2008年10月1日(水)〜5日(日)、2008年国際航空宇宙展(ジャパンエアロスペース2008)(略称JA2008)が行われた。

 これは社団法人日本航空宇宙工業会他が主催するイベントで、4年に1回実施されている。今年は前回に引き続き、神奈川県横浜市みなとみらい21地区のパシフィコ横浜が会場となった。5日の期間中、航空宇宙に関する様々なものが展示され、ヘリコプターの実機についてはNH90、EC135、ベル429、アグタA109 Powerの4機が展示された。

また屋内展示だけでなく、10/4、10/5のパブリックデーには各種ヘリコプター及び固定翼機のフライトが臨港パーク前の海上で実施され、より興奮を盛り上げた。

会期は下記の通り
トレードデー :1日(水) 〜 3日(金) 10:00 〜 17:00
パブリックデー:4日(土)、5日(日)  10:00 〜 17:00

Part1 NH90特集

 ユーロコプタージャパン(株)は10月1日付プレスリリースで、「ユーロコプター、「2008年国際航空宇宙展」への出展により防衛市場への取り組みを強化」と発表。NH90の防衛省への売込みを本格的に開始した。



from Eurocopter site
NH90は10tクラスの世界最新多用途ヘリコプター。

全長19.56m、全高5.31m、最大巡航速度300km/h、最大航続距離は約900kmでパイロット2名の他に20名が搭乗可能。フライバイワイヤーを世界で始めて採用、卓越した操縦性を誇る。

 NH90の名前の由来はSH-3シーキングの後継機としてNATOの90年代を担うヘリコプターとの期待を込めてつけられたもの。フランス、イタリア、ドイツ、オランダが共同で1992年にNHインダストリー社を設立し開発されたのが最初。(内、ユーロコプター社としてはユーロコプターフランスが31.25%、ユーロコプタードイッチェが31.25%を分担している。)1995年12月に試作1号機(以下プロトタイプ1号機)が初飛行、2006年12月にはドイツ陸軍に納入され、現在14カ国で合計507機の受注がある。

 タイプは2種類で陸軍型をTTH(Tactical Transport Helicopter:戦術輸送用)、海軍型をNFH(NATO Frigate Helicopter:対艦、対潜作戦用)と呼ぶ。TTHは後方ランプドアを持ち、NFHにはランプはないが、メインロータ及びテールブームの折りたたみ機構が装備されている。その他詳細スペック等はミリタリーサイトに解説を譲るとして、ここではこの展示機についてレポートする。


 今回展示されたのはPT1と呼ばれるプロトタイプ1号機である。モックアップではなくれっきとした実機で、フランスで分解して747カーゴに積み、ポーランドを経由し日本に空輸、この会場で組み立てられたとのこと。

 プロトタイプはユーロコプターの南仏マリニアンヌ工場(マルセイユ近く)で5機が作られ、下記の試験に使用された。

1号機はエアフレーム、ダイナミックス、ギアボックス、2つのエンジン試験用
2号機は海軍向け
3号機はフライバイワイヤー
4号機はドイツ向け
5号機は海上ミッション(SAR)用

 これはその記念すべき1号機(Proto Type 1:PT1)。しかも左側がTTH、右側がNFHという1機で2機の特色を備えるという特殊なものである。1000時間のフライトを終了しテスト機としての役目を終えた後は、このような型に改造、デモ機として生まれ変わり、各国のショーなどに出展されているという。 


左側は NH90 TTH (Tactical Transport Helicopter)



右側は NH90 NFH (NATO Frigate Helicopter)

 今回、ユーロヘリ(株)様のご厚意により機内で色々とご説明を頂く機会を得たので、筆者の感想を交えて下記に記述する。

・・左側の大きなスライドドアから乗り込むと広いキャビンが目に入る。目の前にはベンチ型のシートが並んでいる。
キャンバス地の椅子は座り心地がよく、また天井までのクリアランスも十分である。

 コクピットの右側パイロット席に座る。とても広く、ラダーペダルに足が届かない。サイクリックスティックを握ってみるが、心もち低い位置にあるように感じた。フライバイヤーなので、握るというより、手を添えるという感覚なのだろうか?しかしながら、サイクリックスティック上部と左側にあるコレクティブピッチコントロールレバーを見ると、黒い塗装があちこちはげていてかなり使い込んでいるのが分かる。1000時間のフライト実績があるというが、これを見てモックアップではないと実感する。



