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「平成24度岡山空港航空機事故総合訓練」レポート

 2013年2月13日、「平成24度岡山空港航空機事故総合訓練」が行われた。


訓練に参加した岡山市消防航空隊 川崎BK117C-1 ももたろう

 これは岡山空港での航空機事故の発生に適切に対処するため、岡山県岡山空港管理事務所が主催するもので、「岡山空港に着陸途中の航空機が、強風の影響でバランスを崩し、右主翼を滑走路に接触させ、大きな損傷を受けながら滑走路中央付近で停止した。乗客・乗員70名の中に多数の負傷者が出た模様であり、火災も発生している。」との想定の元、岡山空港のエプロン6〜8番スポット付近に於いて、警察、消防、医療関係者、通信関連など参加人員 約260名、参加車両等約40台、ヘリコプター2機が参加する大規模な訓練が実施された。



 訓練は平成元年から2年に1回実施されているが、今回の特徴は既存の施設を極力使用しているということ。
従来は一番西側の21番スポットを使用し、ここにテントを張り実施していたが、今年は既存の施設を使用、各指揮本部をボーディングブリッジに隣接した地上に設置、負傷者の救護所は消防車の格納庫を使用する等、より実践的な訓練となっている。

 訓練の流れは下記の通り
航空機火災発生→消防車で消火、→無症者は(事故機に見立てたボーディングブリッジの)タラップから自力で脱出、→警察、消防が機内に取り残された負傷者をタラップから機内に入り救出、→担架で搬送し一時収容、→トリアージを行い救護所へ→重傷者を救急車とヘリコプターで搬送・・・というものである。


岡山空港鳥瞰図


総合訓練会場全体図 (再現図)


< 訓練の様子 >


13:00訓練開始 けたたましいサイレンと共に航空消防車3台が走り出す。



二手に分かれ滑走路手前で一斉放水、消火訓練が実施される。



続いて避難訓練、事故機に見立てたボーディングブリッジから無症者が
タラップを下り自力で脱出、すぐさまスタッフが安全な場所(休憩所)へ誘導する。




機内には負傷者が多く出ている模様。 出動要請を受けた川崎医科
大学付属病院常駐のドクターヘリがDMAT隊員を乗せ、空港に到着




13:10  21番スポットに着陸し、DMAT隊員を降ろす



サイレンを鳴らしながら 消防車両が到着



警察のレスキュー隊も到着 ブリーフィングのあと、 事故機に向かって駆け出す


タラップを駆け上がり、機内へへ


負傷者を次々と担架で運び出す。


「大丈夫です」、「あと少しです」、「痛いところはありませんか?」 など、常に声を掛け励ます。



エプロンの一角には負傷者識別区が設けられ、救出者はここに次々と運ばれる



救急隊が応急手当、一方、医師が診断及びトリアージを行う



救急隊は担架で救護所へ搬送 腕にはトリアージの札がとりつけられている。


(消防車格納庫を利用した)救護所は負傷者で一杯になる


負傷者役は県立岡山大学等のボランティアの学生。皆、顔等に消防学校の講師が
監修した生生しい特殊メイクがほどこされており、更に臨場感を盛り上げる。




重症者に対しては一刻も早い治療が必要、救急車で搬送



警察、消防、おかやまDMAT等の各指揮本部では状況が分単位でホワイトボードに記録されてゆく。



13:45  上空では岡山市消防航空隊のヘリコプター「ももたろう」が上空を旋回し偵察飛行を実施



13:50  5番スポットに着陸、



空港の救難隊より救急患者の受け渡し訓練実施


岡山市消防航空隊の隊員がを引き継ぎ、ももたろう」機内へ急ぐ



エンジンカットの後、2人目の要搬送者に対して搬送訓練を実施



14:20  搬送訓練終了、「ももたろう」はエンジンを始動、離陸し、訓練終了




 こうして訓練は無事終了した。
以下、本訓練を取材し数点コメントしてみたい。


岡山空港

岡山空港について

 岡山空港は岡山県が設置管理する地方管理空港で、岡山市北区にある。
敷地面積は187.2ha、滑走路の長さ3,000m、エプロンには大・中・小型ジェット機用7バースの他、小型機用として6バースがある。

 当初は県の南部にあったが、滑走路の延長が出来ずジェット化が実現不可なことから、1988年に移転、今年(2013年)3月で開港25周年を迎える。

 標高239.2mの高地に位置しているが、岡山市中心部から18km(バスで30分)、山陽道岡山ICからも車で約10分、とアクセスも良い。
定期路線としてANAとJALが乗り入れ、グアムや韓国、中国への国際便もある。
2011年11月にはボーイング787による東京を結ぶ初定期便も開設された。
今年は3月にエアドゥ、4月には台湾のエバー航空の就航を予定している。
乗入れ航空会社が増え、トラフィックが増大することにより、事故のリスクとは無縁ではなくなる。そうした意味で重要な訓練と言えよう。

 また、移転後の旧岡山空港は岡南飛行場として生まれ変わった。
現在は岡山県警察、岡山市、岡山県の各航空隊が拠点を置いているが、南海トラフ大地震による津波や液状化による被害想定から、海に近い岡南飛行場に比べ、高地にある本空港の利用価値が高まっている。事実、同時被災のリスク回避の観点から県の防災ヘリコプター「きび」の拠点をここへ移そうという計画もあり、費用が25年度当初予算に計上されている。そうなれば防災拠点としての活用も期待できる。



EMS(Emergency Medical Service)について

 岡山県は医療施設が充実していることでも知られる。
特にドクターヘリに関しては草分け的存在で、川崎医科大学付属病院では20年以上も前からEMSシステム構築、導入に向け取り組んできた。
今回の訓練にもその川崎医科大学付属病院のドクターヘリが参加した。
一番西側の21番スポットに着陸しDMAT隊員を降ろし、予定ではこのまま待機し搬送訓練だったが、実際の急患による要請を受け、訓練をキャンセル、すぐに離陸し現場へと向かった。
訓練はドクターヘリが待機していると想定し、そのまま継続されたが、正にドクターヘリの稼働率の高さを伺わせるエピソードといえよう。


実際の出動要請を受け、急遽岡山空港を飛び立ち現場へ向かうドクターヘリ

  最後に

 今回の訓練はマスコミの関心も高く、テレビ局や新聞社が取材に訪れた。

今、ボーイング787が発煙事故(2013/1/16)による飛行停止で話題となっているが、787の初路線は前述の通り2011年11月に岡山に開設された。
そしてその便は多いときには全便787になるなど、787の就航率が高い。
今回、発煙の為緊急着陸したのは高松空港であったが、岡山空港で起きる可能性はゼロではなかった筈、そうした意味でもタイムリーな訓練と言える。

 事故対処で一番大切なのは如何に早く初動体制を整えるかである。
訓練から得られた結果を分析、課題抽出し、次回へ反映・・これを繰り返し、スパイラルアップしてゆく・・こうした努力を重ねることにより、確固とした初動体制が構築、実行されるに違いない。


コメント

 訓練は臨場感に溢れ、まるで実際の事故現場に居るような錯覚を覚えました。
訓練を準備された方、参加された方、本当にお疲れ様でした。

今回取材をご許可頂きました岡山県岡山空港管理事務所と、訓練詳細について情報を頂きました岡山市消防航空隊にこの場を借りまして、御礼申し上げます。
2013年2月21日

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