1997/12/23 山崎まさよし 渋谷公会堂
'97 総決算ツアー "天然パーマ"
2階12列50番
三浦敏孝, 早稲田大学
miura@muraoka.info.waseda.ac.jp

●会場まで

17:30ごろ渋谷公会堂前につくと公会堂前の広場は人で真っ黒になっ
ている。

顔見知りを探して人の群れの中へ分け入る。広場の中央付近で三宅
さんと久美さんと伊藤義典さんとPENさんを見つけ、そんなような
人数で、入場させるために並ばされている大群を後目に少し開けた
場所へ移動し、渋谷公会堂を背景に「使用前」の記念撮影。

その後、チャットの常連何人かと合流してしばらく入口前でたむろ
していた。

並んでいる人がある程度捌けてから入場しようと思ったら、入場で
きたのは開演予定時刻に近くて、やや焦った。

改札を経、カメラを預けてホール内へ。

●座席

2階の12列目といったら凄い後ろかと思っていたが、10列目くらい
までは両翼の張り出しの部分だけで、私の席は実質前から2列目、
しかも通路脇で、前の列の通路両脇の二人が立っていても私が座っ
たままステージを見ていられる。昨日2時間立ちっぱなしのコンサー
トで足腰に疲労がたまっているのでラッキーである。

●開演前 - 18:03

ステージ奥には、大きな字で「天然パーマ 山崎まさよし」と筆で
書いたらしい掛け軸が下がっている。ステージ上には、向かって左
手にドラム・パーカッションのセット、右手にシンセサイザが置か
れている。あれ、シンセかいな。山崎の曲にシンセが合うのか?

男の声でコンサート開演にあたってのお客様へのお願いのアナウン
スが流れる。アナウンスを生業とする人の声ではない。今日の出演
者だろうか?

「ざわざわすんな!」……聞いていて非常に疲れるしゃべり方をす
る。これがどうやらユースケ・サンタマリアというもののしゃべり
方であるらしい。

山崎の誕生日関係の企画が主催社側で用意されているという話を聞
いていたので、入口でもらったチラシの束の中からそれ関係の紙を
探す。黄色い紙がはさまっていたけど、こういう風に紙の束の中に
重要な注意を埋もれさせてしまっていたらきちんと客に意図を伝え
ることができないと思うのだが、それぞれ勝手なことを考えている
に決まっている客の動きをちゃんと制御できるのだろうか?

●前説 - 18:12

場内が暗くなり、ステージにスポットが当たり……あれ、出てきた
のは山崎じゃなく何やら怪しい兄ちゃんだ。光沢のある素材の青い
スーツに、首に長いfuryなショールをかけている。ユースケ・サン
タマリアである。

ユースケは山崎のことはほぼそっちのけで自分のネタを披露し、客
もそれによく反応している。

「馬鹿にしやがって、九州人をなめるな!」……罪のない、しかし
個人としてはあまり親交を持ちたくないタイプのキャラクター。こ
ういうタイプの芸人というのは確かにあまり見かけないから、もの
珍しさの部分でファンを多く獲得することができるのだろう。

しかし、ユースケに前説をやらせるとはまた豪華な演出である。もっ
とも、出演を依頼したというよりはユースケが勝手に馳せ参じたと
いう印象があるが、結局のところ誕生日絡みの特例だろうか?

●開演 - 18:18

サイレン風のシンセ音(しかも人手による演奏でなくシーケンサま
たはテープの音らしい)の入った、音の厚いオープニング。赤紫の
回転スポットライトの光条が数本、斜めに振り回されている。いつ
から山崎はテクノ風味入り普通のロックバンドになったんだ。

ガタイのいいスキンヘッドの兄ちゃん(ドラムの江川ゲンタさん)が
腰を落とした低い姿勢でスポットライトを両手で持ってステージ左
から現れ、手にしたライトの光条で客席をなめる。映画なんかで火
炎放射器で宙をなめるキャラクターっていなかったっけ、何かそん
なような雰囲気の、ゲンタさんって素朴で恐いキャラクターだ。そ
の後ろに山崎がギターを片手に下げて中腰でひかえている。

いつのまにか手持ちスポットライトは片づけられていて、ゲンタさ
んとほとんど同じガタイで同じくスキンヘッドの中村キタローさん
とともに3人が配置につく。

1. ガムシャラバタフライ

オープニングのイントロを知らないので、歌い始めるまで何の曲だ
か分からなかった。この曲はシングルを買っていないから殆ど聞い
たことがないのである。しかし、このイントロで会場の何割かが拳
突き上げをやっている。みんな、そんなものどこで覚えてたんだ
(今ツアーは何度も足を運んでいる人が多いということですね)。

山崎の弾いているのがアコギとは信じられないくらい、アレンジが
ヘヴィだ。ベースとドラムの音が腹に響く。そもそもギターの音も
やや金属的(いや、ま、そういうものなんでしょうけど)。

1コーラス歌っただけで間をあけずすぐに次の曲へ突入。あれあれ
あれ、この曲ってこんなに短いのか?

