2019年あるプロジェクトで、今回部品を支給して頂いた。(株)高儀さんの園芸
用折込ノコギリのデザインを担当する事になりました。ハニカム案 が採用された。
        
採用後、日本での意匠登録を出願し2021年8月31日登録されました。

                

 製造方法は金型をつくり・樹脂で成型、そして部品構成は従来と同じ方法を希望
されていました。樹脂成型屋さんにハニカム案を見せ、幅2mm型抜きテーパーは
10°という、条件を設定してもらった。下図の様な厚みとなりハニカムの持つ薄さ
のイメージが合わないと感じた。

            

 基本的に部品構成は金属プレス品のコアがありグリップ機能の為に柔らかい樹脂
で成型したモノを金属プレス品に差し込んで出来上がっている。一般的に金型でモ
ノを成形する場合下図の様に型が抜ける為のテーパーが必要となる。
      


結果的に金型成型では色々な問題が起こり金型成型ではやらない事となった。
元々3Dプリントでの案なので3Dプリントで実証させて欲しいとお願いし了承され
2021年10月データ作成を開始しハニカムのリブは0.53mm試作1号が完成した。   
       

試作1号により問題点が見え試作2号のデータ作成に入る事になった。
3Dプリントは2013年海洋大学のバッテリーボートL=12MライチョウN
のデザインをした時、記念としてS=1/100で製作し教授に贈った。   

          

(株)イグアス 社よりリブは1mmが良いとアドバイスを受け試作2号を製作。

       


確かに、1mmはしっかりして剛性もある。しかしハニカムの薄さと強度のイメー
ジは持てなかった。このデザインでの3Dプリントはこれ以上進めても仕方ないの
で、新しいデザインで3Dプリントを進める事にした。FDM方式ではどうしてもサ
ポート材が有りそれをカットするため切り口が奇麗ではない。
        画像出典元:(株)イグアス社
上の画像は赤色が造形部分、青色がサポート材を示す。刃を収納するスリット内に
もサポートがでる。先端に向かうにつれて曲面を付け刃を出しても視覚的に邪魔に
ならない様にしているためほぼ全面にサポート材が付く。
SLS方式の3Dプリントも選択肢として検討を進め今回の3種類を開発してみた。

Rシリーズのハニカムのリブは0.8mmとし試作をした。出来上がった印象はリブが
厚くハニカムのイメージには合わなかった。しかし、剛性も出てシッカリした感じ
は合った、最終的にはギリギリを狙いたかったので0.6mmにした。
         

造形に掛かって外周が造形できないと連絡が来た。外周は0.8mm必要といわれ。
データを作り直した。FDM方式では曲面形状には不向きの様に感じる。

         


試作1号が出来たのは直線部が主で曲線部が少なかったことが出来た理由かもし
れない。同じデータでSLS方式でも造形してみた。サポート材が不要なので両面綺
麗である。材質のせいか、剛性が弱い印象を持つ、FDMはカーボンPLA、SLSは
ナイロンである。SLS方式の場合0.8mmでの造形が適していると思われる。
          


下の3枚の写真は、エッジ処理の比較サンプル。
        


下図はRシリーズの断面で角Rや斜めの面があり片方にサポート材が付く。      
(赤線がサポート材イメージ)

           

MシリーズはFDM方式の特性を生かした形状とした。直線を多用しサポート材の切
り口も気に成らない様に配慮し、垂直段差を付け厚みの変化を持たせ握り易く形状
とした。

        


M・Rシリーズは、いつかは違う製造方法でも出来る可能性があると思う。
Dシリーズは、より3Dプリントでなければ出来ない形状を考えてみた。
360°にハニカムを配置し強度を保ち自立することを目的とした。
写真左・リブは0.6mm写真右はリブ0.8mmと補強を追加して剛性をだした。
透けた感じが弱い為0.6mm+補強を製作したが0.8mmより剛性不足だった。

              


造園屋さんの職人さんで試し切り、持った瞬間「軽〜〜い」が第一声でした。

水谷さんありがとうございました。右側ハニカムが透けてます。

室内に飾る。   
3Dプリントの多くは現状のモノ作りの試作品として活用されています。
3Dプリントでも商品の機能は満足していますが仕上がり(サポート材処理後)が
評価を下げている事は残念だと思います、が。ツルツル・ピカピカのモノ作りが
今まで地球に大きな負荷をかけてきたなら、そして安くする為に大量生産が行な
われ、多くの資源が使われ、そして、売れなければ ゴミとなって廃棄される現実
をいつまで続ければ良いのでしょうか?
「ミニマムプロダクト」モノを作らない、モノ作り。ユーザー一人ひとりの要望に
応えられるOnlyOneなモノ作りも3Dプリントなら出来る。  

         ご協力いただいた皆様に感謝、申し上げます。
 

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