『ヴァージン・スーサイズ』に納得がいかなかったあなたにお贈りする
「少女達のロマンティックな暴走劇」傑作選・男子の視点編
乙女の祈り/ピーター・ジャクソン(1994)
空想好きの労働階級の少女・ポーリーンが、転校してきた上流階級の娘・ジュリエットが自分と同じ感性の持ち主だと見抜くシーンがいいです。「フランス風の呼び名を自分でつけなさい」って先生に言われて、「アントワネット」って書くんだもの。 二人は勝手に騎士物語から幻の王国を作って、二人っきりで妄想の世界に浸りきって楽しく遊ぶわけですが、どんどん周囲を振り切っていくものだから双方の両親がいい顔をするわけがない。 少女達が粘土で作った架空王国の登場人物達が、等身大で現れる幻想シーンが不気味で素晴らしいです。 二人の少女のうち、ジュリエットを演じたケイト・ウィンスレットが後に『タイタニック』でブレイクしたのは有名ですが、ポーリーン役のメラニー・ルインスキーがハリウッドに渡って、『シンデレラ』『デトロイト・ロック・シティ』等に出演してまともな女優になったのはちょっと驚き。フリーキーなんで、これ一作の人だと思ってました。怪演です。
|
|
抒情派詩人として有名なジャムが、三人の少女に詩を捧げつつ綴った三編のはかない乙女達の悲劇。一番泣けるのは、孤独のあまり牧童の年若の少年と恋に落ちて子を宿す「或る情熱の娘の物語」だけど、「或る昔の乙女の物語」もすごいです。 清らかな乙女・クララ・デレヴュスは、決闘で死んだ伯父様の婚約者が式を挙げる前に子を宿したので自殺したという事実を知ったばっかりに、彼女と自分を自己同一化してその墓の前で同じ方法で命を絶つんですから! 何せ前世紀の乙女ですから、子供の作り方なんて知らない訳です。男子と抱擁し合っただけで妊娠したと思っちゃった彼女を笑ってはいけません。 先頃国書刊行会から「野うさぎの物語」との合本で、一冊全集のような分厚さで再版されましたが、乙女の皆さんには木陰で読んで泣き濡れるのに適切なサイズの、写真の人文書院版を古本屋で見つけることをお勧めします。 装丁も愛らしいし、何より旧仮名遣いというところが気分です。
|