ゲンタさんって手数が多いドラマーなのだな。やたらと存在感が強
烈だ。

ここで山崎が挨拶をしたっけ? 「天然パーマ、千秋楽〜」

2. アレルギーの特効薬

ゲンタさんのドラムの強烈な主張の前にあってもブルースハープの
音が存在感を失わないのは、アレンジの妙なのか、それともPAの技
術なのか。

3. アドレナリン

ノリノリ。しかも、音が厚い厚い。

渋谷公会堂くらいのホールでやるとなるとさすがにギター一本きり
だとステージが淋しいし、3ピース揃えたら全体の半分以上は脇の
二人にも働いてもらわないと費用対効果が低いということは分かる
が、あまりにも普通のロックバンドになってしまうとそれはそれで
一抹の寂しさがあるのだな。ゲンタさんの強烈な存在感のドラムを
聞きながら、そんなようなことを感じた。

(MC)

「いやー、ほんとに、誕生日ありがとう」いきなり、主催者企画の
誕生日企画をぶっつぶしてくれる開口一番。「やっぱこういうこと
は最初にやっとかな、な。」あーあ。スタッフ凍りついてたりしな
いか? (^^;

山崎って自分の誕生日を祝おうとかあまりしなさそうなキャラクター
なのに開口一番これを言うとは意外。スタッフが誕生日企画のため
にわざと誕生日に触れないでいたから自己主張するようになっちゃっ
たとかいう裏があったりするのかしら。それとも、入り待ちでファ
ンにさんざん祝われたりしたのか?

朝の7時に生まれたらしい。で、生まれたとき母親は熊の子かと思っ
たらしい。

MCの間にキタローさんのところに太鼓が一つ置かれる。あれなんて
いうんだろう?

次の曲の紹介「おはよう〜」

4. Good morning

リズムパートがドラムからパーカッションになって全体にかなり耳
当たりのよい柔らかい音になる。

5. ピンボール

完全に「一休みの部」になっている。オザケンでも聞いているよう
な軽い気分。

座って聞く。いやあの、昨日も立ちっぱなしのコンサートで足腰が
弱ってるんですってば。

6. 妖精といた夏

ステージ上、キャストの足元の高さでフラッシュランプが5つくら
い点滅。箱が大きくなると視覚効果に頼る部分が大きくなるんだね。
ま、ライブハウスと違って客の視野に占めるステージの割合が低い
から、こうやって刺激の強い視覚効果を使ってステージに集中させ
ようという意図も分からないでもない。でも、安易ではある。

キタローさんの弾くシンセサイザの音に安らぐ。なんかCDにそっく
りのアレンジ。

7. 心拍数

ほう、これがきますか。

(MC)

東京で雪が降ったろ。あれは「ちょっと頼むわ」と自分が頼んだの
だ(誰にだ)。

8. 月明かりに照らされて

9. 名前のない鳥

この辺の緩急のリズムってよく分からない。

(MC)

座りませんか。

そう言って、客が座りきるまで適当にギターをつま弾いて繋ぐ。こ
ういう心配りみたいなものはいいね。

10. あじさい

(MC)

「弾き語りってのはいいですよね。女の子一人のためにやるとこれ
が効きます。ええ。何を隠そう、俺も電話口でやったことがありま
す。何でそんなことをやるに至ったのか、(ここで急に投げやりに
声を荒げる)今から教えてやるわ!」

暗転して寸劇へ。山崎はドラムへ、ゲンタさんは袖へ、キタローさ
んはメガネをかけて何やら台本を手にする。

高校の音楽室。山崎はメタル少年。「いやー、ドラムは楽しいなあ」

左脇のクリスマスツリーのはりぼての影から、ゲンタさん扮する学
校のマドンナ「ゲン子ちゃん」が制服姿で登場。「クリスマスパー
ティー、絶対来てね」

ゲン子ちゃんと入れ換わりに、ユースケ扮するジャージ上下のユー
子ちゃん登場。「絶対来んのよ!」「生放送であんたの電話番号言っ
たっていいんだから!」特別出演らしく段取りが頭から消えていて
アドリブ連発のユースケ。

