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(Japanese Text Only)

 航空法改正。ドクターヘリ、どこでも着陸可能に!

 

 NHKで非常に興味深いニュースを放映していたので、掲載いたします。

概要

 民間のヘリコプターであるドクターヘリは警察や消防のヘリコプターと違って事前に申請したヘリポートだけにしか着陸することができず、これが運用面での障害となっていた。
この規制が来月2月1日より緩和されることとなり、ドクターヘリが救急患者により近い場所に着陸して、医師が治療を始めることが出来るようになると期待され、救急医療の面で大きな前進と受け止められている。

 

ニュース内容(抜粋)

 救急患者の命を救うためには出来るだけ早く治療を始めることが大切。 医師がヘリコプターで患者の元に駆けつければ、患者が救急車で運ばれてくるのを待つのに比べて治療開始までの時間が大幅に短縮されることが期待されるとして既にドクターヘリの試験運航が始まっている。
 しかし実際に試験的な運用を進めて行く中で日本国内のドクターヘリの運用には大きな障害があることが浮き彫りになってきた。
即ち「ヘリコプターが離着陸できる場所が限られている」ということである。

航空法では民間ヘリコプターの離着陸は事前に申請されたヘリポートだけに厳しく制限されている。
この為現状ではヘリコプターは救急患者がいる所から離れた学校のグランドなどに着陸し、そこまでは救急車で患者を運ぶという方法を取らざるをえない。 これではドクターヘリの利点を生かし切れないとして専門家の間では何とか規制を緩和してほしいとの声が上がっていた。
こうした声を受け、運輸省では航空法の施行規則を改正して「消防などの要請に基づいてドクターヘリが出動する場合は、各ヘリコプター会社が定めた安全基準を満たした場所であれば原則としてどこにでも着陸出来る」よう改めることにしたもの。

施行規則の改正は2月1日からで、これで日本のドクターヘリは安全な場所を選んでどこにでも着陸できる欧米並の水準に一歩近づくことになる。

以上、2000年1月7日NHK 朝のニュースより抜粋



補足

 本ニュースはNHK静岡放送局の取材に基づくものであり、昨年(99年)4月より浜松医師会など18の病院が消防機関の協力を得て聖隷三方原病院をベースに無償の救急搬送を開始したベル206LEMS機が画面に映っていた。
聖隷三方原病院は中日本航空(株)と(株)日本救急ヘリコプターを設立、EMS活動を積極的に行ってきた、いわばドクターヘリの草分け的存在である。
しかしながらこの試みはドクターヘリとはいっても搬送事業の扱いを受け、今までこのヘリコプターには航空法第81条の2項は適用されていなかった。


中日本航空(日本救急ヘリコプター)のベル206L-1 (JA9360)


 今回の緩和によりこのヘリコプターが救急患者により近い場所に着陸することが出来るようになる訳で、まさに関係者の長年の努力が実った、素晴らしい成果であると評価したい。

 ちなみに厚生省の試行事業として昨年10月から運航が行われている川崎医大と東海大学病院をベースとするドクターヘリは航空法第81条の2項の適用を受けている。これは初めて民間機が適用された例であり、今回の改正もこのドクターヘリの救命成果を踏まえたものであると推測される。

編集部より

 救急ヘリコプターの着陸場所制限の緩和については当Rotor Windでも「EMSにおける緊急提言」などで盛んに提唱してきました。
今回の改正を大きな拍手をもって迎えたいと思います。


補足2 以下は専門的になりますので航空法に興味のある方のみご覧下さい。

「航空法では民間ヘリコプターの離着陸は事前に申請されたヘリポートだけに厳しく制限されている。この為現状ではヘリコプターは救急患者がいる所から離れた学校のグランドなどに着陸し・・・」と本文にあるが、

これは下記の航空法第79条を指している。

航空法第79条(離着陸の場所)
「航空機(運輸省令で定める航空機を除く)は、陸上にあっては飛行場以外の場所において、水上にあっては運輸省令で定める場所において、離陸し、または着陸してはならない。但し、運輸大臣の許可を受けた場合は、この限りでない」

そのため飛行場(ヘリポート)以外の場所(この場合学校のグランド)に着陸しようとするときは、上の但し書きによって運輸大臣の許可を取ることとなる。これが場外離着陸場申請である。

この場外離着陸の許可を受けようとする者は、事前に当該地の現場調査を行い、航空法施行規則第172条の2に基づき、「飛行場外離着陸許可申請書」を運輸大臣に提出しなければならない。(詳しいことはここでは割愛する)

しかしこれでは緊急、救助の場合の活動を妨げることになるので、以下の特例が設けられている。
これが、航空法第81条の2「救助のための特例」である

航空法第81条の2(捜索または救助のための特例
「前3条の規定は、運輸省令で定める航空機が航空機の事故、海難その他の事故に際し捜索又は救助のために行なう航行については、適用しない」

 前3条の規定とは以下を言う

第79条(離着陸の場所) 第80条(飛行の禁止区域) 第81条(最低安全高度)

さらにこのような特例が認められる航空機は、航空法施行規則第176条によって次のように定められている。

「航空法第81条の2の運輸省令で定める航空機は、次の通りとする。
  1.運輸省、防衛庁、警察庁、都道府県警察または地方公共団体の消防機関の使用する航空機であって捜索または救助を任務とするもの
  2.運輸省の依頼により捜索または救助を行なう航空機

よって総括すると
捜索または救助のための特例として81条の2が適用される航空機(運輸省、防衛庁、警察庁、都道府県警察または地方公共団体の消防機関の使用する航空機であって捜索または救助を任務とするもの、つまり自衛隊、警察、海上保安庁、消防・防災ヘリ)は、飛行場以外の場所であっても運輸大臣の許可なくして離着陸することができ、また危険区域など飛行禁止区域の上空を飛ぶことも、更に最低安全高度を切って低空飛行をすることも、認められるということである。

しかし、これで分かるようにドクターヘリはこの“特例が認められる航空機”には入っていない。

今回の改正は条文そのものを見ていないので現時点では推測の域を出ないが、この静岡のドクターヘリにも航空法第81条の2項を適用するという限定的なものではなく、施行規則の改正とあるので、航空法施行規則第176条を改正、これにドクターヘリを含めるか、
新たに施行規則のどこかに「消防などの要請に基づいてドクターヘリが出動する場合は、各ヘリコプター会社が定めた安全基準を満たした場所であれば原則としてどこにでも着陸出来る」という一文をつけ加えるものと思われる。

 

以上、航空法に関しては一部「航空の現代」の「ヘリコプター防災と航空法規」を参考にさせて頂きました。

2000/1/11


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