1997/08/03 谷村有美 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
Sound Conifer 229 '97
A12ブロック51番
三浦敏孝, 早稲田大学
miura@muraoka.info.waseda.ac.jp

●会場まで

家が近いということでひねQさん、加藤さんとともに岸さんの車に
便乗させてもらい、2時頃富士急ハイランドに到着。先に着いてい
た三宅さんは既に会場前にいてリハーサルの音を聞いているらしい。

我々はとりあえず一つくらいアトラクションに乗ろうということで、
グレートザブーンを体験。その後一休みした後、開場時刻となった
のでコニファーフォレストへ移動。途中、卯野木さんと青野さんに
会う。またMLの顔見知りが結構来てそうな予感。

コニファーフォレストに着いたが、開場から開演まで1時間あるの
で、入口前に木陰を見つけて休む。ついでに、暑さでだらけた状態
の「使用前」の記念撮影。

開演20分前くらいに中に入る。カメラを預けて、広いスケートリン
クの中で座席はどこなのかを探す(すぐには見つからないのだ)過程
で、永井さんに会う。

入口から見て座席とステージはぐいっと回り込んだ位置にあった。
大きなスケートリンクの中で座席の並びがこぢんまりとしてしまっ
ている。最近露出のない谷村は仕方ないとして、中西圭三でも人が
集められなかったということか。唖然。

●座席

A12ブロックはステージに向かって右側のスピーカーの前である。
51番は前から4列目。前の方という意味では良い席であるが、ステー
ジと客席の間に結構広い間隔があいているのでちょっと遠い。ぎり
ぎり、ステージ上の人間の表情が読み取れる程度。裸眼視力両目
2.0をもってしても、泣きぼくろなどは望むべくもない。

●デュアルドリーム

開演時刻を過ぎて少しするとステージ上に人が出てくる。客席に向
かって手を振ったりしながら演奏準備に入っているからこれは出演
者か。デュアルドリームって顔覚えてないからよく分からないが。

野外のステージだと幕もないし照明を落として暗くすることもでき
ないからこういう風にあまりメリハリのない登場になっちゃうんだ
な。

準備に少々時間がかかっているらしくじれったくなってきた頃に
BGMが止んで、曲が始まる。但し、客はほとんど立たない。

音量はかなり出ているようだが、野外の音響特性なのか、耳への負
担は重くない。

Dual Dreamの曲というとWinter Kissしか知らないのだが、ノリの
よいアップテンポの曲とミドルテンポのバラードっぽい曲を合わせ
て4曲ほどやった。どれも同じような印象を受けたが、知らないアー
チストの曲とはそんな物かもしれない。

但し、歌や演奏の質について言うと、声はちゃんと出ているしテン
ポや音程は外さないし楽器の演奏もちゃんとしているしで、まあ要
するにちゃんと仕事をしていて、安心して聞いていられる4曲だっ
た。

MCは1曲ごとに入っていたが、漫才の枕のような感じで、これも気
分よく聞ききることができるものだった。

例によって、いいんだけど惚れ込んだりはしない類の優等生的アー
チスト。



●幕間

セット全部を入れ換える大掛かりな幕間がじれったい。

ステージの裏から、谷村とバンドの物と思しき、気合いを入れる掛
け声がして、それに客からの拍手が答える。野外だとこういうこと
もあるのね。いいぞ、いいぞ。

●谷村有美

やがて、バンドメンバーが現れて配置に着く。ドラマー以外は去年
のツアーと同じメンバー。カズと岩見さんに客から声援が飛ぶ。

ドラマーは太った黒人で、この人が石垣・蒜山とドラマーを勤めた
人なのかなと思う。

キーボードの中村さんがヘッドセットのマイクをつけている。ベー
スの渡辺さんのところにもスタンドのマイクが立っている。そうい
えば、コーラスがいないから、この人たちが何かコーラスをやると
いうことか。ほほう。

中央の谷村の位置にはさすがにピアノは置いてなくて、「愛は元気
です。」の頃のハートのYTロゴ入りのRolandのキーボード。

0. オープニング

たぶんハイタムだと思う(スネアじゃないよねあの音は)んだが、そ
のロールから始まって、去年のツアーのオープニングの曲(旋律が
半音ずつ下がっていく主題のやつ)を、全部の楽器が参加している
ところから始めるような縮小版といった感じ。