「困ったなあ、ダブルブッキングだよ」一人になってドラムでの作
曲に苦しむ山崎。

再びゲン子ちゃん登場。山崎「君のために曲を作ったんだ」ドラム
出に乗せた歌でゲン子ちゃんへの告白。キタローさんのナレーショ
ン「これがあの『セロリ』を作った男の記念すべき一作目である」
山崎「だめだ、やっぱりドラムじゃ曲は作れないよ」山崎と入れ換
わりにゲン子ちゃんがドラムに入り、山崎より上手にやってみせる。
ナレーション「完全に山崎の負けである」

「もうドラムなんてやめた。俺は今日からギターを弾くよ。ちょっ
と強引だけど、二人でパリに行こう」

11. 二人でPARISに行こう

曲に入ろうとするところへユー子ちゃんも出てきて強引に参加。手
にマラカスを持ってゲンタさんの横で踊る。

終わって、ユースケが引き際にかつらを取って投げ捨て、「ちきしょ
う、覚えてろよ! これでも俺はビジュアル系なんだからな!」

結局、あまり位置づけのよく分からない、長い寸劇だった。いや、
ま、位置づけはどうでもよくて単に「やりたかった」のかもしれな
いけどね。でも、ちょと間延びして途中で飽きてきたんだよな。席
が後ろだったせいかな。

ただ、長いMCで客からの声が収拾つかなくなってしまうのよりは、
こういう寸劇はまだしも客がおとなしく見ているだけましなのかも
しれない。

12. ステレオ

13. セロリ

ちょっと変わったアレンジになっていたのが面白かった。なんとい
うか、サンバ風というか、そんな感じでリズムパートが強く出てい
て。

14. 昼休み

15. Fat Mama

16. パンを焼く

17. ヤサ男の夢

いつもならカズーを吹き始めるところで、後ろへ一歩下がってテー
ブルを見やってまたマイクのところへ戻る、どうやらカズーが見つ
からなかったらしい動きをする。んで、ギターだけで繋いでいると……

両袖からスタイルのいいお姉さんたち(カウガールズ)が出てくる。
両袖から一人ずつ次々に出てきて、きょとんとしている山崎に、テ
ンガロンハットをかぶせ、パーティー用のでかい蝶ネクタイをつけ、
グラスに入ったシャンペンを渡し、鼻の下を拭って付け髭をつけ、
最後にカズーをくわえさせる。

いいように加工されてゆく間、山崎があっけに取られているところ
を見ると、この企画は山崎の知らない誕生日企画だったのだろうか。

で、カズーもくわえたことだし吹き始めるのかと思ったらまだ先が
ある。一呼吸おいて袖からユー子ちゃんが出てきて山崎の口からカ
ズーをもぎ取り、代わりにチャルメラをくわえさせる。

面白い、面白い。チャルメラもカズーとよく似た奏法で鳴らすのだ
ろうか。似たような音がする。

18. ガムシャラバタフライ

また回転スポットライトが回ってサイレン風のシンセ音の混じった
イントロ。

今度はフルコーラス歌う。そうか、コンサート本編がガムシャラバ
タフライで挟んでとじてあるわけですね。

19. One more time, One more chance



背景のスクリーンにでっかい月が浮かぶ。「月とキャベツ」のビデ
オが発売になっていたり、また上映を始める映画館があったりする
ことに因んであるのかな。

(幕間) - 20:18--20:20

山崎が一人でギター片手に登場。

入場時に渡された注意書きにあったのは単に「アンコールでBGMが
流れたら歌え」というだけで、いつ流れるのかは示されていなかっ
たのだが、今日の初っぱなに山崎が自分で誕生日ネタを持ち出して
しまったし、見てる間に山崎は何やらギターをつま弾き始めちゃっ
たし、これはもしかしたらスタッフ企画の合唱はなくなっちゃった
かな、などと思っているうちに、前の方から客が勝手にHappy
Birthdayの合唱を始めてしまう。

