向けオプションとなっているが、広いキャビン、高い天井のおかげで、救急ヘリコプターのみならず報道、警察など幅広い活動が出来る。 (スキッドではなくホイールタイプ(車輪式)のタイプもある。) |
今回展示されたのは各国をデモしてきた真紅の機体でテールブームには各国の国旗が描かれていた。 機体フォルムについては当初公開された写真だけで見るとベル206を太めにしたようで若干スマートさに欠けるような印象があったが、実機を見てみると意外とスマートであると実感した。 また、スキッドも当初は胴体と一体化したような丸みを帯びたものだったが、EC120等に酷似しているとの指摘から設計変更されたという(同社談) しかしながら、鋭角的なスキッド形状はかえって精悍になったように感じた。 |
ベル社ではベストセラーのベル206を双発化する計画は25年も前からあった。 下記に簡単に経緯を記す。 ・ベル400ツインレンジャー 1984年 ベル206を元にエンジンを双発化、更に初の4枚ブレードを採用、テールロータ保護にリングをつけるなど 意欲的な機体だったが、最終的に開発中止となった。しかしこの4枚ブレードは軍用小型単発ヘリプターのOH-58に 引き継がれている ・Gemini ST 1991年にTrideair社がベル206Lを元に双発換装プログラムを開発 Geminiとは星座の双子座からとられた愛称である。 1989年にプロトタイプが飛行、1991年にFAAより型式証明を取得。 しかしこれはシングルエンジンに予備のエンジンがついているという形で型式証明を取得しており、完全な双発 という訳ではなかった。 わが国でも1994年に1機だけ導入されたが、2004年に抹消されている。 日本での登録名はベル206L-3トライドエア ・206LT Twin Ranger ベル社でも同機を製造。 同機は全く同じものだが次のように区別した。 Trideair社で改修を受けた機体をGemini ST はじめからベル社の製造ラインでエンジン装備したものを206LTと呼称した ・ベル407 ベル206LをベースにOH-58の4枚ブレードを採用 計器をグラスコクピット化し、大型窓を採用 ・ベル427 韓国のサムスンとで共同開発した機体。 4枚ブレードのベル407をベースにFADEC(Full Authority Digital Engine Control:完全デジタル式エンジン制御) の PW207Dターボシャフトエンジンを2基搭載しキャビンも延長されている。 幅の狭い機体フレームにエンジンを2個載せるため、どうしてもエンジンカウリングが膨らむ形となるが、 本機はそこをうまく利用し楔形のデザインとし、延長されたノーズとあいまってスマートなデザインが好評を博した。 日本でも数機導入され、報道、送電線パトロールなどで活躍している。 しかしながら、EMSの要求は年々高くなり、特に広いキャビンは必須、また今回パイロット1人でのIFRという要求を受け、ベル社はベル427の延長線上での開発をやめ、新規に開発となったのである。 ベル429はわが国でもドクターヘリとして導入されるという話も聞く。 ドクターヘリ塗装となった機体を是非見て見たいものである。 |
以上、取材にご協力頂いた三井物産エアロスペース(株)のご担当者殿にこの場を借りて御礼申し上げます。 2008/10/13 |
2010年4月24日追記 ベル429、日本でのデモフライトを実施 ← 併せてご覧ください |
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