PAの調整の具合なのか、耳にはさして負担でないのに、バスドラム
の低音が体にびりびり響く。肺と気管で共鳴している感じ。但しベー
スの音はほとんど体に響いてこないというか、全く目立たない。

1. はじめの一歩

谷村登場。青いノースリーブのぴったりしたのに、水色の細かく一
様でない縦縞の、光る素材のタイトなロングパンツ、それに白いヒー
ルのサンダル。髪型は「愛は元気です。」の頃のに近い。レイヤー
もどきの大きなウエーブのかかったワンレングスというか。

表情は明るいので一安心。蒜山ではどうだったか分からないが石垣
では機嫌が悪そうだったというレポートがあり、今日も今日とてあ
まり客の入りが良くないので心配していたのである。

声はちゃんと出ている部類と言えると思う。しかも、無理して出し
ている感じはしない。去年のツアーで聞いて暗澹となったあのとがっ
た声ではない。ややノイズ成分が多いように感じるのはPAの具合か。

目線も私のいる辺りへしばしば飛んでくる。うれし。

サビで渡辺さんと中村さんが何やらコーラスというか、低い声で喋っ
ているというか、そんなようなことをしている。マイクはこのため
だったわけだね。

2. 優しいのにも程がある

やはり声はちゃんと出ている部類。但し、1曲ごとに水を口にして
いるので、絶好調というわけでもないのか。

歌詞間違いあり。しかもかなり派手。

サックスソロのところで暴れん坊・藤岡さんがこっちへ飛んでくる。
ヒゲが全くなくなっていて、髪も短くしてさっぱりした感じ。年々
若くなる人だ。

この辺でか、岩見さんがトラブルが出たらしく演奏途中でギターを
替えていた。弦が切れたようには見えないのだが、何だったんだろ
う。結局、岩見さんはこの日を通して合計4本のギターをとっかえ
ひっかえ使っていた。

3. 最後のKISS

2コーラス目のギターのおかず(「灰皿も」のあとで「チャラララッ」
と入るあれ)が、なかった。入るはずのところで谷村と顔を見合わ
せていたから、本来あるはずではあったんだろう。これも何やらよ
く分からないトラブルのせいか。

サビの腕振りのお約束では反射的に手が動く。

(MC)

ピアノの前に座って一言、「暑いやねー」

4. 恋に落ちた

ごそごそと座り始めたところへ、テンプルにフックパンチを食らっ
た感じ。そう、ここでこれが来ることを忘れていると、がつーんと
きて嬉しいんだよね。声もとがってない。嬉しい。

(MC)

挨拶。

「晴れたコニファー初めてなんです」(笑)

「富士山独り占め」ほんとに振り返ると富士山のてっぺんが、コニ
ファーのスタンドの向こうの森越しに見える。振り返りざま、横で
夕日を受けてサーモンピンクに染まってる雲が美しい。

「フジヤマIIには乗りましたか? 私はあの列の長さにめげて乗りま
せんでした。」ほんまかいな。リハーサルやってたんじゃないのか。
(^^;

5. せめてものI Love You

いつ聞いてもこの切って落としたようないきなり全部の音が鳴り始
める前奏には馴染めないんだが(^^;、まあいい。

ボーカルに注目する限りは、これって結構いい曲なんだよね。テン
ポもゆっくり目になっていて、多用される高音をじっくり楽しめる
感じ。

武道館の時のピアノ一本のを聞いちゃった人にしてみればもの足り
ないということになるんだけど、あれは制作途上のデモ版だし、そ
れをあのまま聞かせちゃったのもツアーファイナル用の飛び道具と
いうことだったんだろう。だから、イベントにはそんな飛び道具は
持ち出さないという戦略を取るのもまた見識ではあるわけだ。ほら、
「最後のKISS」はデモテープの段階ではスローなピアノの伴奏だっ
たって話があるじゃない。で、あれはあれですごくよさそうだった
じゃない。それと同じだって。