 コクピットの右側パイロット席に座る。とても広く、ラダーペダルに足が届かない。
サイクリックスティックを握ってみるが、心もち低い位置にあるように感じた。
フライバイヤーなので、握るというより、手を添えるという感覚なのだろうか?しかしながら、サイクリックスティック上部と左側にあるコレクティブピッチコントロールレバーを見ると、黒い塗装があちこちはげていてかなり使い込んでいるのが分かる。1000時間のフライト実績があるというが、これを見てモックアップではないと実感する。


 コクピットはフルグラスコクピットで、ペデスタルには5個の液晶パネルが並んでいる。
コア航法システムとミッションシステムは2系統のデータバスで制御され、コア航法システム(不具合管理及び不具合状況表示システム、機内及び機外通話装置自立航法機能)及びミッションシステム(戦術装置、フライトプラン、ミッション可否の計算、ミッションセンサー)の表示はスイッチ一つで自分の好みのもの(今見たいもの)に切り替えることが出来る。
クルーの座席はミッションに応じて柔軟に配置変更ができ、キャビンとコクピットを隔てる通路の箇所に1席設け、3名座ることも可能という。あとでデモンストレーションビデオを見たところ確かに3名が乗機しているシーンがあった。

 次に一旦機外に出て、テールブームをくぐり、後方のランプから機内に入る。若干背を屈めて歩くが、十分な高さである。聞くと158cmという。60シリーズに比べれば驚くほど高い。4年前にハイキャビン型のモックアップが展示されたことについて尋ねると、あれはスェーデン軍用に開発されたもので高さは182cm。この高さは内張りを外して高さを確保しているのではなく、胴体部分を横に切って約20cm分持ち上げている。(当然中を走っているケーブル等も長くしている。)
つまり縦にストレッチしているという答えが返ってきた。こうすると全高が高くなるわけだが、フラト特性は変わらないという。但しマーケチングリサーチの結果では158cmで十分とのデータが出ているので、現在はこの高さとなっているとのことであった。


後部ランプより、機内(20名搭乗時レイアウト)を見る
 前述した同プレスリリースには「日本と防衛事情が似通ったオーストラリアでは、これまでにMRH90(オーストラリア用特殊仕様のNH90)を選定し、46機を発注しております。このことから、日本においても、捜索や救難、兵員輸送、災害救助や人道支援、海上や空域保安などのミッションにおいて、NH90が活躍できるものと考えております。」とある。

 NH90の「売り」は卓越した性能と共に、キャビンの広さ。SH-60と全長は同じだが容積は2倍程度という。(SH-60の7.50uに対して、NH90は15.20u)あらゆるミッションに於いて広いキャビンは欠かせない。また耐用年数30年(約10000飛行時間)というロングライフサイクル、作戦稼働率97.5%、整備負担1飛行時間当たり2.5man hourのハイパフォーマンスも大きな強みであり、ユーロコプターとしては「60を90に変えてゆきたい」とのこと。

 今回、どこをターゲットにしているかは聞くことはできなかったが、陸海空のどの場面においてもNH90は優れた力を発揮することだろう。特に最近では自衛隊の災害派遣活動が目立っており、地震その他の災害においては、CH-47が降りられないような場所にも降りて、大勢の要救助者を搬送することが出来るなど、広いキャビンは非常に有利である。
 防衛省にとってはヨーロッパ製のニューフェースだが、最近はEH101やEC225などヨーロッパの機体も続々と導入されており、今後の動向が注目される。

・・日本の空を飛ぶNH90の姿を早く見てみたいものである。(S)

左から
EUROCOPTER Monsieur Fracois DE BRAY
          Monsieur Philippe GUEGUEN
ユーロヘリ(株) 浅見様

 以上、お忙しい中、色々とご対応頂いたユーロヘリ(株)、EUROCOPTERの皆様、また広報担当の共同PR(株)様に
この場を借りて御礼申し上げます。
                                                               2008/10/13

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