客が歌い始めると手を休めて聞く山崎。「ありがとう、ほんとに」

ここでクラッカーを鳴らした人がいたそうな。ダメです、会場内に
爆発物を持ち込んでは。

20. White Chirstmas (ギターによるインスト)

21. ツバメ

これはしばらくライブで聞いたことがなかったな。

ここでゲンタさんとキタローさんが出てきたか。

「ここらで一曲吹こうか」一曲吹くって何のことだ、と思っている
と、ブルースで一曲うなり始める。

世の中は面倒なことだらけ、年金の申告とか。だけど逃れられない
戸籍上のしがらみみたいなものがあってfeel so blue……

22. 長男

面白い、面白い。オリジナルバージョンの面影をこういう前振りと
いう形で再現してくれるというのは、ブルースマンならではのお遊
びだね。

「さあ、最後、盛り上がっていこうか、根無し草〜」と、山崎一人
で演奏に入ろうとした矢先に、オルガン系のべたっとした音でBGM
が鳴り出すとともにステージ奥のスクリーンが開く。驚いて周りを
見回す山崎。

ははあ、実はこれが主催者による本当の誕生日企画なわけだな。聞
いているうちにBGMがHappy Birthdayであることが判明。客も歌い
出す。ステージ奥のスクリーンには「Happy Birthday Masayoshi
Yamazaki」の文字。座り込む山崎。

これだけやったらあとはケーキぐらいか、と思っていると、案の定、
袖からワゴンに乗ったケーキが出てくる。ケーキはB4ないしA3くら
いの四角い大きなもので、火のついたろうそくが沢山(たぶん26本)
立っている。ワゴンを押して出てきたユースケの後ろに、さっきの
お姉さんたち5人がぞろぞろとついてくる。

ユースケ「山ちゃん、おめでとう」「自分で煽って歌わせるし。何
回歌わせる気だって思ったよ」

ろうそくの炎を吹き消す山崎。「ドン!」と音がして、ステージ両
脇から銀色のテープが打ち出され、上から銀色の紙吹雪が振る。

23. 根無し草ラプソディー

ユースケとカウガールズが曲に合わせて踊る。ちょこまかと動き回
るユースケ。いちびり小僧だな、ユースケって。

曲が終わるとユースケとカウガールズは引っ込む。

ゲンタさんが前へ出てきて、何やら客席へ投げたり、腕を振り回し
たり、顔を横にぶんぶん振ったりする。何がしたいのかよく分から
ないまま見ていると、またドラムに戻って続きを演奏し始める。山
崎もハープとマイクだけ持って吹きながらステージ上を暴れ回る。

(幕間) - 20:45--20:46

3人が引っ込んだ後も、ステージ中央のマイクスタンド辺りにスポッ
トで明かりが残っていて客電が点かないまま。なので、ダブルアン
コールがあるだろうと期待して拍手を続けていると、余り時間をお
かずに山崎が一人でギターを手に出てくる。

こんなものが用意されているとは知らなかった、昨日大阪に行って
いたのが敗因だな、という意味のことを言う。「やってくれたな」
客「イエーイ」

24. コイン

去り際に「メリー・クリスマス!」……あまり山崎に似合ってない
台詞。

以上、24曲。

●終演 - 20:35

山崎が引っ込んでもまだ拍手が鳴り止まない。これはまだアンコー
ルがあるかと期待するが、追い出しのBGMがかかる。インストの
「ピアノ」である。BGMが終わってもまだ客に動きがないのでひょっ
としてまだ先があるかとまた期待するが、さすがに何も起こらず係
員による追い出しがかかる。

外へ出て、「使用後」の記念撮影。結局20人近くいたんじゃなかろ
うか。

さて。

予想以上にシーケンス制御のシンセサイザまたはテープの音が多かっ
た。そして、視覚効果にも大きく頼っていた。全体として、弾き語
り「も」やる普通のロックシンガーになってしまった印象。

いや、違うな。逆だ。下積みの時期をバンドで過ごさなかっただけ
のことなのかもしれない。一人だったから、手に馴染んだギター一
本でやってきただけのことで、箱が大きくなれば好きなだけ楽器を
増やして音を厚くしていけるわけだ。現にCDではあんなに音がいっ
ぱい鳴っているじゃないか。元がメタル少年だったのなら、音を厚
くしたときアレンジがヘヴィになるのも理解できる。

つまり、本当はこうだ。「ギター一本『でも』できる」それが山崎
のスケーラビリティなのだろう。

以上

1997/12/30 17:26


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