6. 一緒に暮らそう

クリスタルボイス。高音。スキャット。うれし。

7. Oh, My God!!

アレンジを少しいじったのか、それともPAの調整の具合なのか、渡
辺さんの手元を見ながら一生懸命耳を澄ませてもベースの音がほと
んど聞こえなくなっている。今度は却ってもの足りない感じ。そし
て、お約束の頭上拍手で反射的に体が動く。

アレンジがこんなだとピアノソロかなんかないかなと、これまた条
件反射的に期待してしまうが、ないままさらっとした終わり方。う
む。これはこれでいいんだ。

8. 好きこそ物の上手なれ

間奏で各メンバーにソロを執らせながらメンバー紹介をやったよう
な気がする。

谷村がキーボードに着いていたからこのあとInstrumental part I
へ続きでもするとすごいんだけどなあ、とちょっと期待するが、そ
うはならない。

9. しあわせのかたち

極めて印象薄いんだが、この辺は一連の「ノリノリの部」だからそ
れでいいのだろう。(^^;

10. 信じるものに救われる

後半、右手に水のボトル持って歌ってる。(^^;

11. 午前0時のオアシス

最後にドラムソロ。さすが外人さん、手数多い多い。「仕事人」っ
て感じだ。

演奏を終えて、改めてメンバー紹介。概ね去年のツアーと同じだが、
ドラムはケニー・モーズリー。

秋にシングルとアルバムが出てツアーをやるという早口の告知の後、
続いて中西が出てくることだけ告げてバンドごと引っ込む。

●幕間

ちょうど日の入りにかかるところで、みるみる暗くなってゆく中、
セット換えの時間に久しぶりの谷村の余韻に浸りながら感慨にふけ
る。

コンサートの内容としては、イベントだからこんなもんだろう。し
かも、谷村、ちゃんと仕事していた。声は出てるし、「優しいのに
も程がある」以外では歌詞間違いに気づかなかったし、ピアノソロ
がなかったから目立つミスタッチも見当たらなかったし、バンドの
演奏もまとまっていたし、谷村の表情も明るかった。

ある意味、去年のツアーの完成形と言えるのではないだろうか。思
わず「去年のツアー全部がゲネプロだったみたいだ」とアンケート
に記入してしまった。

去年のツアー以来、山崎まさよしや露崎春女にはまったりなんだか
んだで谷村の曲から離れている時間が長かったせいか、久しぶりに
谷村の顔を見、声を聞いたことで嬉しくなっていて、メニューに目
新しいところがなかったことよりは、今日の谷村がちゃんと仕事を
していた好印象の方が勝っている。

●中西圭三

中西圭三の曲は全然知らないので全くメモが取れていない。

ただ、曲のほとんどはその昔日本武道館で行われたJT Super Sound
でも聞いた気がする。

中西圭三の音楽活動がどうなっているのか全然知らないのであまり
憶測で好い加減なことは言えないが、アルバムのリリースという形
で曲の量産をしていないということなのか、それとも、イベント用
の構成というのは時間が経ってもそうそう変わるものではないとい
うことか。

全部で10曲程度の中にバラード2,3曲を埋めてあとは全部アップテ
ンポでノリノリの曲でまとめてあるという、いかにもお祭り的な構
成である。

お祭りということで、拳を突き上げてジャンプしたり、手を挙げて
左右に振ったり、合唱したりと、お約束も多い。

MCの謙虚さ、丁寧さも相変わらずで、キャーッという黄色い声援に
対して「大丈夫ですか?」といなしてみたり、人の少なかったCブロッ
クに対して「謙虚な盛り上がりをありがとうございます」とやって
みたり、元々まじめな人なんだろうと感じさせる。

客を煽るときのしぐさがどこかぎこちなかったり、「なんでこうな
るの」ジャンプやその派生形のような足を蹴る踊りや欽ちゃん走り
などを見て、あまりダンス向きでないというか、しなやかには体が
動かない人なんだろうなあと思ってみたりする。

まあそういったところは面白いコンサートとして楽しめるんだが、
一つ気に入らなかったことは、ボーカルが何を歌っているのか分か
らなかったこと。日本語の歌で言葉が聞き取れないというのはかな
り不満が残る。これが中西流なのか、それとも単にPAの調整の具合
なのかは不明である。

アンコールで中西がバンドとともに現れたときどうもどこかで見た
ような兄ちゃんがいると思っていたら、去年の谷村のツアーにドラ
ムで参加していた山下まさとさんが中西バンドのドラムに入ってい
た。谷村バンドのドラマー変更はそういうことだったのかと納得。

アンコールの2曲目「Ticket to Paradise」の後半で、ステージの
左側の袖に猿の縫いぐるみを着た人がいたのでそちらに気を取られ
ていたら、いつのまにかステージ中央に、黄色いTシャツに白いデ
ニムかコットンのつなぎを着て右手にウレタンのでっかい手をつけ
た谷村が現れていた。その後コラボレーションを期待したが、曲が
終わると引っ込んでしまってそれっきりだった。

最後に、「有美ちゃんもう帰っちゃった? デュアルドリームも帰っ
ちゃった?」としっかり配慮を見せ(やっぱり中西圭三ってまじめな
人だ)ながら中西とバンド全員が前に出てきて並んで一礼するとこ
ろで右手に花火がひとしきり打ち上がり、そちらに注目していたら
中西「こっち見ちゃいねえ」(笑)。

●終演

イベントでダブルアンコールはさすがにあるまい。しかし終了のア
ナウンスがなかなか始まらない。ま、ステージの明かりも落ちてい
るし終わりだろうと荷物をまとめて立ち上がって気がつくと、係員
がメガホンで帰りのバスの案内やら出口への経路の指示やらを怒鳴っ
ていた。

出口に向かっててれてれと歩いていると、名古屋方面をはじめMLの
見知った人たちがいるわいるわ。遠く富士急までわざわざというか
ちゃんと見に来る辺り、「中西圭三のライブを見に来た」などとう
そぶきながらもみんなまだ谷村を信じてるんだよね。まだ盲目的に
恋してる時期の人が聞くと怒り心頭に達するような評価ばっかり口
にしてるけどさ。

もちろん、私だって新しい曲・新しい趣向を見せて欲しいとは思っ
ているよ。例えば、同じイベントでも趣向の全く違うJam for Joy
みたいなのに果敢にチャレンジしてくれれば、ミュージシャン谷村
として得るところも大きかろうし、すぐに互角とまではいかなくて
も、質で攻める人たちの中である程度やっていけるだけの潜在的な
ポテンシャルはあると思うんだ。近年のコンサートに見るジャズフュー
ジョン指向(正確な表現じゃないかもしれんがまあそんなようなも
の)もそっちを向いているように見えるし、バンドメンバーは昔か
らずっとそっち方面の猛者ばっかりだし、谷村自身のポジションと
してもアマチュア時代にまで遡ればポップシンガーというよりはフュー
ジョン畑により近いと言えると思うんだ。

でも、サウンドコニファー229はお気楽お祭りイベントなんだから、
新しいことをやってくれるなんて期待しちゃダメだって。ちゃんと
仕事をしてくれさえすればいい。このイベントはそういうものでしょ。

人数がいることが分かったので「使用後」の記念撮影をすべく、急
いで受け付けへ向かう。預けていたカメラを受け取って外へ出、出
口脇の人通りを外れたところに集まる。なに、結局20人くらい来て
るんじゃないの。

ハイランドリゾートホテル内の中華料理屋「中国菜館」の料理がお
いしいという話を聞いていたのでそこで食べて帰りたかったのだが、
翌日が月曜日で勤め人は早く帰りたいし、富士急ハイランドの周り
には飲めるところが全くないということで、特にオフミなどはやら
ず、三々五々帰途につく。岸さんの車で来た我々4人はまだたむろ
している集団を置いて一足先に富士急ハイランドを出る。

帰りの中央道は混んでいて(渋滞30km)、談合坂SAのすぐ次の出口か
ら一般道で横浜へ戻ったころには日付をまたいでいた。

以上

1997/08/06 04:03


Back to:


Copyright (C) 1997 by MIURA Toshitaka
All rights reserved.

last update: $Date: 2007/11/24 06:49:31 $